昨日有隣堂に行ったら平積みで置いてあったので買いました。1994年に少し描いて途絶していた漫画を、こち亀完結後に再開させて、単行本一冊分溜めて出して終わりだと思っていたので、連載が続いていて、二巻で完結とは驚きです。
初出はウルトラジャンプ2018年5月6月10月、2019年3月6月7月掲載。本編は四話で、特別編が二話(本編のボリュームを描くヒマがないので、短い読み切りを掲載した)
それにおまけまんがとあとがき、カバー後折と裏表紙に、葛飾区から墨田区に来るなよ的な巡査かも知れない人が描きこんであります。後ろの壁に描いてある貼紙広告が、むかしの漫画でよくあった読者へのメッセージで、「部長ごめんなさい」
表紙を開くと、カラーが壱枚あって、1994年連載開始時の車内吊り用PRポスターだそうです。そんなことしてたのか。まだ網棚に漫画雑誌がいっぱい落ちてた頃ですね。ホームレスが拾いまくって百円で路上販売始める前。
奥付に、熊の湯のロゴと、「ご入浴ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。」の字。デザイン 石山武彦(Freiheit) 帯は、「「こち亀」の秋本治が描く美人すぎる銭湯主人 身も心も温まる下町人情コメディ」というベタな煽り。裏は秋本治四誌連載プロジェクト単行本告知。
あとがきで、作者は、連載開始から25年経った今が、いちばん主人公の日系ブラジル三世にとっていい時期かもしれません、と書いています。外国人旅行者の激増と銭湯とのマッチングを鑑みると、それは言えるかもしれない。本編で、監視カメラとルンバによる自動清掃、温泉なのでお湯の新陳代謝もおkということで、無人銭湯を試行する箇所があり、その治安が膨大なSNSで相互監視する外国人旅行者たちによって守られ、しかし24時間銭湯なので宿泊目的で使われたりケータリングとられるなど、予想外の展開になって中止します。こういう話を考えつくのが作者。
その前の話で、ルン…が、猫のくそを床に塗りこめてしまい、とれなくなる場面があります。清掃ロボット、そういう弱点があるのか。そもそも猫はどこにでもくそする生き物ではないですが… ここは伝聞なのか作者の周囲の実体験なのか、面白かったです。
頁99の、旋回する飛行機のコマ割りが面白かったです。コマのタチキリが不思議で、ページ下に余白開けてるんだがルビを振れる規定の幅でないのでルビ振ってないページを、最初編集の手抜きかと思ってしまいました。まちまちなんですよね、コマのタチキリが。でも頁70などは見逃しな気がする。頁69の上のように、三段階にコマの上の余白を分けてみる意味が分からない。ハサミでコマをキリバリしてるからかもしれません。星逃田の頃から変わらないものもあるんだな。
頁148、温泉にしたから煙突は必要ないだろう、いや、ランドマークとして、煙突目指して銭湯に来る人もいるので必要、の個所。黒湯の天然温泉で煙突のある銭湯を何軒も知ってますが、温泉といっても沸かしてるから煙突必要だと思ってましたが、言ってはいけない不文律かと。あと、相模原の、台風で煙突が倒れた銭湯。あればあったで、考えなければいけないことがありますと。
銭湯の壁の絵をマリアの故国ブラジル、リオデジャネイロのコルコバードの丘のキリスト像に描きかえる場面はよかったです。こういうことを考えつくのがいいと思う。壁画は東京も神奈川も組合が画像出してますし、それか実物を見てカウントして論文書いた人もいると思いますが、それほど富士山多くないですよね。西洋のお城とか、故郷の海とか、牧場とか、自由自在。
ブラジルのギャングが、暴対法施行以後、何を描いてもリアリティがなくなった日本のヤクザのかつての漫画像そのままなのも面白かった。こことか、マリアの裏拳というか、手の甲で殴る箇所とかは、何かのオマージュなんでしょうが、分かりませんでした。この東大生の女の子は、一巻で出てきたタトゥーペイントの子かと思いましたが、話の扉絵で二人描きこんで、ちがいますぅとシニアゴルファーの秋本治が言っている感じでした。
草野球の話、チーム名の中の「福祉ズ」に笑いましたが、他意はありません。彼らのチームは、強打と好走塁の場面があります。頁106の綾瀬橋は、なんか見たことあるのですが、思い出せません。頁124、開店前に待ってる客。開店時間は決まりごとだから、いちいち曲げないものですが、でもどこの銭湯でも、絶対いますね。お年寄りなど、そろそろ開く時間だろうと家を出てやってきて、そうなる。だから、三時の店でも四時の店でも二時の店でも、いる。
あとがきに戻りますが、作者が、日本人が忘れかけたものの中で、特筆してるのが「正義感」で、これは長年少年漫画を描いてきたからの重みもある言葉と思いました。正義、いいことばです。以上