『少年は荒野をめざす』3⃣ "The boy heads for the wilderness"(Shōnen wa Kōya wo Mezasu)vol.3 by Yoshino Sakumi 吉野朔美(ぶ~けコミックス)"BOUQUET COMICS" 読了

安部公房『けものたちは故郷をめざす』を読んだ*1ので、五木寛之『青年は荒野をめざす』を読もうと思ったのですが、すっとばしてこっちを先に読み進んで、『青年は荒野をめざす』もこないだ読みました*2

ぶ~けコミックスの表紙は上記。この巻の表紙は特に。眉毛太い時代としか。中学生or高校生だし。眉を剃るのは嫁入り前という伝承が廃れたのは、早婚がなくなったからな気瓦斯。なんでも表裏一体で考えますと。

ぶ~けコミックス三巻は1986年10月20日初刷。読んだのは初刷。「ぶ~け」61年(元号)5月号から同年8月号までを収録。巻末に全作品リストとコミックスのおしらせ。装幀者未記。

裏表紙はメッサーシュミット。中表紙にも出るので。

この少し後でしたか、何かのエッセーで、「少女漫画を描く男性漫画家」がぜんぶメカオタであると一条ゆかりが書いていた。吉野朔美は女性ですが、いろいろ時代の空気もあったと思います。

この巻は高校になじめないというか、いじめというか、浮くというか、と、作家でもあるので攻撃の手紙とか、そういう話が縷々出ます。一巻のころの見開きは白いのですが、二巻で黒い蝶が出て、三巻は、いちおう星空だったりするのですが、真っ暗で、ベタに塗りつぶされてます。星空といえば宇宙戦艦ヤマトなので、ホワイトのポスターカラーを筆で散らすやりかたを教わる過程でWWⅡの戦闘機などをオマケに描くようになったのかも、という余談はさておき、黒くなっていく心象風景はまあ、心配な気もしないでもなく。中傷手紙も黒いですしね。

おっさん批評家がなぜか建築会社でバイトをしてこきつかわれるのですが、こういうのも西村賢太苦役列車』同様、外国人労働者全盛になる前の、バブルをバブルと知らずにいた時代の歌。当時から外国人労働者は、インド亜大陸バングラディシュやパキスタン、東南アジアのフィリピンやタイなどから来ていて、中国人留学生もけっこう潜り込んでたと思います。もう少しすると南米から日系労働者が来ますが、工場労働者で、現場ではないんじゃいかな。とまれ、まだ邦人アルバイトがたくさんいた。3Kということばはまだないです。

頁107に読者のキャラクター・アンケートの結果を菅野が語る場面があり、一位狩野、二位おっさん、三位菅野だったそうです。次が小林で、黄身島は五位なのかな。浮気性というか、誰でも受け入れるという設定はやはり反発があると思いました。

ただ、この巻で、いちばんショッキングなのは、頁121、狩野は自分で生理を止めて、生理がないという告白。別にそういう薬があった時代ではないので(ソ連や東独は知りませんが)意志のちからでそうなったと、ぼそっとひとりがたりするのが、おそろしいと思いました。かなり重いことをいきなり出した。

巻末の広告(部分)以上