『氷と炎』"Ice and Flame"(チョンクオ風雲録 その二)Each book of "CHUNG-KUO" series is published in two separate volumes in Japan. This book is the second part of "Chung-Kuo 1: The Middle Kingdom". (文春文庫)未読

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CHUNG KUO THE MIDDLE KINGDOM Ⅱ 文春文庫 

長篇積ん読未読シリーズ カバー・原田維夫

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戦乱と混迷をへて漢民族の単一支配する帝国〈チョンクオ〉として安定を迎えた地球も、二十三世紀に入るや一転変革の嵐にさらされる。平和のために〈無為〉を選んだ〈七帝〉も、方針を転じて拡散主義者に対抗することを迫られる。人類は宇宙に活路を見いだすしかないのか? 〈龍の帝国〉の運命の歯車がいよいよ音たてて回りだす。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

books.bunshun.jp

原書が全八巻のうち、まだ二巻しか出てないのに全巻版権朱徳、否取得するという暴挙に出た文芸春秋文庫編集部は流石に不安に駆られたのか、中折広告作成に乗り出します。二折広告の表は不肖アラマタによる援護射撃。

訳者「ビュフォンの博物誌」ありがとう。すごい本ですね。
荒俣氏 そういえば「チョンクオ」をありがとう。これも構想はすごいみたいだ。
訳者 で、折入ってお願いがあります。「チョンクオ」の推薦文です。褒めて見識を疑われるようなものじゃないと、自信はあります。
荒俣氏 そう。それが条件ということで、やってみます。
世界が悲鳴をあげる動乱のとき、いつも青い目の人びとを恐怖させる、〈眠れる獣ビースト〉があった。それは極東の幻想超国家。十字軍の時代にモンゴルと呼ばれ、連合軍の時代にチャイナと呼ばれたマジック・ネーション! では、二十二世紀の未来に世界を制圧するハイパーネーションは、どこか。それが〈中国チョンクオ〉だ! コンピュータ・エイジの三国志演義が、ついに全貌をあらわす。
荒俣宏 

Chung Kuo (novel series) - Wikipedia

However, in 1990, The New York Times felt that Wingrove's vision of a Chinese-dominated future was unlikely and "ungrounded in historical process."

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 チョンクオ年表 
  九七年 班超の大軍団がカスピ海沿岸に到着。ローマ帝国と対峙する。
 九四〇年 敦煌星図つくられる。
一〇七二年 郭熙が山水画、〈早春図〉を描く。
一九七六年 初代革命皇帝、毛沢東死去。
二〇五〇年 この頃アメリカ帝国が崩壊。
二〇六二年 曹ツァオチュンの日本攻撃はじまる。
二〇八七年 〈七大臣評議会〉が北ヨーロッパ人の傭兵を用いて曹ツァオチュンを失脚させる。
二一二二年 オーガスタス・ラドウォルド・シェパード死去。
二一九〇年 シティ・ヨーロッパの次男、李リーユアン生まれる。
二一九六年 〈帝国サンルーム〉が爆破され大臣のルオ・カンが死亡。
二一九八年 キム・ワード〈土層〉から救い出される。

      エドマンド・ワイアット公開処刑される。

      紫禁城にて李リーハンチンが殺害される。

      レーマン次官を殺害し、トローネン将軍失脚。
二二〇一年 ハル・シェパードがヨーロッパのタンに〈拡散主義者〉との戦争を進言する。

      シティ・西アジアのタン、祖ツーティアオ死去。

      時代は激動の二十三世紀に入る。

 未読なので気づきませんでしたが、中国が世界の覇権を握る過程で、日本攻撃があるのですね。何巻だろう。そこは読んでみやんと。また、邦訳の人名はあえて漢字をあてはめず、原文のウェード式アルファベット表記をカタカナにしただけと訳者は別のところで書いてましたが、姓に関しては或る程度漢字をあてていて、李や王、高は異論のないところでしょうが、祖や章、藤などは、えっ、ほかに思いつく字あるだろう、と思ったです。楚、張、鄧。藤なんて姓の中国人いねーだろー、みたいな。そういったツッコミをかわしたり、突っ込まれないために、どんどんカタカナ書きに傾斜していったのかどうか。

Chung Kuo (novel series) - Wikipedia

However, in 1990, The New York Times felt that Wingrove's vision of a Chinese-dominated future was unlikely and "ungrounded in historical process."

