デザイン&cover design AFTERGLOW
ドラマでは武田鉄矢が演じたそうで、仕入れから何からひとりでやる居酒屋の板前としては、ちょっと年が上過ぎる気もしますが、楽隠居して息子夫婦が店をやる、自分は菊の世話なんかしながら、常連さんが見えた時は挨拶で店に出る、という絵が、中央線沿線群像でも描きにくい時代なのかもしれません。じっさいワカオひとりもんだし。
頁17、菜の花のてんぷらで、菜の花がスーパーのパックと同じなのはご愛嬌というか、出入りの八百屋が持ってくるにしても同じパックになるわけで、違う場合はそのへんの家庭菜園からもらうとか、そういう手間がまたひとつ増えるですが、そういうことを言いたいのではなくて、このお菜はワカコ酒15巻にも登場し、ワカコサイドからは何も語られない「塩」が、店主目線だとこの日は鯛だし塩+粗塩で、最近調味料にも凝ってる向きが語られ、二冊通して読むことで、客目線と店目線の両方が楽しめるという、楽しい仕掛けになっています。これは楽しい。
このマンガも8月24日に読みましたが、奥付の日付は未来の9月3日。何日タイムラグ置いてるんだろう。
頁26、豚バラと旬野菜の炒めもの。これが凝りすぎてる気がしました。豚バラは塩麹に漬けてるし、野菜はセリとカブと小松菜で、前二者は炒めものに使ってしまうのは勿体ないし。セリは根つき。「ピリ辛ダレ」という安易なソースに頼っておきながら(実は市販品でなく自作品とか後で言わないでください)かつぶしとゆずの皮を載せるなど、やりすぎとしか思わなかった。家でこれだけやると、絶対味が決まらないです。で、腱鞘炎を気にしてますが、別に中華の鉄鍋でもないふつうのフライパン(テフロンではなさそう)なので、火力が少ないから手に負担がかかるのだろうかなどと思いました。
頁36、目の前で食べてくれる人がいないとモチベーションがどうのこうの。この辺、配信だけでナマの観客が目の前にいるライブが出来ないとどうしても、と、テレビでミュージシャンが言ってたのに似てると思いました。出前の持つ潜在的な問題のひとつ。しかし、むかし、寿司職人漫画『音やん』で、そういって出前を断り続けて、生活も苦しくなり、鮨を握るカンまでさびついてしまう職人の話があり、ライブじゃなくても歌わなくなったら(料理を作らなくなったら)本末転倒だしね、と思いました。
頁46、卸問屋の営業マンの試供品。いろいろ変わったものを持ってくるのは、こうした人たちの習性だからしょうがない。試供品ばらまかないといけないし。むかしいた中華にも、ダチョウやらワニやら持ってくる営業マンがいた。
頁64、いぶりがっことクリームチーズはどこかほかでも聞いた気がするのですが、試したことはまだないので、いつか試してみます。
頁70、鶏皮ポン酢、漬けこまないといけないと思っていたので(逆にいえば業食の鶏皮をたくさん買って作って保存しておける)、串をそのまま使うにせよ、その場で炙ってポン酢かけて出すとは意外でした。もみじとかいっぱいつけるのはお店のご愛嬌としても。
頁77、梅きゅう。梅干しほぐさず梅チューブのあたりが、どれでも百円おつまみチックというか、千べろのアテというか。梅チューブであっても、二種類の梅チューブ使うところがこだわりのようなので、どんなねり梅使うのか知りたい気もしました。
頁84、反抗期八っちゃん。また明大附属みたいな、中央線沿線家つき群像みたいなキャラをさらっと描けるものだと。漫画家は観察力勝負。ただ、今は過剰に警戒してしすぎるということはないので、見知らぬ人に、カレーであってもおごってもらわないかもしれないと思いました。睡眠薬とかいやだろうし。ただこの話はラスト、カレーの匂いに誘われて来る客来る客みんなカレーを頼むグルーヴ感がとてもよかった。千客万来でお客がみんな笑顔をさらりと描くと、それだけで読んでいて高揚して来る。スポーツ漫画や音楽漫画で、観客の熱狂、ワーワーを挿入するのと同じ効果。
頁114のワカコのショット、最初は胸の谷間でも描きたいからこの構図かと思ったのですが、そうでなく、カウンターの店側から彼女を見るとそうなるという絵だと分かりました。これはワカコ視点のワカコ酒ではなかなかお目にかかれない構図と思います。
武田鉄矢の画像を検索しようと思いましたが、あまりイメージを具体化したくないので、やめます。
中央線沿線だけに、同人作家の妄想を刺激しておくに越したことはないという、カバー外した表紙。前掛けの紐が、誰か両ひざついて泣き崩れる人の腕に見えてしまいましたが、ふつうそうは見えません。武田鉄矢と八っちゃん。以下略
以上
【後報】
たまたま、同じころのモーニングのクッキングパパに、自作ねり梅が載ってました。
この手間をおしんで客にさっさと提供するほうが顧客オリエンテッドという視点。
(2020/8/31)