ほかの人のブログで拝見した本。他の人のブログを見た後は、しばらくその中で読んでみようと思う本を読みますので、いつもの自分の読む本とはちがった、凝り固まった自分をほぐすような時間があります。
小説新潮1998年1月号から1999年3月号まで掲載。ノストラダムスの大予言があたらなかったので、21世紀に本作を読むことが出来ました。十四年も経って、NHK-BSで全三回でドラマ化したとか。そんなにドラマ企画は原作ストックないのでしょうか。
読んだのはハードカバー。読んだのは初版の一ヶ月後の二刷。あとがきあり。
装画 安西水丸 装幀 久米亜紀子
あとがきの前のページに、娘さんが寝るとき一緒に寝るピンクのくまのぬいぐるみと、「高さ十センチほどの、白いゴムでできたサイボーグ」「右手にマシンガン、左手に大きな盾を持っている」「ママがゲームセンターでとってくれた」(頁18)「背中にジェットエンジンのようなものをしょっていて、ものものしく武装している」(頁27)アリーの写真があります。撮影は新潮社写真部。Ⓒ創通エージェンシー・サンライズとあるので、おかしいと思いました。ゴムでもないし、サイボーグでもない。息子さんやったら、これを学校でサイボーグと主張したら、いじめられんで。これこそ狂気の物語。綴りは"Ally"
シシリアンキスというカクテルが冒頭とあとがきに登場し、それがなければこれは書かれなかったというくらいじゅうようらしく、それで愛読者たちが血まなこになってその辺のバーテンを難詰したが、さしてポピュラーなカクテルでもないので捜索が難航したことが、検索結果から伺えました。思い余ってウィキペディアまでこしらえられてるが、写真もないし、日本語版しかない。
シシリアン・キスとは、どんな味したカクテルですか? - 甘く... - Yahoo!知恵袋
娘さんは読書家です。写生で小学校と中学校でそれぞれ賞を獲るので、ゲージツ肌と思いきや、タイトルしか書いてないのですが、検索すると彼女は読む本もそれなりだった。
頁64に出てくる『隊商』
頁163『いろいろな人たち』はチャペックだった。
頁180のボナールの「レッドプロフィール」という絵はよく分かりませんでした。これだとすると、確かにショートカットなのですが、母親に似てるんだろうか。
同画家の"The Table"という絵に描かれてる少女は娘さんに似てるらしいのですが、それがこの絵だとすると、これでそう言える男もずぶといし、言われて感激する少女もどうかしてる。
https://www.tate.org.uk/art/artworks/bonnard-the-table-n04134
ロッド・スチュアート(いやーこれは)、イーグルス(忘れた)、ズージャ、クラシックと、いろんな音楽が出ますが、そこを検索してると終わらないので、二曲。娘さんがサビだけ覚えてハモるカーペンタースも好きです。
頁102、七十の手習いのおばあさんが習い終えたブルグミュラーの「貴婦人の乗馬」という歌。ピアノの先生である母親に「ファビュラス!」とホメられます。「キュアリアス!」でなくてよかった。
頁81、佐倉の地区センターピアノ教室で、レッスンのない時間に気ままにジャズを弾いていたら、職員の子がリクエストしてきて、調子に乗ってると、骨がとろける、例のボートに乗せてくれた男の想い出の曲をリクエストされ、断る。"My one and only love"
北関東のこじんまりした庶民の生活から逗子のセレブ地帯へ華麗なる転身をしますので、「かたちのくずれた、ビット・ローファー」を履いておやこのアパートにやってくるスナックの独身店長から、クリスマスは店を閉めてヨットで旅行に行ってしまう店長夫妻に変わります。寄港地の「マントン」が分からないので検索しました。よく読者は一発で分かりますね。
ピアノ教室も、地区センターのから、セレブ妻たちへの個人教授に変わる。下記はヒロインの生地。松沢ではなく、松原。ハマの松原商店街ではなく、世田谷線で下高井戸のひとつ手前だった。
下は、そこを出て、天津小湊から逗子に至るまでの彷徨マップ。1999年までの連載で、作中世界は2004年まで進むので、その間大きな社会変動がなくてよかったです。ケータイでなく公衆電話ですが、全寮制の高校生なので、おかしくないとも思える。栗平の全寮制って、桐光なのかポン女なのか分からないと思い、どちらも今は違うようにも見えます。廃止されたか。
今市だけ、日光と寄居と、二ヶ所に同じ地名があって、どちらか分かりませんでした。上の地図では、日光にしてます。寄居だと、こせこせ狭い範囲で動き回りすぎてる気がしたので。草加高崎前橋川越プラス寄居では、集中しすぎてる。
<以下ネタバレ>
最後、オチつけマンとご都合主義男とその他もろもろ、神様が一挙にあらわれます。スナック等でバイトしながら女手ひとつで娘を育て、出産時に夫だった年の離れた男性とは性的交渉をもたせず、その後もいっさい男は出来ず、娘が推薦入学で家を出て寮に入ってからは、ぬけがらになって、スナックから、懐石料理屋でポリエステルの和服を着る仲居もどきの仕事に変わり、更年期障害一歩手前のヒロインに、神の差配がやっと。よかったですよギルガメッシュナイト。狂気の物語とは思いませんが、うまくピースがはまらなかったり、何か守られなかったりすると大変だったと思います。よかったよかった。以上