夏笳サンの『百鬼夜行街』(本書収録作品)に、自作『ビフォアー・フォール・アウト』《赶在陥落之前》の出だし部分ほか、わりとけっこうパクられたと言っていい、被害者ていせいはサンの作品で、しかも何故か野坂昭如原作・スタジオジブリ製作映画(パヤオではなく高畑勲監督)に酷似したタイトルでしたので、意気込んで読んだのですが、肩透かしでした。
中原尚哉訳 英語部分の初出を見ると、"Science Fiction : Literary" 2005年7月号ですが、邦文の初出一覧では《科幻文学・秀》 2005年7月号です。英訳される過程で、ヒデが抜けてしまった。英訳初出は2014年1月「クラークスワールド」誌。
とりあえず野坂昭如原作・スタジオジブリ製作映画とはまったく関係ありません。どこか別の銀河もしくはファンタジーワールド、魔術師とかが出て来る世界で、主人公の名前はロザマンドです。原文では《罗莎蒙德》"luoshamengde"なので、素直にロザムンドでいいと思うんですが、その辺の事情は分かりません。
あれだ、トンネルがタネルになるアレ、アーモンドがアマンドになるアレですね、たぶん。西海岸訛り?
また、冒頭に出て来る「雪止鳥(ゆきやみどり)」は、実在せず、ただ単に雪が止むことを意味する、〈雪霁〉"xueji"ということばが美しいから使ってる感じです。原文の〈雪霁鸟〉を下ネタにしたら〈野鸡屌〉かなと思いましたが、たぶんネイティヴには通じません。中国のファンタジー界ではほかにも、RPG?《原神》などに、この単語を冠したキャラが出るようです。検索で理解。
本書にはパクッた側の夏茄子サン、否、夏笳サンのSF批評もこの後出て来るのですが、その中で『百鬼夜行街』に影響を与えた作品を挙げていて、ニール・ゲイマン『墓場の少年』、ツイ・ハークのチャイニーズ・ゴースト・ストーリー、宮崎駿の映画などだそうで(千と千尋かな)もちろんそこに程婧波サンの名前はありません。
なんとなく私は、本書のこの辺のアンソロジングに関して、ケン・リウの腹黒さを感じてしまうのですが、しかし四川省でそれなりの地位も築き上げた程婧波サンの本作は、残雪が21世紀の作家で、SFに逃避していたら、こんなん書いたんでないかな、というようなお話ですので、本人的にももうどうでもよいかもしれません。私は読んで、どうでもよさげだと思いました。
さて、どこまでホンマに残雪になれるのか。
现为四川少年儿童出版社编辑,中国科普作协科学文艺委员会副秘书长,四川省科普作家协会五届、六届副秘书长。
现为西安交通大学人文社会科学学院中文系系主任
カカサンはせっかくベイダーで博士号迄取ったのに、けっきょく生まれ故郷の西安に帰ってジャオトンダーシュエなんかで教鞭をとっている。かたやテイサンは一貫して地元四川を離れず、四川のアルトンチューバンシェで働きつつ、SF関係の団体でもミーシュージャンをやった。おお、これはいったいどうしたこと。両者の中間点、甘粛省出身のケン・リウ腹黒い、そういうことにしておきます。以上