『ニュクスの角灯ランタン 5 』"Nyx's Lantern" Kan Takahama LEED Publishing Co.Ltd. 読了

 [装幀]坂根 舞(井上則人デザイン事務所)初出は月刊コミック乱 2018年2月号~3月号、5月~10月号。読んだのは2020年7月15日の2刷。あと一冊で完結なのに、まだ初版に何部刷るか、部数を読めないのかと。(そうではなくて、最近は何でも重版出来と言いたいから、わざと初版少なく刷って増刷かけるのが常態化してるんですうとかの説明はいらない)

 きのうバンコクの風俗雑誌編集フン・セン記、ヘン・サムリン記、サロト・サル記を読んだので、今日はこれを読みました。高浜寛という人も、わりと一貫してプロスティテュートをモチーフにし続ける作家さんだと思う。日本の花柳界をまんがにしたり、デュラスのラ・マンを、まんがにしたり。さすがにガルシア・マルケスエレンディラはまんがにしてないようですが。

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明治11年、日本の少女とパリの娼婦の物語。

昭和11年、日本の娘子軍ザンジバルの少女の物語、というパロディを誰か書いてみるのも一興かと。

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Nombre34 フールズ・メイト

頁33。この表紙はすべてがおかしい。スケベ分けとか。

頁57に、100年以上続くという、下記の古書店が出て、浮世絵を勉強しに作者は行って、人たらしのテクで店主をオトして、否、三顧の礼で店主に蒙を啓いて貰うのですが、豆本やおもちゃ絵という、またこれが家産を質に入れても収蔵する人を量産しそうな蒐集グッズを紹介され、木乃伊取りがマジで木乃伊になる五秒前みたいな感じになります。やはり蛇の道は蛇で、まむしの毒はまむしで直す。鬼哭愁々。

www.kosho.or.jp

昨日読んだ本の著者は、雑誌の編集者として辣腕を奮っていたはずなのに、「コミュ障」とか「非リア」とか自身の形容に安く使ってくれて、それで今日本書の頁65中段左のヒロインの汗を浮かべた顔や、頁69の握手する時のヒロインの顔を見て、こういう、小骨が刺さったような深みがないと、アカンのやないかと思いました。優越感がどこから来るのか分からないアンマッチ。

頁75、これがニューカレドニアだったら素足だったろうと思いました。靴を履いてて最初違和感を覚えた病院の、天井の高い大部屋のブチ抜き。関係ないが、私はクロックムッシュ、否、クロックスを履いたことがありません。このまま一生履かないかもしれない。

頁83、(しょうゆの実)「しょいの実」

裸麦と大豆の麹をこい口しょうゆにつけたもの。 

しょうゆの実の作り方|麹の池田屋醸造

cookpad.com

関連検索ワードの地名を見ると、鹿児島、天草、熊本、高知、徳島、新潟、長野と広がっていて、文化の📶伝播ルートや関連神話、塩の道について考え始め、頭から煙が出てやめました。

頁109のインド洋航路の地図。スマトラとジャワがくっついてるよ、とか、フィリピンと台湾が未分化だよ、とか、オーストラリアの隣はタスマニアでFAなのだろうか、ひょっとしたらニュージーランドなのか、等々沸き立ちましたが、ポイント・デ・カールというモルディブの地名?は知らず、ヨーロッパ発寄港地のイタリアのメッシーナという地名もしりませんでした。ロギンズです。

頁125、前にも書きましたが、いちばん最初に椰子の実ジュースを買った時、汁だけストローで飲んで、果肉に何も手をつけずボンとゴミ箱にほったら、横の売り子が目を丸くしてました。食べ方を知らなかったので。タイとマレーシアの国境。その数年後、まだヴィザ相互免除の頃に来日して日本人女性と結婚したパキスタン人男性の本を読んでたら、日本に着いた初日、成田から新宿までとりあえずバスで来ると、カンフー映画でしか見たことのない箸を使ってみんな立ち食いソバをすすっていて、空腹だったので身振り手振りで一杯頼んだが、ハシの使い方が分からず、汁だけすすって、五百円硬貨一枚置いて立ち去った、というエピソードが載っていて、苦笑しながら、似たようなものかなと思いました。

頁128。

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こことか、この次の、窓越しに桟の影が顔にへばりつく描写など、この回からなんとなくデジタル作画の質が変わったような気がしました。手書き書き文字の周りの白抜きが、なんとなく鮮明になった気がする。というような知ったようなようなことをべらべら書いておくと、どうせ誰もこれ読みながらぱらぱら本書の当該ページ繰ったりしないだろうから、なんとなく専門的なことを書いてる気になります、私が自己暗示で。

頁161の飲酒規則は、まあ、別に書かなくても。主人公のもっさい髪から、マリーが、下のケもゴーモーなのかと問う場面がないのと同じくらいの比重で。

頁163の扉絵、高濱亭寛々は、元ネタのジャンルが分かりません。頁167中段左の「バリー屋さん」も何の店か分かりませんでした。検索しても、眼鏡のバリーミキや、バッグや、下記しか出ない。

Wimberley Professional Photo Gear - Home Page

頁46

うーーん 倒れたら… 

倒れたなぁって

思いながら

倒れとく 

 

起きる気力が沸くまで

 そういうことで。以上

【後報】

紅茶を「唐茶(からちゃ)」と呼ぶ場面があったので、へーと思って検索しましたが、いろんな意味のあるうちのひとつでした。残念。それきりの意味だったら自分も使おうと思ってたのに。

kotobank.jp

精選版日本国語大辞典の④が紅茶でした。

(2020/11/1)