『酔いどれ女の流れ旅 カルーセル麻紀 “自叙伝” 』読了

 装幀・デザインなどがどなたかの記載は見当たらず。ひさびさに「酔いどれ」が題名につく本を読もうと思ったのと、出版社が地方出版社で、知らなかったので、読みました。

カルーセル麻紀“自叙伝"酔いどれ女の流れ旅

カルーセル麻紀“自叙伝"酔いどれ女の流れ旅

 

 財界さっぽろ - Wikipedia

カルーセル麻紀 - Wikipedia

著者は有名な方で、以前にも有名人との交友録的な自伝は出しているそうで、しかし私は知らなかったので、楽しく読みました。生い立ちを書いた? のは初めて? だそうで。十人きょうだいの六番目で次男だとか、徹底的に戦って米国を倒すの意味で徹男とつけられたそうで、これは、幼くしてなくなられた弟さんが「勝男」で、戦後すぐに生まれた弟さんが「節男」なので、「鉄男」とどちらにするか迷ったのかもと思いました。

「序にかえて」を書いてるのは倉田真由美

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壮絶な“流れ旅”の行き着く先は……  オネェ界の“パイオニア”にして“レジェンド”が 艱難辛苦 抱腹絶倒 波瀾万丈 の反省を振り返る!

以下後報

【後報】

「酔いどれ」というタイトルですが、オチャケ関連の名が付くとヒマな団塊世代に売れるからやってるだけだと思います。本人は強い(強かった)そうですが、酒に関する強烈なエピソードも思い出もないです。北島三郎松山千春が飲めない記述はあります。

17歳くらいで飛び込んだ水商売での、ハタチまでの数年間の放浪がすごく「濃い」のですが、切ったはったの人間関係で飛び出す飛び込むのより少し低い比率で、金づるにしようとよってくるヒモタイプのヤー公とのトラブルや回避、逃避行が頻繁に発生してます。金になるならないは、男女の性別関係ないんですね。本人は幼少期からオネエ気質だったわけですが、もう当初から庇護者気取りとか指南役というか物陰に連れ込んでくわえさせてくる「銭湯で知り合った親切なオニイサン」なんかが目白押しで、読み始めてすぐ、以前読んだ内藤ルネの自伝と脳内対比させながら読み進みました。精神は同じなんですよ、たぶん。でも、女性で、美人とブスとで幼少期から周囲の扱いや見られ方が異なるので、おのずと人格形成にも影響と及ぼす(とよく言われる)のと同じことが、男性にも起こっている。「受け」ってそういうことなのかと。

stantsiya-iriya.hatenablog.com

内藤ルネが、ふたこと目には自分のことを「おへちゃ」と呼んでるのと、カルーセル麻紀が、違法だった睾丸摘出を大阪でやって女性ホルモン打ってたら自然と胸が膨らんできた、みたいな回想との、この違い。でもこの二人は、若いうちはもやもや思ってたかもしれませんが、老境に至っては、違いを違いとして認めあえるくらいの度量をお互い獲得している気がします。ドラえもんの、鈍行でも新幹線でもどちらも終点の大阪につける理論。

ほかの本に書いてるんでしょうか。モロッコの具体的な記述がないです。松山千春が、姉さんはモロッコにまで行った、なみのやつに出来ることじゃあねえ、みたいなすごみはあれど、外貨持ち出し規制とかパスポートヴィザ取得とか現地事情とか入院中以外の滞在期間は何食って何してたのかとか、アンドレ・ジイドのアルジェリア紀行だと現地の少年といいことしてるが、麻紀チャンも現地のオヒゲが濃い男性とか、はにかんだ少年とかと何かあったのかなかったのかとか、書いてあるかというと、一切ありません。触れてない。

芸能界の人名はさすがという感じでポンポン出ます。単体より、組み合わせが面白い。坂本冬美が出るとデヴィ夫人、水谷豊が出ると浅田次郎市川猿之助が出ると北島三郎石原裕次郎が出ると渡哲也と舘ひろし神田正輝が出ますが、真ん中がヤンチャな気がするように、わずかな描写からでも汲み取れてしまう不思議さ。舘ひろしはカルーセルを「麻紀ねぇ」と呼ぶそうで、さやねぇみたいなもんかと思いました。山口洋子が出ると伊集院静。頁107、猪俣公章という作曲家の先生がススキノで、倶楽部かなんかを中座して、初めてトルコ風呂に行った時のエピソードで、風呂で溺れたのでもうそのまま帰ると云ったらびしょびしょのまま体を拭かずに服を着せてくれて、そのまま飲んでる仲間のもとに戻ったというくだりがシュールでした。なんでからだを拭かなかったんだろう。

野球好きだそうで、阪神ファンから北海道日ハムへ、ダルビッシュから大谷翔平へと贔屓も変わったそうで、駒大苫小牧の優勝もわざわざ書いています。箱根駅伝も書いてます。その一方で、カーリングは連載時期と合わなかったのかもしれませんが、出て来ず、そしてコンサドーレ札幌は「コ」の字すら登場しません。やきう好きだから、サッカー出さないのかなあ。

途中で唐突にグラビアページがあって、おっぱいとか見れます。しこしこ。ジャンという、結婚生活を送ったフランス人男性とのツーショットも入れてますが、本文にそのエピソードもありません。なくてもこれだけ濃い本が一冊紡げるんだから、ほんとに経験豊富な人だ。

頁142、性同一性障害特例法により戸籍を女性に変更出来たことが、男であれ女であれへだたりなく励まし、応援してくれた母への感謝とともに語られています。(きょうだいなどには、近親憎悪というか、こういう家族がいていやだったと、正直に吐露してきたものもいると、率直に書いています)

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桜木紫乃松山千春、そして石原慎太郎が「カルーセル麻紀」を語り尽す特別対談付!

字が大きくて読みやすいです。

<目次>

序にかえて くらたま

第1章 花ざかりの森

第2章 青の時代

第3章 スタァ

第4章 荒野より

特別グラビア 愛の疾走

第5章 豊饒の海

特別対談 桜木紫乃(作家) 

     松山千春(フォークシンガー)

     石原慎太郎(作家・元衆議院議員

NOといえる石原サンはどうでもいいのですが、松山千春との対談に、道産子出身ということでタカ&トシが出ます。同じ東京MXで番組持ってるマツコデラックス(N國黨と一件ありましたね)ついでに「徳光和夫の親戚」の肩書で、編集部注でミッツ・マングローブが出ます。イッコーさんは出ません。りゅうちぇるも出ません。りゅうちぇるは違うか。マットも、なんだ、作者はあまり巨人が好きでないだろうから、出なくてもそれで。あと、北海道というと、大泉洋も出ません。うるさいからいやなのか、仲はいいけど名前出すの忘れたのか、どちらかでしょう。以上

(2020/6/26)