『 健康で文化的な最低限度の生活 11 』"The minimum standards of wholesome and cultured living" (ビッグコミックス) "BIG COMICSスピリッツ" 読了

駅前書店に平積みだったのに気づいて、ビッグコミックオリジナル買うついでに買いました。アンダーニンジャの発売日でもあったはずですが、そっちは見ませんでした。なんでだろう。三月から、忘れないように、某メガ書店に新刊を取り置き依頼することにしてみたのですが、この本はさっそくそこから漏れたです。Nスタのお天気予報は森田さん。

まさかの表紙。じっさいに、この人物はこれ以上ないほど適正に大活躍します。上着なしに長袖、着ないよなあ。日焼け気にしてるのか、実は二の腕の体毛が濃いのか、あるいは墨入れてるのか(人は見かけが九割というベストセラーがかつてありました)

あとまあ、作中の直接交渉場面では使われてませんでしたが、論点そらしのテクのひとつとして、アゴマスク、鼻出しマスクへの指摘があり、「それ、意味ないやろ? 飛沫飛ぶやろ。防護にもなってないやん。マスク下げて口出してツバとばして対面業務て、どういう了見なんやろな~」と言われないよう(相手はそれでいて微妙に出していて、ツッコミ待ち状態)にする、という基本は、作中ではほぼ完ぺきに守られています。口を描かず感情を表現するすべとしては、実際の業務でもそうですが、いつも柔和な目つきとか、ことばによる音波のテクに磨きをかけるしかありません。そこまでよく描かれていると思いました。

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(11) 食う者、食われる者 入り乱れての最終局面! 生活保護CWケースワーカー闘劇、“貧困ビジネス編”最新刊。 累計(紙・電子)100万部突破! 柏木ハルコ

千葉大出身とは。のー先生のマンガのような、東京在住千葉サポ… ではないだろうな。週刊ビッグコミックスピリッツの2021年18号、20号、23号、33号、35号、38号、40号、2022年1号、4・5合併号掲載。ぜったい紙連載では追いつけてない。前号覚えられない。電子版で、前の回読み返しながら次の回を読むパターンではないかと。

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「オレンジパルム」に住む受給者達を支配する石橋の暴挙はさらにエスカレート。 暴行を受け、ホームレス状態である角間の「安全」を確保するため、 生活保護CWケースワーカー義経えみるは住居探しに奔走するが―― 住まいと貧困の関係に迫る“貧困ビジネス編”最終局面へ!!

cover design : Kobayashi Mitsuru (GENIALÒIDE:inc) 装丁 小林満(ジュニアロイド)連載担当、単行本責任編集、単行本編集、それぞれ明記。この、電柱の白抜きがとてもいいと思いました。主人公が似合わないベレー帽かぶってますが、これは、なぜかカンテ~レがドラマ化した時の主役、吉岡里帆をイメージしてると思いました。ドラマノキャッチコピーは、「誰かのために、💦汗かく夏」ですが、この巻は、「誰かのために、かかされるイヤ~な汗(;゚Д゚)」でしょうか、さしづめ。

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100 SHOGAKUKAN 100th 真摯に向きあうえみる。 「これが… 福祉ですか?」 「区として誠意ある対応を願いますよ…」 角間の返答は… 生活保護のリアルに触れる衝撃の社会派コミック!

「これが… 福祉ですか?」のせりふは、帯で見ると恫喝のいちぶぶんみたいですが、中だと主人公が上司にたてつく青い部分です。こういうのは、長引くと、眼前にある変わらない現実と、どうせまんがだと都合よく解決するんでしょ、の思いの交錯、ギャップが激しくなるので、正直私も手に取って、読む前からうんざり感が出るのを抑えきれませんでした。前巻であんだけコロナカ突入で盛り上がったのに(自分の感想見るとそういうテンション)もうすっかり忘れてます。コロナ特需がなくなった後の、あれやこれやの窮余の策を見ることが多くなったせいか。もちろん審査なしにじゃぶじゃぶ特需の継続なんか論外ですが。でも、10万円再給付は別です。必要なさそうですが、例外なしにくれるもんなら、イランという人はいない。

