冒険研究所書店企画展「角幡 唯介 北極の10年」ADVENTURE LAB. BOOK STORE Special Exhibition "Yusuke Kakuhata a decade of Arctic exploring" ふらっと立ち寄り

ここの店主とカクハタのひとが無人の荒野をえんえんたったふたりで珍道中だったとは知りませんでした。ミスした人が激励むなしくやめてしまったので精神的にどっときて(やめると言ったのは二度目で、今度は私が責任者で)、前日雨で電車通勤でしたので、帰りも電車なら、逆方向に乗ってこの駅で降りて、店主にサインでもしてもらおうと思って立ち寄ったらこんな企画展やってました。

以前ここで『ルワンダでタイ料理屋を開く』というシンママ奮戦記の本を買ったのですが、今日はその本は見当たりませんでした。怒涛の売り切れだったらゴイスーですが、事実は知りません。

ここに寄る前に、駅の反対側のベトナム食材店で、いぜん果物につける味噌みたいな調味料があったので試してみようと思ったらお店の人が「これはオニイチャンの口には合わないと思う、日本人の好きな味じゃない」と言われ、ペンディングしていたのを、あちこちベトナム料理店に行くようにもなったし、どこかで食べ方指南してもらえばいいので、買おうと意気込んで行ったら、もうその果物につける調味料は売ってなくて、残念閔子騫でした。

それでまあ全然関係ないのですが、今日その後帰りの相模線で、ドアボタンを押さずとも全車両ドアが開くのに驚いたりしながら乗ってたら、労働者女性二人がマッチングアプリ一挙に六個登録したとかそういう話をしていて、フェイスブック連動はやりにくいとか、イケメンが来るとこわい(貢がされて薬漬けにされて風呂にでも沈められたらかなんということでしょうか)とかそういう話をしており、この書店でも、彼女を紹介しに来店した格闘家の人が、マッチングアプリで知り合った相手と会うのに、いきなりサシオフはためらわれるので、お互い友人を連れて二対二で会うことにしたその友人同士として出会ったのがなれそめ、と話していて、いい話だなと思いました。

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天測に使用する六分儀

これが、極夜行および極夜行前に登場する六分儀の現物なのでしょうか。ちょっと感動した。

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拡大。なんしか使い込まれてました。

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〇ワシントンランド WashingtonLand 〇フンボルト氷河 Humboldt Gr. 〇アウンナット Aunnatoq 〇イヌアフィシュアク Innuarfigssuaq 〇シオラパルク Siorapaluk

シオラパルクというと、日本人イヌイット大島育雄のしとの本などでも読んだので、すっかり親近感があります。

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アザラシの皮の手袋

乾燥地帯で使われている革製品を、日本のような高温多湿に持ってくると、鞣しが甘いせいか、臭くなったりすることが多い気がしてるのですが、会場で別ににおいはありませんでした。

「アグルーカの行方」から「極夜行」へ
そして、はじまる極北犬ぞり漂泊の旅
稀代のノンフィクション作家にして探検家
角幡唯介は何を目指し、どこへ向かうのか

 

特別展示
角幡唯介荻田泰永によるカナダ北極圏1600km徒歩行。
『アグルーカの行方』にまとめられた遠征の記録動画を、
10年目の会場限定初公開!
10月1日~31日 第1部 氷上の60日 約60分
11月2日~30日 第2部 ツンドラの43日 約60分

ぼーっと見てたら、第一部も映ってたので、ラッキーでした。一面雪の荒野の第1部はタフな世界で、凡人の参入を阻むおもむきがありますが、第2部は凍土の短い春ですので、なんしか見ていて、富士山登山口にビーサンで現れる勘違い登山志願者並みに、自分もこういうとこ歩いてみたい、行けども行けども人里にたどり着けない不安を抱えつつとぼとぼ歩いてみたい、でも素人が無謀なことしても仕方ない、こういうのは計画実行出来る人、出来ない人を残酷に切り分けると思ったです。

プロでもマッキンリーの植村直己のように消息を絶つことがありましたし(現在とは比較出来ないかもしれませんが)勢いだけで素人が何かするのはさらにあれ、というか、最近も小野田少尉発見映画があったので、見つけた鈴木紀夫大放浪が、その後ヒマラヤに雪男を探しに行って消息不明になったことは巷間再流布してそこそこ周知と思います。いわんやここ四半世紀の回教圏潜入すぐ人質、象徴的な首ちょんぱ動画etc.をや。

…ゴールの町で、プレハブ商業施設のケンタッキーとピザハットを激写していたのが、無人の野を行く踏破のあと、文明世界を見た人の気持ちを表してたと思います。西表島から石垣島に行くとモスバーガーがある(かつて)のにも似て。

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https://stantsiya-iriya.hatenablog.com/entry/2020/06/12/221523

角幡のひとは、上の写真のような報道を見て、ゴッツい、中国の俳優でいうと、ヘディング脳秋田似の廖凡みたいなタイプのしとかと思ってましたが、記録映像を見ると、小柄な感じのひとでした。チュートリアルのようなふたり、と言ってしまうとちがうと言われそうです。

猟で仕留めた獲物を加熱して食べるコッヘルみたいな鍋もその辺にあったと思います。映像で、雪解けでもう使えない橇を解体処分する場面があり、食料のようにデポするってわけにはいかないんだろうかと思いましたが、愚問だったみたいです。食事は、高カロリーの脂身の多いペミカンというのを本で読んで、それなのかとワクワクしましたが、それとはまた違いました、たぶん。

私はサインを頼んだことがほとんどないので、サインのTPOを知らず、転売防止の意味でも、自分の名前を告げて、〇〇サン江、と、キッチリ書いてもらうのが礼儀だと知りました。確かに、こうすれば書く方も気持ちよく書ける。

なんでも撮っていいみたいでしたが、いざそう言われると撮れないものです。氷結した川の氷が、諏訪の御神渡りのようだが多分ちがうとか、むかし黒河だったかな、アムール河を徒歩や橇で渡って対岸のブラゴベシチェンスクに行ったり来たりする人たちを見たこととか、ぼんやり考えながら見ました。中国のオーロラ村(極光村)と稚内は、どちらが緯度上なんだろう。そして、たぶんどちらも、この展示で一部の人間の心をつかんで離さない、極地よりはぜんぜん南なんだろうと思ったです。寒さのレイヤーが違う景色を見てるのに、「春風吹いて、宗谷の岬」とか歌おうとしてしまう。以上