『極楽寺ひねもす日記』(BRIDGE COMICS)"GOKURAKUJI HINEMOSU NIKKI" by Miyamoto Fukusuke 読了

 その辺にあったマンガ。Cover Design: Kobayashi Mitsuru (GENIALÒIDE.INC.) 装丁となかのデザインも同じ。漢字名小林満 初出:COMIC BRIDGE online 2018年11月2日~2019年6月7日配信分 帯や裏表紙にいろいろ書いてありますが、いちばん大きい字で書いてある「ワンオペ住職、かなり無理…!!」が簡潔に内容を紹介しています。

 宮本福助 - Wikipedia

  作者はウィキペディアのある人で、それによると、高校時代から同人やって、当たり作品のロングランを持っていて(2017年完結)、最近は『騎士団長 島耕作』などという原案付きマンガにも意欲的に取り組んでいるとのこと。こうやってプロフが分かるというのはいいことです。

 住職の息子というか、副住職って、なんか呼び名なかったかなあと検索しましたが、よく分かりませんでした。ないのかな。父母が書き置き残して家出して、ひとりで寺を回すことになる青年ののんびり奮戦記だそうで、書き置きという点でわりと含むところがあって読みましたが、「ひとりはむりだよ」というのがまず感想。

natalie.mu

敷地に建物も樹木もそれなりにあって(墓地ももちろんある)というお寺で、部屋は例のだだっぴろい和室なので、冬は寒そうとか光熱費かかりそうとか思いました。これをひとりはありえないと思いました。寺男がいる時代ではないですしね。で、その辺見越して将来の伴侶をすでに得ているとか、誰か来手があったとかそういう準備のない状態でいきなり代がわりに直面するので、こりゃ大変だとしか思いませんでした。建物自体は耐震補強したような印象も受けます。

第一話で、引退した組長の葬儀をいきなりひとりでやるのですが、親がいてもひとりで読経はないだろうと思いました。相手もメンツの世界ですし、宗派で声かけて、三人くらいお経読みに来るんじゃないかなあと思った。

檀家の代表者を総代表というそうで、その娘さんが手伝いに来るようになります。元バックパッカーで天然だそうで、本尊にディスコティックなライトアップを施したり、布団を墓石の上に干したりします。バックパッカーだとしたら、さぞ騙されて、それで気にしなかったことでしょう。あるいはそこでダークな気性が顔を見せるか。家出から戻った母親が、そのこと結婚しろとふたりの面前で言うのですが(頁155)彼女の方を見ず、彼女には同意を求めたりもしないので、よく見るとすごいへんな絵とセリフまわしです。息子だけ見て、息子も、自分のことだけ考えている。元バックパッカーも笑ってないで、「アタシにも訊いてください。こう見えてイスラエルに彼氏がいます」とか言えばよかったのに。インドでもベトナムでもソマリランドでもいいですけど。

辻本さんという和みキャラの老人がいるのですが、この老人がマンガの属性としてありえないくらい大食いで、うどんとかめちゃくちゃ食う人で、この人が法事ぶるまいの会食の弁当を勝手に食べ出して、それで弁当がみななぎ倒されて、頁131、カレーとナンを作ってふるまって急場をしのぐ場面があるのですが、匂いもつくし、とぶと染みもつくカレーをふるまうのは、喪服的にTPOとして非常識なので(白いワイシャツも黄色いしみでだめになるからかわいそう)ターメリックに罪はないのですが、ちょっとマンガすぎると思いました。

だいたいこういうお寺の後継ぎは趣味を持っていて、女にもてるもてないとは別に、ハーレー乗ってるとかあるわけですが、この漫画の場合無趣味という設定です。まだ若いので、テオクレにならないうちに、なんとかしてほしいと思いました。せめてまんがの中だけでも。

以上