『コールガール』《黄色故事》"Call Girl" by Tang Fei 糖匪『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』"INVISIBLE PLANETS Contemporary Chinese Science Fiction in Translation" ケン・リウ=編 Edited by Ken Liu (Liu Yukun / 刘宇昆)(ハヤカワ文庫)

大谷真弓訳 これ、ハヤカワの初出一覧には、英訳の初出しか書いてないんですよね。"Apex"という雑誌の2013年6月号に載りましたと。

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同じ本の英文の、版権関係の箇所を見ると、漢語版は英語版のあと、2014年8月に"Nebula"という雑誌に載ったそうです。ネビュラは漢訳すれば星雲、それは君が見た光、ぼくが、見た、希望、ですから、中国に《星云》という雑誌があるか検索しましたが、中国SFの日本への紹介といえばこの人、の、林サンのサイトに、1998年ごろの話として、

今まで内部刊行物だった《星雲》が中国科普作家協会の科幻創作研究会の会誌として、公認された同人誌という一風変わった形式に生まれ変わった。編集部は《科幻世界》社に同居。

http://www.asahi-net.or.jp/~yx6n-oon/kagen34.htm

とあるのが見つかりました。

baike.baidu.com

百度と説明がちがいますが、要するにそれが中国(乱暴な結論)

まあ別にこの作品がキワドイタイトルだったから、そういうことになったわけでもないだろうと思います。2018年に上海文芸出版社から出たこの人の短編集にこの作品も含まれてますし、内容的にはおこちゃまもいいとこで、これでヌケたらそのサルガキはよほど想像力が豊かで、かつ飢えています。ただたんに星雲という初出誌が同人なのかISBNのある出版物なのかよく分からないので、紹介を略したってことかなあと。

邦題は英題そのままで、原題は例の、中国語で黄色というと好色コンテンツを意味するという、そこから来たタイトルです。下は小学館のサイトに転がってたエッセー。

中国語の「黄」は日本の「ピンク」? 【知れば知るほどのめり込んでいく中国語の世界】 | Domani

19世纪末,美国《世界报》为招徕读者、扩大销量,曾专门用黄颜色的版面刊载淫秽、色情的漫画。后用「黄色」指有色情内容的。

上はグーグル検索すると出て来る〈黄色〉=〈好色〉の説明で、オックスフォード辞典にそう書いてるってことではないと思います。

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グーグル検索は、上記19世紀末の退廃デカダン雑誌、ピアズリーのサロメのイラストなんかが載ったという「イエロー・ブック」が華人インテリの概念に影響を与えて、遂には中文の〈黄色〉の意味まで変えてしまった説をとっていて、実は私がむかし聞いた説も同じです。別にこれでいいじゃいかと思うのですが、華人自体が納得してないのかな? ほかの説もあるということで、しかし私はほかの説を知りません。

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上記は、英語のQ&Aサイトに、「なんで中国語のイエローはポルノと同義語なんですか?」と質問して、「じゃあお前、なんで英語でエロ映画がブルーフィルムと呼ばれるのか答えてみろよ」と言い返されてるやりとり。ブルーフィルムは、フィルムが青く塗られているからってだけなので、すぐ言い返せると思います。

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ピンク映画 - Wikipedia

宇能鴻一郎の 濡れて打つ|作品DB|日活ロマンポルノ公式サイト

https://www.nikkatsu-romanporno.com/movies/26080.jpg

Tang Fei (writer) - Wikipedia

作者の糖匪という人も、いろんなペンネームを使い分けている人だそうで、英語版Wikipediaはあるのですが、百度はありません。ウィキペディアに載ってる"Wang Jing"という名前も、そっちで発表してる作品も、分からんちんです。ドキュメンタリー作家やダンサーとしても活躍してるそうなので、検索にいろいろ出て来そうなものですが、なんだかなあ。

物語による癒しを世の殿方に与える女性(JK)が主人公で、彼女の与える物語があまりに素晴らしく、現実に帰りたくなくなった男性たちは当然の如く次々失踪、魔性の女ですら、絶対にブラをつけないノーブラ派だし。という話。

男性作家がこしらえた、ありえない精神的娼婦の話ならよかったのですが、タンフェイサンは女性ということだそうなので、椎名林檎でもないですが、「世の全ての男性に癒しを与えるミューズとしての娼婦」とか、そんなの苦海に叩き落すための方便、ファンタジーじゃん、てことで、その陳腐な幻想を、叩き切ってほしかった。JKがそんなあからさまなウソを信じてはいけない。微妙な題名で挑戦した気になっているのであれば、もっとバッサリ行ってほしかった。と、思いました。

下は黄色いカバーのピンク映画DVD。ほかに黄色いスチール宣材のポルノ映画がないか探したら、多く出たのが、園子温監督の「アンチポルノ」でした。よりによっての人のよりによっての作品しか出ないのがまた、黄色という色の運命なのか。歌を忘れたカナリヤは。

以上