『無援の抒情』"Unsupported Lyricism"(岩波現代文庫)読了

後藤正治解説がウリの文庫本と聞いていましたが、同時代ライブラリー版に収められていた道浦サン執筆の随筆や批評がぜんぶ取り除かれていて、じゅんすいに短歌だけの本になっています。私が読みたかった、胡耀邦時代に三度訪中した彼女が天安門事件にどうコミットしたか、の部分はまったくありません。それどころか、1988年の『吐魯番の絹』から抽出されて同時代ライブラリー版に収められた、大阪中華学校日本語教師をしていたくだりが、後藤正治の解説の著者略歴にもまったく出ません。隠蔽されてしまった。黒歴史なのか。

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下は同時代ライブラリー版の感想。

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私が著者を知るきっかけになった、山口文憲団塊ひとりぼっち』(文春新書)で紹介されている歌のうち、下記二首は、同時代ライブラリー版で見つけられなかったのですが、現代文庫版にはありました。よかった。

少女のようなお前が離婚するのか老いたる父がひとこと言いぬ

トロツキスト」「民青」と呼び傷つけあうこの日常をだれに告ぐべき

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『吐魯番の絹』は1999年に二刷が出ているようなので、天安門に関する追記があるのかないのか、知りたいと思います。以上