『龍の帝国』"The Dragon Empire" "The Middle Kingdom"(チョンクオ風雲録 その一)Each book of "CHUNG-KUO" series is published in two separate volumes in Japan. This book is the first part of "Chung-Kuo 1: The Middle Kingdom". (文春文庫)未読

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CHUNG KUO THE MIDDLE KINGDOM 1 文春文庫

長篇積ん読未読シリーズ 

二十二世紀末の地球。戦乱と混迷の時期をへて、世界は漢民族の単一支配する未曾有の一大帝国<チョンクオ(中国)>としてまとまっている。が、安定の陰には閉塞した社会の変革に生命をかける新興勢力が……。『史記』の興趣に「ブレードランナー」的想像力を見事に結合させ、東西のせめぎ合いを描く長篇ファンタジーの第一巻。

この巻の訳者あとがきによると、米帝が今世紀(21世紀)中葉に崩壊して西洋經濟が大混乱に陥る中、中国に若き皇帝が出現し、世界を統一に導いちゃうんだそうです。で、ちゃんとというか、まったく読んでないんでアレなんですけど、その後、その皇帝は倒され、中華的な皇帝独裁でなく、古代ローマのような合議制選挙制の皇帝になるのかな? しかし漢民族と白人などそれ以外との人種間の格差軋轢は深刻なもので、水面下でマグマがふつふつと米芾、てな感じでこの小説は始まるんだとか。

カバー・原田維夫 

途中からカバーの描き手が交代してるわけですが、最初のこの人の版画と、昨日の読書感想のラストの巻のエアブラシとでは、激しく印象が異なりますので、何故統一しなかったんだろうと思います。交代理由は、交代したあたりの巻に書いてあればいいなと。

books.bunshun.jp

 中国とは何か?ミドル・キングダムデスヨ、という不可侵の大前提にまず大笑いしました。訳者はさすがに汗をかいたのか、「中華帝国」と書いてミドル・キングダムとルビを振っているのですが、原題にミドル・キングダムと書いてあるものはしょうがない。どう漢字をつけてもミドル・エンパイアにもミドル・ダイナスティにもならない。ミドル・キングダム。この英語には、エジプト中王国などの意味もあるそうですが、第一義には中国の意訳なんだとか。支那と呼ばず、ミドル・キングダム(中国)と呼ぼう、みたいな。「国」という表意文字が、領土の中の玉、もしくは王様だから、キングダムでいいだろうみたいな話なんですかね。國。

Middle Kingdom - Wikipedia

エジプト中王国 - Wikipedia

https://en.wikipedia.org/wiki/Diane_Duane#The_Middle_Kingdoms

www.newzealand.com

上にあるように、「中つ国」はミドルアースであってミドルキングダムではないので、中国ではないです。中つ国デス。

なんていうかなあ、今世紀になってから、清朝の外交文書の原本をそのまま写真製版したものなどが、ばかばか出版され、アロー号の第二次アヘン戦争の天津条約の档案ナントカだと思うんですが、たまたまちらりと見たら、そこにバーンと、英に夷をくっつけて「英」と呼ぶな、漢字だから分かんないと思ってんだろ、(買弁がいくらでもいるから)分かってんだぞコッチはゴルァみたいな箇所があって、それを思い出しました。確かそこに、ビルマに対するイギリスの宗主権を中国は認めマス、みたいな箇所もあった気がするのですが、どうもそれは別の機会に結ばれた覚書だったようで、この条約とは違うようです。今、天津条約のウィキペディア検索したら、日本語版と英語版にはバッチリ、外国を「夷」と呼ぶなや中国、と条約で取り決めたと書いてあるのに、中文版には1㍉もその記述がないかったです。ウィキペディア中文版は百度と違い、中共以外の漢族も割と書く場所ですので、よほど民族的に書きたくなかったのであろう。

天津条約 (1858年) - Wikipedia

条約の内容

7. 公文書における西洋官吏に対して「夷」(蛮族を指す)の文字を使用しない 

Treaty of Tientsin - Wikipedia

Major points
7. China was forbidden from using the character 夷 (understood to mean "barbarian") in official documents to refer to officials, subjects, or citizens of the four nations. 

天津条约 - 维基百科,自由的百科全书

 

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The Middle Kingdom (Chung Kuo Book 3) (English Edition)
 

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51VCSjM9wKL._SX324_BO1,204,203,200_.jpg右は、以前の、再出版時のペーパーバックの表紙。

訳者あとがき

ただ正直にいうと、はじめてこのシリーズのことを耳にした際には、トールキンの『指輪物語』以後の長大なエピック・ファンタジーの氾濫にいささか食傷気味だったこともあり、小説の題材にはこと欠かない中国の王朝をネタに、異国趣味を加えたものだろうと早合点して敬遠したい気分だった。ところが実際に読んでみるとその予想は完全に裏切られてしまった。

 実はこれは、私が小野不由美十二国記』を読んでない理由です。ほんと先入観で人生損してると思うのですが、これをひっくり返すのがなかなか。でもバルサも一冊しか読んでないし、おばあちゃんのハリポタ焼きも読んでないので、大丈夫です。要するにファンタジーが嫌いなのかというと、ゲド戦記も映画は見てないですけど小説は読んだので、けっしてそんなことはないと思うんですが。指輪物語は活字が小さかったので読んでません。映画も未見。以上

【後報】

本書の邦題をグーグル翻訳した"The Dragon Empire"をつけてましたが、"The Middle Kingdom"であると五巻訳者あとがきにあるので、併記しておきます。せっかく龍とか帝国とか和文で書いてるのに、もったいない。

(2020/12/3)