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「チョンクオ風雲録」は中国の小説ではありません 
22~23世紀の世界を想像力ゆたかに語る壮大な未来叙事詩です 
世界=中国〈漢〉
 万里の長城を建設し、紙や火薬をだれよりも早く発明した中国。大いなる潜在力を秘めながら“眠れる龍”でありつづけた中国。二十二世紀の世界の主役は、その中国をおいてほかにない。
 いま世界はシティ・ヨーロッパ、シティ・アメリカなど七つのシティから成り、そのそれぞれは高さ三百階、大陸的規模を有する大建造物である。各シティを治める〈七帝〉はすべて漢ハン、その評議会によって統べられる人類史上初の単一世界帝国として盤石の安定を誇る……かに見えた。
閉塞 
 しかし、七つのシティは三百四十億の民を厳しい階層構造のはなに閉じこめただけでなく、人々の夢も壁に塗りこめてしまった。
 白人は少数民族として鬱屈し、〈七帝〉に対するに〈拡散主義者〉が勢力を増す。
 陰謀。暗殺。反乱。――究極の帝国も人類が未来を托すに足るものではなかったのか! 
息吹き 
 新しい段階に入った世界に、未来の息吹きを予感させる若者が出現する。最下層の暗黒から現われた異能天才児キム。シティの壁の外の牧歌的な谷間で育った芸術的天分ゆたかなペン。歴史は夢をはらんで急転回する。

 

チョンクオ博物誌

 想像の翼を自由にひろげる一方で、作者は中国の史実、語源にうんとこだわっている。孫子史記封神演義などすぐに気づくが、文中にさりげなく使われている言葉が、きちんと中国語での用法を踏まえていて驚かされる。たとえば――

扶桑 空桑も同じ。中国神話にある太陽の昇る木。東海の海上にあるとされ、のちに日本の異名となる。

功夫カンフー 本文では風手功夫。武術の鍛錬法の名称。ブルース・リー以来、カンフーとして中国拳法の意味でも使われる。

潮吹き鉢 噴水銅盆とも訳される。水を満たした銅器の縁を手でこすると定常波が生じて、微細な水滴が数十センチの高さに噴き上げる。中国科学史に新たな照明を当てるニーダムの本などで写真を見ることができる。

斬衰チャンツォイ 五段階ある服喪の形式のひとつ。死者との関係の深さに応じて細かく規定されている。

ハンセン指数 漢字では恒生。現在のホンコンでもっとも利用されている株式指数。

忘本ワンベン 人としての本分を忘れる意。本を笨と書き、蛋を補うと、日本語のアンポンタンの語源となる。

 最後までは、へーとかほーとか思いながら読んだのですが、最後で、忘笨蛋? 王八蛋じゃなかったっけ、と、つまづきました。

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覚えきれないほどの人物が登場するようですが主要人物はただの四人です。 「史記」の骨組のなかでときに「名人伝」、「寛永馬術」、あるいは「スパルタカス」や「ブレードランナー」、そしてもちろん「ラスト・エンペラー」、娯楽小説の粋ともいえるさまざまな面を見せつつ進行するこの一大歴史絵巻は、実はこの四人の若き男たちの“成長”をめぐるロマンなのです。言いかえれば――  人類の夢を壮大なスケールで描いた類例のないファンタジーなのです。

一巻の巻末の新刊広告のほうが、ああこの時この本も出たんだ、と思えますので、一巻を撮ればよかったと少し後悔。

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原著は全八巻。現代から今後の展開を想像してください。 1 中華帝国 The Middle Kingdom 2 壊れた車輪 The Broken Wheel 3 白い山 The White Mountain 4 内部の石 The Stone Within 5 天の息子 Son of Heaven 6 苦い力の時代 Days of Bitter Strength 7 白い月、赤い龍 White Moon, Red Dragon 8 生ける死者との結婚 The Marriage of the Living Dark

「苦い力」は刊行時には「苦力」クーリーになり、リビングダークは生ける死者でなく、生ける闇になります。車輪の話は、西洋、ドイツ人なんかが大好きな、車輪はわっかがすごいのでなくわっかのスポーク間の空間がゴイスーなんである、という老子かなんかのことばをバックボーンにしてるのではないかと。訳者あとがきによると、原作者が参照した易経は、R・ヴィルヘルムという人の独訳をC・F・ベインズという人がさらに英訳したものだとか。で、P・K・ディックも『高い城の男』で同じ本をテキストにしてるんだとか。

訳者あとがきに出て来る、甘英(カンイン)、西安からトルファンにいく、当時蒸気機関車の硬座で乗り合わせたあちらの漢族が、子どもに同じ名前をつけてるのに会ったことがあります。今のような時代でなく、簡単なウイグル語も勉強していた人たちだった。でもまあ当時も暴動はありましたが。そして。

甘英 - Wikipedia

以上

【後報】

本書の邦題をグーグル翻訳した"Ice and Flame"をつけてましたが、五巻訳者あとがきに、"Ice and Fire"とあるので、なおしときます。"Flame"のほうがいいと思うんだけど。

(2020/12/3)