O・ヘンリ短編集(一)(新潮文庫)"Short Stories of O. Henry (1) " transrated by Ōkubo Yasuo 読了

 大久保康雄訳 30ページくらい訳者による「O・ヘンリの生涯と作品」が入ってます。そんで作品も16個入ってるのだから、お得でないこともない。

O・ヘンリ短編集 (1) (新潮文庫)

O・ヘンリ短編集 (1) (新潮文庫)

  • 作者:O・ヘンリ
  • 発売日: 1969/03/07
  • メディア: 文庫
 

デザイン 新潮社装幀室 カバー 前川直

初版が昭和四四年三月五日で、昭和六十年五月廿日に四十刷改版。読んだのは平成二六年七月二十日の八十四刷。

増田れい子『たんぽぽのメニュー』のたんぽぽは、これに収められている『アラカルトの春』"Springtime à la Carte" から取ったとのことなので、読みました。

stantsiya-iriya.hatenablog.com

 21世紀の現代なのでオチが読める作品と、21世紀だからこそオチが読めない作品があります(にんげんがヨゴレた)『ハーグレイブズの一人二役』"The Duplicity of Hargraves" や『善女のパン』"Witches' Loaves" をニヨニヨしながら、牧歌的な時代だったんだすなあ、と読んでいると、『よみがえった改心』"A Retrieved Reformation" で足元をすくわれて、なんしか恥ずかしくなる。

頁41、「譫妄」に「せんぼう」とルビを振っていて、逆に、「ぼう」と読むべきところに「もう」とルビ振ってるところがあったのですが、後者は付箋がどっか行ってしまい、探し出せません。

頁51「緑の扉」"The Green Door"

 冒険家に準ずるもの――勇気のある立派な人たち――は、これまでにもたくさんいた。十字軍からパリセイズにいたるまで、彼らによって歴史や小説の技術は豊かになり、おかげで歴史物語という商売が繁昌してきたのである。

 この「パリセイズ」という単語の意味が分かりませんでした。検索すると、まず、現存しないエイリアンのフィギュアなんか作ってた会社名が出ます。パリ祭と関係あるのかなあ。さっぱりです。

palisadesの意味・使い方・読み方 | Weblio英和辞書

Paerisades I - Wikipedia

ええ加減にしなはれ! アメリカはん - 岩波書店

お馴染み,パリセイズの仲間たちとの草の根平和運動に精を出しつつ,アメリカの今を鋭く斬る,著者の最新エッセイ.

米谷ふみ子の2006年の本の紹介で、岩波書子はあたかも読者も当然知ってるであろうふうに「パリセイズ」という単語を使ってますが、知らないものは知らない。

頁58の「イノンドの実」は、ディルでした。

kotobank.jp

頁40「振子」に出て来る「大黄のシチュー」の大黄も知らないので検索しました。

ダイオウ属 - Wikipedia

なんしか、出て来るアメリカ東部の人間がよく食べるのが、しょっぱい味付けのおかずと、パンには甘いジャムの組み合わせなんですね。変じゃないでしょうか。下記、麻井宇介おすすめ本のイタリア人農夫が出稼ぎ先のスイスで辟易した食事とそっくりな気がします。

『牧夫フランチェスコの一日―イタリア中部山村生活誌』 (NHKブックス)読了 - Stantsiya_Iriya

頁155、「ダッタンのプリンス」誰やねんという。ここに収められている話は、日露戦争くらいの時代なので、そういう描写があるのですが、その時代の「ダッタンのプリンス」となると、誰でしょうという。川島芳子の時代のナントカ徳王とかと似たようなものなのでしょうか。というか、川島芳子じたい、ダッタンのプリンセスと紹介されそうな気がします。本書の別の小説に、「鴨緑江の向こうへ押し返す」という比喩があり、漫然と、朝鮮戦争時代の描写かと思って読んだんですが、よく考えると日清日露の時代なので、意味合いが全く違うのでした。米軍が関与して押し返すわけではないと。

頁175

たまにはお寺でマズマ大明神にお線香をあげるのを忘れるんじゃないぞ。

『黄金の神と恋の射手』"Mammon and the Archer" の中のセリフなので、マモーンが「マズマ大明神」になったのかとも思いますが、分かりません。

ejje.weblio.jp

マモン - Wikipedia

この次の話『桃源郷の短期滞在客』も、"Transients in Arcadia"で、邦題よろしいなと思いました。『自動車を待つ間』も、"While the Auto waits" で、ホワイルの使い方ってこうなんや、と分かりますし、クルマが待っている間、と訳さないんだなーと思いました。『善女のパン』は、他社では原題通り『魔女のパン』と訳してるみたいです。こっちは誤訳としか思いませんが、多少なりともオチをカムフラージュ出来るかも。あまりにモロバレな展開なので、無理か。

ja.wikipedia.org

父親は医者だったが、発明好きが高じて働かなくなり、酒浸りで死亡。本人も、二度目の妻と結婚した頃から書かなくなり、死因は肝硬変。享年48くらい。以上