『銀河英雄伝説 (13) (14) 』藤崎竜作画版(ヤングジャンプコミックス)読了

 そのへんにあったマンガ。装幀、デザイン者の名前を、カバー折、奥付、目次のあたり、どこにも見つけられないです。ヤンジャンの昨年末から今年の19号までの連載。

銀河英雄伝説(13) (ヤングジャンプコミックス)

銀河英雄伝説(13) (ヤングジャンプコミックス)

 

 ヤンの表紙ですが、13巻はキルヒアイスが死ぬ巻。14巻は救国軍事同盟とアルテミスの首飾りが粉砕される巻。ひさびさに "杨威利" という名前を思い出しまして、ベオグラードの中国大使館誤爆に端を発した海南島事件で米軍機を煽って接触して墜落した人民解放軍戦闘機パイロットの名前か、中国初の宇宙飛行士の名前のどちらかが、彼に似てるので、それだけ東アジア、本書に倣っていえばE式に人名を呼称する人たちの人口に膾炙して愛されてるキャラだったなと思いました。検索すると、後者がヤン似の名前で、前者はワンウェイonewayテケツと同音だった。私も、実在の彼の名前がヤン・ウェイリーに似てるので、それで彼が中国人宇宙飛行士第一号に決まったという伝説を信じるクチです。顔はまた別の話。

楊利偉 - Wikipedia

王偉 (飛行員) - 维基百科,自由的百科全书

 バーコというのかエンボスというのか、浮き出て盛り上がる加工のカバーで、力が入ってるし、金もかかってるのに、誰がデザイン装幀したか分からないという。なんでやろ。絵はまあ、封神縁起の頃の作者しか知らないので、より目が多くなったなと思うくらい。スマホとゲームのやりすぎに注意。

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銀河英雄伝説(14) (ヤングジャンプコミックス)

銀河英雄伝説(14) (ヤングジャンプコミックス)

 

 人物より、スクエアな艦隊とかスタジアムとかのほうが絵として映えてると言ったら失礼か。プロジェクションマッピングより銀河な技術で、字がグルグル構造物を取り巻いて廻ってる絵図とか。竹宮恵子地球へ…』のメカはひおあきらが描いたわけですが、こちらは多分全部作者だろうなと。人物は、ラインハルトの前髪ウザくないだろうかとか、作者もブサイク描きたい病に罹って永いのだろうかとか。オーベルシュタインと話すフェザーン商人とか、描いてて楽しそうだと思いました。どのキャラの造型も、これだけ読者の多い作品ですから、根幹のイメージを脱するのは並大抵のことではないだろうし、批判もこわいだろうと思うので、特にないですが、シェーンコップがヒュー・ジャックマンなのは、してやったりというところではないでしょうか。うまいこと盛ったと思います。

 反対に、ジェシカ・エドワーズなど、ライトカラーのサマージャケットにスカートの女性政治家は、日本にもたくさんいますし、それでこういうサヨクキャラなので、銀英伝初出の頃から比べて、大きく世の中は変わりましたので、難しいなと思いました。パブロフの犬のように、福島某とか、カンボジアPKO自衛隊を化粧バッチリで視察した某党女性議員たちの話を振ると脳内にカーボンコピーされたテンプレ文章を滔々と喋りながら嘲笑することでドーパミンが出る人はけっこう多いので、ジェシカがそういう人たちにとっての投下燃料にも見えてしまうのは、複雑な心境です。せめて築地で揺れる小池都知事に見立てられるくらいならよいのですが。雨宮処凛から始まって、稲田朋美サンとか、今が旬の人たちとか、そっち系のキャラになぞらえられるようなジェシカ・エドワーズに作ったら、それはそれで違うでしょうけれど。

そう、1982年から1987年までに金字塔を打ち立てた小説を、世紀を跨いで2015年からヤンジャン藤崎竜作画で漫画連載開始、2018年から、昔の、レベルラベルのボレロに乗ってローマギリシャの石膏像が飛んできたり戦闘シーンでいっぱい人が死ぬアニメとはまた違うアニメをやるのもいいですが、こういう作品の系譜って、この後も書き続けられたしこれからも書き続けられるでしょうから、引き続き、「腐敗した民主主義下の衆愚政治」対「王権神授説かつ易姓革命に基づく皇帝独裁の賢人政治」、あなたはどっち? てな思索は日々深められて行ってると信じてるのですが、この漫画の感想書きながら、21世紀にはこのジャンルはこういう形で進化したと言おうとして『皇国の守護者』を検索したら、著者病死、遺族の意向で全巻漫画も電子版もすべて絶版、とあり、まさかそういう方向で逆進化を遂げてるとは思わなかったので、唖然としました。合掌。

皇国の守護者 - Wikipedia

https://www.youtube.com/watch?v=8KsXPq3nedY

以上