装画 富安健一郎 装幀:早川書房デザイン室
収録十三作品のうち、じゅうに個め。2003年9月27日脱稿ながら、2010年1月に石家庄の花山文芸出版社から刊行された短編集《时光尽头》”shiguangjintou“に収録されるまで、日の目を見なかった作品。
母親と胎児、それから母子で実験をしてる女性脳科学者の三人の対話でお話が進行する、めずらしい構成です。なんでそんなに発表が遅れたのかなあと、理由を一人っ子政策や農村戸口の都市への転籍絡みに求めてみようかと思いましたが、どちらも緩和は本作発表後ですから、発表の契機としてはあまりあてはまらなかったです。
母親は甘粛省農村の小卒の出稼ぎで、研究所の雑用で生計を立てていて、研究者と会話するうち、こうした展開になったということで、書いてないんですが、生まれる子どもは都市戸口がもらえるようなニュアンスだなあと思いました。博士が妊娠前の女性に話しかけるとき、「グーニャン」と言って話しかけるのですが、そんなものですかね。小姐ではなく。
マタニティブルーならぬボーンブルーなので、確かに訳者あとがきにあるとおり、衝撃作です。英訳がネタバレというか、かなりにょにつに内容を物語ってくれてます。
親と同じ人生を歩みたくないから、という判断を下す未成年者に対し、おとなになっていないのに、ちゃんとした判断がくだせるの? という話におとせているかどうか。まあ、「それでも世界は美しい」って言うだけなんでしょ、という。結論を見ると、落とせてるんだとは思いました。以上
この人のピンインカタカナ名は、「ツ」と「シ」の書きわけが出来てない人には鬼門。