『パンどろぼう』"Bread Thief" by Shibata Keiko 柴田ケイコ 読了

2020年4月16日初版で、読んだのが同年12月15日の10版。装丁 albireo 編集 内藤澄英・角田望

ほかの人のブログで見た絵本。もう読む本が溜まりすぎてるので、ほかの人のブログを見る時も、なるべく書名を見ても心を動かされないようにしているのですが、これは絵本だからいいかなと。

ehon.kadokawa.co.jp

「いただくパンはひとつだけ」と言いながら広い自宅にはパンが所狭しと並んでいて、その時点でもう不穏な絵本です。「いただくときはかんしゃをこめて」と言いながら、食べきれないほどぬすんでいる。捨ててるんだろう。それなら、じつは感謝なんかしてないのではないか、言行不一致な主人公なのではないかと子どもたちの心に疑念を生じさせます。まじめに生きてたらこんな広い家に住めるの? パンどろぼうはゆうふくなの? ゆうふくなのにどうしてどろぼうをしてるの? もうぎねんでむねがいっぱいで、くるしい。

客がいないのにねっしんにパンをならべる、「せかいいちおいしいもりのパンや」さんも、サイコのかおりがします。やばいひとですね。きっとほかになにか収入源があるのでしょう。

苦味は、人間がいちばんさいごに獲得する味覚で、歳をとらないと分かることができない味です。それを、「せかいいちおいしい」のだからそうでなければいけないのに、というところで、幼少期にもう覚えさせられる。これからあなたを待ってる人生も、同じように「せかいいちおいしい」ばかりですよ。いってらっしゃい。気をつけて。(ちがいます)

KADOKAWAが絵本を出してるとは知りませんで、後発だとこういうことをやらかしてヒットをとばすんだなあと。すばらしい。

以上