新刊が出ていたので注文して、紀伊国屋で買いました。よく分かりませんが、この巻で完結なんですね。中表紙もなく始まり、目次はカバ折記載。最近少女漫画を読んできたので、オマケの直筆エッセーとかそういうのが一切ないのが、さみしい気がしてきた。
巻末の"THE END"を見てアレっと思い、公式のレビューや煽り文句を見て納得しました。星二つは自己評価ではないと思います。
月刊コミックビーム2024年2月号から3月号、5月号から8月号掲載。
編集長 西山若奈
編集担当 清水速登
装幀 岡田エラ(A RIOT OF COLOR)
正直、フランス人の男とそのままズルズルという展開を予想していなかったので、そこは驚きです。女性心理について新井サンが正座して参謀サンに説教されてるさまが思い浮かぶ。そのあとは勿論緊縛ベランダ放置。
頁077の喫茶店読書シーンはよかったです。こういう店もまだあるはず。高いだろうけど。今は山手線の内側は、もっと狭い坪数のカウンターのみのヒーコ屋で、アニキみたいな店主が話しかけてくる店のほうが多い気瓦斯。
頁159のBLMは、いまさらと思いました。新井サンは世のムーヴメントに乗るのが気恥ずかしいのか、終わった後に始めるクセがあると思ってます。『キーチ!』の食肉偽装追及はまさにそうだった。不完全燃焼で終わりましたが。『キーチ!』は児童買春斡旋問題にも切り込もうとして切り込めなかったかな。BLMに関しては、以前見たブラジル映画*1で、ブラジルは広場などで突然即興詩吟が始まるようなのですが、それを熱心に聞いていた白人の女の子が、有色人種がBLMの勲しを高らかに歌い出した途端、「行こう」と場を離れる場面があって、印象に残ってます。
頁179、アンドレが「八菱ビルテクノサービス」という会社の相談役だったので、ああ、関連会社出向役員と思いました。とても分かりやすかった。SMにハマって帰宅はタクシーチケット。
勘違いSM志願というか、抜き系風俗の一環として来店するいちげんさんのあしらい方とか、フォロワー21万人のコスプレイヤーが新人として入店してくるとか、それなりにネタは続くのですが、おしまい。
私がバイブスという言葉を知ったのは下記の歌で、下記の歌は小林克也翁のファンキーフライデーで聴きました。それ以外バイブスという言葉を聞く機会はゼロです。
帯。今の新宿に居続けてる人はとんでもないと思います。ジョニー大倉は五階から。
帯裏。フランス人が言いそうな文章。ヌーディストビーチとかで。考えてみたら、新井サンならぬ荒木飛呂彦サンも「JOJOは人間賛歌」と、本人も信じていないようなことを石仮面の時点で言っていたので、それと同じベクトルで人間賛歌なんでしょう。
『ゆりあ先生の赤い糸』最終巻でパートナーの人が、湯水のように取材費を使ってなかなか始まらなかったこのまんがに、生活費を危惧していたとあったのですが、モトはとれたのでしょうか。
Mの世界を描き出すと、新井サンの好きな自滅志向に話が行きそうなのですが(浣腸のやりすぎで腸が、とか、アナルセックスのやりすぎで日常生活でいつもオムツをつけなければいけなくなった、とか)そうはさせじとファッションSMの壁が立ちはだかったのか。おかげで『愛しのアイリーン』も『キーチ!』も『シュガー』もぜんぶ破滅型の展開を遂げる五の舞くらいは避けられてヨカッタデス。ふと思うのですが、『いとしのアイリーン』の映画キャストの安田顕は、原作者的にオッケーだったんだろうか。『セクシー田中さん』問題があってから、ふと気になっています。映像化で原作者が自殺する事態にまでなった件なので、新井サンも関心あると思うんですが。『宮本から君へ』のピエール瀧と佐藤二朗のコンビは原作以上でしたが。
ブレードランナーくらい分かりやすくないとウケないし客もついてこないと言われたんでしょうか。でもせりふをこっそり使うのでなく、映画館でリバイバルを見るという身も蓋もない展開なので、それなら毎年ケーズシネマでやってる台湾巨匠選とか、角川シネマでやたらかかる韓流でもよかったと思います。『大統領の理髪師』で朴正熙サンが日本語で「今日は気持ちのいい朝だ」というそのセリフを使ってみるとかすればよかったのに。
福田村事件を漫画化するとか、東出昌大サンの伝記を描いてみるとか、もっと直球で養育費バックレという生き方、養育費を払わない男たちのドラマをまんがにしてみるとか、やってくれたら、いいかなと思いました。
カバーをとった裏表紙。以上
【後報】
性的マイノリティーが「アブノーマル」ではない現代において、いまだ「アブノーマル」と呼ばれる嗜好は存在しうるのか、サドマゾはどうなんだ、面白い、それ行ってみよう!という居酒屋ノリで始まった企画、ではなかったことを祈ります。
(2024/9/12)