『ジョン・レノン ロスト・ウィークエンド』The original title: "Instamatic karma" by May Pang 読了

 装丁 渋川育由 翻訳者山川真理によると、邦題は明らかにアル中映画「失われた週末」を意識していて、しかし実際にはこの時期、ジョンは深酒で奇行をすることはあっても、精力的に活動しており、本書でもメイ・パン自身繰り返し彼はしらふだった?的に語ってます。しかし原題では絶対に売れなかったろう。なんだインスタマチック・カルマって。流石プラスチック・バンド的言語感覚集団の一員。www.kawade.co.jp

ボーツー先生と福田和也の文壇アウトローズがSPA!の対談書評連載で紹介してた本。まだ版元品切れになってない頃、何度も図書館に他館本リクエストし、ふつう県内蔵書なしなどはその旨リクエストに付箋をつけて返却通知があるのですが、この本はまったくそれがなく、「どうなりましたか?」「さあ…」の連続で、その後版元も在庫がなくなり、あいかわらずリクエストの返事も来ず、ほってましたが、ボーツー先生が死んだ後、別件(前川健一『タイ様式』に登場する推理小説『パラダイス・イーター』(徳間文庫)と関連書が、日本の古本屋には在庫がないのですが、ブッコフオンラインだと百均程度で在庫があった)ついでにブッコフオンラインで検索すると、アマゾンの出品者ボッタ価格と違って¥1,800という良心的な価格で在庫があり、日本の古本屋にも在庫がないことから、別件の二百円強の古書だけ近所のブッコフ店舗に取り置き願うのも恐縮なので、ブッコフオンラインにあわせて注文しました。したっけ、本書は通販のみの取り扱いで、紛失等、社内輸送だと社員を信用してないのかな? けっきょく、宅配便で受け取ったです。

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訳者は元編集者で、ビートルマニアっぽいと思いました。詳細知りません。

インスタマチック - Wikipedia

インスタマチックは、本書ではたぶんむかしのカメラの種類で、メイ・パンは写真家志望でもあったそうなので、それで持ってたのか、ジョンにもらったか、どっちかです。読み飛ばしたのであんま覚えてません。短髪のジョンがこのカメラを手にした写真も載ってます。カルマは कर्मन्  検索すると同名ユーチューバーがウィキペディア「業」の次に出ます。

彼女はほかにジョンから1968年製バラクーダをもらってます。運転手や運転手役の友人がどいつもこいつもあてにならないので、それで彼女に車を与えて運転させて「中間搾取を排除」Ⓒジョン・レノンしたんだとか。

プリムス・バラクーダ - Wikipedia

でも最初にジョンが彼女に言い寄ってきたときは、彼女はやべー、けど仕事(ジョンとヨーコのアシスタントなので、コーヒー淹れたり世界中のセレブに電話したりする仕事だった)も失いたくない、と考え、二晩続けて、ジョンを運転手の車に乗せてひとりで帰してたそうです。ところが、ジョンが運転手を一人だけ帰して、彼女とタクシー帰宅を強行することで、あれしたそうです。ウッディ・アレンポランスキーも、その時は本人は浮気のつもりだったのでしょうが、今世紀になって相手から訴えられてますので、ジョンもチャップマンに撃ち殺されてなければ、今世紀訴えられてたのでしょうか。その前にまえふりで、小野さんが小龐に、自分とジョンは今あれだけど、ジョンとつきあえるサムワンということで、パンちゃん、つきあえと指名してます。ほかの誰とも知れぬ女性に手を出したり鼻息荒い女性が迫ってきて闖入したら、自分の時もそうだし、大変だと思ったのかもしれません。

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2008年の彼女。最近の動画もありますが、まあいいかなと。セル爺。

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パンちゃんは龐ちゃんで、日本の料理研究家パン・ウェイや、山崎洋子のノンフィクションに出てくるエディー・藩のもともとの苗字〈潘〉や、潘恵子めぐみ母娘とは違う字です。両親は抗日戦争さなかの三十年代から四十年代に山東から米国に移民したそうで、ので、うえのきょうだいは本土生まれだそうです。本書巻末の謝辞のなかに、母親のリンダ・リーム・パンという名前があり、また漢人なのに、母親と娘で苗字いっしょだよ、と思いました。当時の米国社会に合わせて、母親が夫の姓を名乗っていたのでしょう。そうしないと式挙げてない、内縁関係扱いと思われてたのだろうと。