最近はこういうニュースがいくらでもネットで残るわけなので、極刑でなく、短期で出てこれたりすると被害者の安全ガーと思うせいか、長くいさせろ的コメントが必ずつくのですが、本書の場合、懲役八年です。本人の年齢的には長いでしょうね。まだ三十代のはずなので。それにもかかわらず、頁188の、漠然とした不安が蘇る場面、しかもそれはプロの脅しで植え付けられたもの、があってよかったです。こういう話で描かなければいけない描写を箇条書きにして、ひとつひとつ遂行して、これも抜け落ちなかった。

表紙の人物が出てくる場面は当然それに関連していて、昨今よくある「見て見ぬふりして見殺し」「かかわって本人巻き添え」の視野狭窄二項対立でないオルタナな解をよく描いていると思います。ようするに周りを巻き込む、それだけですが… 信頼出来る人間、力のある人間をなるべく巻き込む。

で、それは先に相手が役所内でやってるわけですが、私は『九条の大罪』とか読んでないので、プロのディベートテクって、もう少し相手を折るんじゃないのと思いました。音波でなく字にしてるせいか、なぜこれで相手を壊せるのかが分かりにくかったです。上司出せで、ホイホイ上司出さずに対応しろみたいな内規があったら(上司出して言質取られたらおえん、とかそういう後ろ向きかつ身も蓋もない理由で)ダメでしょうが、そういうことはなさそう。あと、今は法が変わって録音録画フリーなんでしたかね。特にことわりありませんが、弁護士と対応相談する場面など、記憶に頼らず、音声再生を基にやる気瓦斯。

これだけひとりで任されてやってる、鉱脈をひとりで見つけて話しとおしてスキーム作ってやってる男が、こんな簡単に見捨てられてボコボコにされるとか、あるのかなあと思いました。かわいがられてない。のうのうとぬけぬけと、別の奴にひっかぶせて、自分はおとがめなしで安泰な気がします、現実には。

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【「居住生活ができると認められる者」の判断方法】 問(第7の78)局長通知第7の4の(1)のキの「居住生活ができると認められる者」の判断方法を示されたい。 答 居住生活ができるか否かの判断は、居住生活を営むうえで必要となる基本的な項目(生活費の金銭管理、服薬等の健康管理、炊事・洗濯、人とのコミュニケーション等)を自己の能力でできるか否か、自己の能力のみではできない場合にあっては、利用しうる社会資源の活用を含めできるか否かについて十分な検討を行い、必要に応じて関係部局及び保健所等関係機関から意見を聴取した上で、ケース診断会議等において総合的に判断すること。  なお、当該判断に当たっては、要保護者、その扶養義務者等から要保護者の生活歴、過去の居住歴、現在の生活状況を聴取する等の方法により、極力判断材料の情報収集に努め、慎重に判断すること。

カバーとった裏表紙。その意味では(どの意味でしょう)スナックで手のかかる煮物とかせっせここさえて飯炊きまかないやってた女性など、必ずしもタスクだけでやってたわけでもないと思います。賞味期限切れ冷食のタマゴヤキもどすとか、そういうふうにいくらでも手を抜けるはずなのに、たぶん料理などが好きなんだと思う。そしてマスクはボッタ。そうやって、いい部分と悪い部分が同居してるから、ゼロワンでバッサリやれない、悩ましい部分があるんじゃいかと思います。ようするに人たらし。福祉とこういう部分は切っても切れないだろうから(退職や部署異動がない限り)このオバサンは街でバッタリ再会「アラ」なんて展開もあると思いました。

私は数年前に、どうしても分からないことがあり、藤沢の聴覚障害者福祉センターに話を伺いに行ったことがあり、最近も、厚木の福祉保健センターから厚木市の障がい福祉課に教えてもらいに行きました。どちらも、分かりやすく真摯に、疑問点を解消してくれて、さらに、グレーゾーンがない点も分かって、よかったです。これも表紙の類例事項かな。以上