『朝の雨』"Morning Rain"『ヒサエ・ヤマモト作品集 -「十七文字」ほか十八編-』"Seventeen Syllables and Other Stories." by Hisaye Yamamoto. Introduction by King-Kok Cheung. Revised and expanded ed. 読了

Primary Source : Pacific Citizen 19 Dec.1952 : 4, 50.

サンフランシスコで戦前からおかかえ庭師として働いているミスター・エンドウが、ロスに住む娘サダコ夫妻と孫(赤ちゃん)の顔を見にくる話。

ムコドノのハリーはあんまり日本語が得意でなく、おしゅうとさんはあんまり英語が得意でないです。ので、ふたりの会話は、努力するのですがはずみません。が、朝の情景を切り取った小説なので、亭主はすでに出勤していて、父親が遅い米国式の朝食を摂る場面です。

父親はロスでは居候なので、今日は昼間、友人のイワナガさんを訪ねようかとか、"Nihon-machi"の"Fuji-kwan"で映画を観ようなどと一日の予定を語るのですが、そこにふと、老いの訪れを感じとる。 

「富士館」なんて、ぜったいにリトルトーキョーに実在した映画館だろうと思って検索したら、やっぱりありました。サイトに書かれたスペルは"Kan"ですが、戦前ならルビは"kwan"「くわん」だろうし、写真には"Fuji"しか書いてないので、特にそこは気にしません。

losangelestheatres.blogspot.com

Fuji Kan Theatre in Los Angeles, CA - Cinema Treasures

PCAD - Fuji-kan Theatre, Little Tokyo, Los Angeles, CA

邦訳で「オトウーサン」と書いてあるので、"Oto-san" がそのまま出てくるのは分かったのですが、「さあ、午後はイワナガさん一家を訪ねるとするか」が、原文でも"Sa, I think I'll visit with the Iwanaga this afternoon. " になってるとは思いませんでした。とんでもないな。

娘は父親に、日本人街の土産に何かほしいものがあるかと聞かれ、"manju"マンジュウと答えます。"I think some manju would be nice." で、下記に続きます。

P59

 "Oh, yes. " she said, "get a lot of the green ones, the green ones with kinako!"

頁157

「ああ、そうね。緑色のマンジュウをたくさんね。キナコのついたのをね!」

緑色の饅頭は抹茶もしくはよもぎと思ったですが(あるいは例のサボテンの寄生虫の食紅)そこにきなこをまぶすって、あるのかなと思いました。

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緑色饅頭の画像検索結果。ディズニ―饅頭否ピクサー饅頭はアイデアだなと思いましたが、左上のアンド検索ワード「カビ」がもっとおかしかったです。饅頭からペニシリンなのか。

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「きなこ」「緑色」「饅頭」の検索結果。抹茶ときなこ、草饅頭とキナコ饅頭、の二種でいろどりを鮮やかにするのが主流みたいで、緑色のマンジュウにきなこをまぶすというのは、リトルトーキョーに咲いた仇花だったのかもしれません。どんなのか見たいです。以上

ヒサエ・ヤマモト作品集 : 「十七文字」ほか十八編 (南雲堂フェニックス): 2008|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

ヒサエ・ヤマモト - Wikipedia

Hisaye Yamamoto - Wikipedia