ビートルズメンバーはもとより、ミック・ジャガーとツレの女性の写真とか、いろいろな写真があります。ジュリアン・レノンの写真が多い。どうメイ・パンを見てたんだろう。小野さんの写真はありません。謝辞はあります。

 ジョン・レノン、カッコいいのですが、志村けんに似てます。志村けんが真似したのか。これで軽井沢ちょろちょろしてたのかと思うと。モテる男はちがうね、と思いつつ、オリエンタルにばかりいってしまう男と、あちらでは見られてるんだろうかと思いました。

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帯の背表紙部分にくっきりと「失われた週末」

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ジョン・レノン ロスト・ウィークエンド  「メイと過ごした時期は最高に楽しかった」 知られざる失われた週末(ロスト・ウィークエンド)のジョン・レノンのすべてを、未公開写真とともに回想した待望の冊!

帯をとると、笑ったジョンと、あっかんべージョン。

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ジョン・レノンをずっと愛してきた読者にとっても、つい最近知ったばかりの読者にとっても、メイの写真は何物にも代えがたい贈り物となるだろう。 そこには、死してなお音楽や詩を通じてより豊かな人生について指南してくれる男の貴重な素顔がある。 ラリー・ケイン

帯裏。全然関係ありませんが、日立工機が、Hikokiという社名に変わっていて、驚きました。ヒコーキと読んだのですが、ハイコーキだそうで、日立のヒの字を消すのか。

HiKOKI(ハイコーキ)

工機ホールディングス - Wikipedia

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頁117。マル・エヴァンズという人の生前の写真と思い出の箇所。あと、ハリー・ニルソンという人は、はっきりとは書いてませんが、ジョンにとって、つきあって損した、みたいな感じです。

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頁71。何もドクターペッパー空輸しなくても、というエピソード。ルートビアならまだしも。あとはまあ、バーガーキングのワッパーはジョンも食べたってことで。

頁33。ジョンの朝食はイギリス風のブレックファストを小龐が作ったり買ったりしてたそうで、ただし、ジョンは紅茶はあまりにもイギリス式なので、コーヒー飲んでたそうです。スティングとはそこが違う。庞妹はそれを、「郷に入っては……」と説明してますが、これは中国の同じ意味の四文字熟語、"入乡随乡" を念頭に置いて言ってるんだろうなと思いました。近くのアイルランド人のデリにブラッド・プディングが売られていたので買ったが、庞妹は調理法が分からず、ジョンに聞くと、てきとうに答えられて、てきとうな調理法になったとあります。

ブラッドソーセージ - Wikipedia

シンシア・レノンは本場のプディングアメリカに持ち込もうとして、税関で没収されたそうです。ハギスでなくても生ものはダメなのか。キムチ持ち込むみたいな話。同頁。

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料理だけを寫したかったのですが、口まで写ってしまった。メイ・パンの母親が作った、サンラータン(酸辣湯)をすするジョン。この黒さが、まったくサンラータンに見えないのですが、どういうことなのか。

ジョンは、パンメイの母親に会いたがらず、来ると逃げ回って、息をひそめて隠れてたそうですが、当時の中国(母親が人格形成した時代の中国)も、お金持ちであれば、戒律等があるわけでなし、第二夫人第三夫人と複数ワイフが持てた社会ですので、特に母親もなんもなかったかもしれません。

パンメイはその後トニ・ヴィスコンティという、イタリア系なんだか南米系なんだかみたいな米国白人男性と結婚し(その後ディボース)、一男一女に恵まれ、本書巻末の謝辞では、母親をさんざん悩ませた16歳の娘も本書制作に関してはとっても協力してくれたので、ほしがってたプレステポータブルをもらう資格は十分にありますよ、と書いてます。そういえば、頁19に、ジョンがニューヨークの部屋に置いた、当時もっとも画面が大きかったテレビについて記述があります(写真はなし)27インチの、ソニートリニトロンだそうです。以上

Instamatic Karma: Photographs of John Lennon (English Edition)