『羊のひとりごと』ཚེ༌ཐང༌གྱི༌རང༌གགམ། "A Sheep's Soliloquy." རང༌སྒྲ། Rangdra 才加(仁扎) / 『チベット幻想奇譚』བོད་ཀྱི༌འདྲེ༌སྒུང༌ངོ༌མཚར༌གཏམ༌ཚོགས། "Tibetan Fantasy Tales"より 読了

チベット幻想奇譚|星泉 チベットの現代作家たちが描く、現実と非現実が交錯する物語

装画・扉絵 蔵西 装釘 宗利淳一 ←クギの字を使った「装釘」は、暮らしの手帖などに使われていると、ほかの方のはてなブログで拝見しました。

収められている十三の短編の、一個一個の感想の、八個目。第二のチャプター「Ⅱ 異界 / 境界を越える」カテの作品。星泉サン訳。初出は「カンギェン・メト」《岗尖梅朵》1992年。1999年青海民族出版社刊の短編集『雪山の麓の物語』《雪山脚下的故事》所収が底本。

ランダが才加"caijia"とは、いくらアムドとはいえだいぶ音が変わるものだと思ったのですが、下記の漢訳作品集紹介サイトを見ると、《仁扎》"renzha"というペンネームを持っているそうなので、ランダはそっちかと。

平凡的人生的主页

アルファベット表記は རང༌སྒྲ། を含むFBのURLを使いました。ので、アムド語の発音ではないかもしれません。だいたいってことで。

www.youtube.com

その絡みで出てきた動画のうち、いちばんカッコよかったやつ。でもこれ、あとで相当いじってますよね。ひとりでやったのかなあ。

相変わらずチベット語は、打ち込んでも、ファクトチェックノグーグルはケーキがどうとかしか言いません。漢語名は、仁扎だとちょっと出るのですが、才加だと圧倒的に下記の人が出ます。

ja.wikipedia.org

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この話は、解説を読まないと、意味が分かりません。その解説で、21世紀のチベットではますます放生会がさかんになり、トラック何台分の焼き魚、否、生きた魚を買い付けて放流したりするとありました。下流で漢族漁師が網はってるに10,000ペリカ。なんでチベット人が魚食べないか忘れましたが、よくない死に方だと水葬で、河川はそういうところだから、だったか、やっぱりなんかの生まれ変わりを考慮したのか、どっちだったかなあ。ザリン湖とオリン湖に行ったとき、漢族漁師集団がテントに泊まり込んでガッハガッハ捕り放題で、捕れた魚をトラック満載して西寧に送ってましたが、それを見ながらチベット人の牧民がなにごとか叫んで罵倒しており、「地獄に落ちろ」とか「呪われろ」とか呪詛のことばを吐いていたんだろう、と勝手に解釈してます。合ってるはず。

扎陵湖 - 维基百科,自由的百科全书

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鄂陵湖 - 维基百科,自由的百科全书

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それと、漢族社会でいうところの《械斗》、この場合は村の共同管理の草地、放牧地をめぐる村同士の争いがこの話の主題で、最近邦訳された、一連のアムドを舞台にしたチベット小説の中でも、よくとりあげられるテーマです。

kotobank.jp

個人的には、回教徒村とチベット人集落混住地域の、一触即発なヒリヒリする日常のほうが小説のテーマとして刺激的だと思っているのですが、書けないのかもしれません。融和デスヨ~。

頁124

上集落と下集落の草地を巡る抗争は、時代が新しくなっても語り続けられているケサル王物語みたいなもんで、幾度となく繰り返されているものだから、今さら驚くには値しない。だが、去年から今年にかけてはケサル王を名乗る者は増えるばかり、攻略すべき砦も増すばかり。

ケサル王を語る者は増えてもつぶされるばかり? いんねんつけられるのがめんどくさいので語らなければ、隠してると言いがかりをつけられるし… ほんにこの世はあほらしい。アムロ「ボクが…、ボクがいちばんうまくケサル王を紹介出来るんだ…」フラウボウ「ばかな○○…」

頁125

飼い主は、ケサル王物語でいえば命を顧みないケサル王の兄、ギャツォ・シェーカルのような勇敢な男だが、今日もしギャツォ・シェーカルよろしく飛び出したら、ケサル王物語で言えば敵国ホル国の武将、狡猾なシェンバ・メルのごとき上集落の連中に、あの世送りにされちまうのは必定だ。

ケサルには言及するが、めんどくさい人やその取り巻きはスルーする、"烦人别管"这就是。それでいきよし。ヤッサンヤッサン(広東語)

【後報】

私が打ち込んだ『チベット幻想奇譚』の、チベット文字がいちぶ違ってるとご教示頂きましたので、つつしんで訂正します。まだほかにもあるんだろうなあ。

✖: བོད་ཀྱི༌འདྲེ༌སྒུང༌ངོ༌མཚར༌གཏམ༌ཚོགས།

○: བོད་ཀྱི༌འདྲེ༌སྒྲུང༌ངོ༌མཚར༌གཏམ༌ཚོགས། 

 

トッホッホ。(2022/11/16)