「パッドマン 5億人の女性を救った男」(原題:Pad Man)(ヒンディー語:पैडमैन)(ウルドゥー語:پدمان)劇場鑑賞

海老名で年末に、レイトショーチケット買って、用事を終えて夜九時過ぎに入場しようとした刹那、ふと、そのまま見ると映画終了が23:45分で、日付が変わる前に帰宅してはてなブログの更新が出来ず、日記継続が途絶えてしまうことに気づき、じゃー見ないで帰ろうと、これ以上ないくらいアンチリア充な理由で観劇を取り止めたいわくつき映画。シネシャンテで観るかなと思ってましたが、渋谷シネクイント水曜サービスデーで洒落乙鑑賞という名の罰ゲーム。

現代のインドで“生理用品”の普及に人生を捧げた男の感動の実話
「愛する妻を救いたい――。」
その想いは、やがて全女性たちの救済に繋がっていく。

 パッドマン 5億人の女性を救った男 - Wikipedia

Pad Man (film) - Wikipedia

映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/c/c2/Padman_poster.jpgまだまだお客は来てました。フィルムタイトルはインド映画の例によってで、左にヒンディー、右にウルドゥー、真ん中がイングリッシュ。なのですが、ウィキペディアによると、パキスタンではテーマが月のものでタブーなので、上映禁止になったそうで、このブログのウルドゥー語タイトルは、ヒンディーからグーグル自動翻訳で出しました。でもこのウルドゥー語の単語で、デイリーパキスタンのこの映画の記事が出たので、合ってると思う。あと、この映画始まる前、映画泥棒が出ませんでした。ダンガルもパキスタン上映中止(監督兼主演のアーミル・カーンムスリムインディアンの家系)がパキスタンに合わせた修正版上映の条件を吞まなかったため)でしたが、海賊版市場を潤すだけだと言われており、この映画も、いかなる手を使ってでも上映禁止国で人目に触れさせろ的な意図があるのかと勘ぐってしまいました。ソニーピクチャーと映画泥棒。シネクイントはセンター街。
https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/71iPficpb6L._SL1200_.jpg今年観たのですが、本来2018年視るべき映画だったこともあり、2018年のベストにしようかなと思いました。バッド・ジーニアスは何度でも書きますが、ラストが弱い。この映画は、前半のヒロイン、幼な妻のガヤトリが鷲尾いさ子に似ていて、その人の難病を思い出したことがまずひとつ。生理というと不順だか"不准"だか"不均"だか忘れましたが、五日間とはっきり決まっているものでもないだろうと思ってしまうのですが、その辺が文系重視の科挙の中国人と数学得意なインド人の違いかもなと思ってみたり、月経と書いて北京語でユエジン"yuejing"と読みますが、簡体字では"月经"です。映画観た後セブニレブンでカラアゲ串買ったのですが、(お手拭き)要りません要りませんと繰り返し日本語で店員さんに言ったのですが、何故か緊張してる店員さんがお手拭きそのまま添えてビニル袋に入れようとするので、ブヤオウェイションジン(ホスーリャオダイ)不要卫生巾(和塑料袋)と言ってから、あっしまった、衛生巾はお手拭きでなくナプキンだった、と顔が紅くなりました。买三送一。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/91elGoEtqjL._SL1500_.jpgこの映画で、生理は英語でチャムと言うんですね、というセリフがあり、あっそれでチャームナップなんだと思いました。まーそういう内容で、出産と違い、生理用品の普及率12%が即若年女性の死亡率につながるわけでもないので、主人公はなんかほんと、ぜんぜんヘンタイです。なぜそんな生理用品改善に邁進するのか、映画を観ていても全然分からない。ボロ布でいいのに(しかもはずいので日に当てず陰干しして繰り返し使う)何故ナプキンを使わせようとするの?それが55ルピー(2001年当時)もするのが高いので、自作して使わせて漏れてしまう失敗を繰り返して、妻も未婚の妹も嫁いだ妹も初潮を迎えた近所の娘も医科大学の女学生たちもみんな試着の恥辱を肯ぜず、最後は肉屋から血を買ってサッカーボールの中のゴム袋に凝固しない薬を落として詰めて自分で試着するのですが、それも失敗して人ごみの中血まみれの下半身になってしまい聖なる川に身を投じて、川を穢したということで村を追われ、嫁は実家へ、母も妹も嫁いだ妹の家に身を寄せ、そこで"INTERMISSION"インターミッションになり、トイレに行こうかと思ったら、字幕が「引き続きお楽しみください」(笑)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/68/Cellulose-2D-skeletal.svg/360px-Cellulose-2D-skeletal.svg.pngインド人なので男はある程度財とかいろいろ築かないと結婚出来ないので、必然的に幼な妻の年の差婚になるので、それで妻の労苦を軽減しようと頑張るわけですが、これが誰も理解出来ず、安藤百福チキンラーメンを作った時以上の大変さです。まんぷく、今からでも、実は台湾人ですってやらないかな。何故改変したのか。で、知識を得るため大学教授の家で子供のナニーとして住み込んで(この大学教授がホンモノの実在パッドマンに似てる、融通がきかなそうでガンコで)、綿の試験場かどこかでナプキンの素材を分析して貰って、吸収剤が綿でなくセルロースであることを突き止める。まずここまでで、映画は半分以上尺を使ってしまいました。綿だから吸収出来ずモレる。セルロースならモレない。なんでこんな基礎のキホンみたいなことが(私も知りませんでしたが)クリアできずに映画半分以上進んでしまうのか。インドは日本とは時間の流れが違うんだなあ、ホントに。悠久でした。

セルロース - Wikipedia

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/718gYCsRQUL._SL1000_.jpgでもウィキペディアセルロースには、全然吸収率のこともナプキンの素材であるとかそういうことも、書いてないんですよね。これでは主人公もお手上げなわけです。映画では最初、セルロース作ってる原材料メーカを大学教授の息子がグーグル検索して、国際電話かけて息子が英語通訳して(主人公の英語はネイティヴには歯が立たない)セルロースのサンプルを多国籍企業コングロマリットから送ってもらってそれで製品開発するのですが、以後どこから原料買ってるかが出てこず、ここは粗探しのまあ、マトだと思います。パソコンはブラウン管モニタ。一括工程でナプキンを製造するマシンの動画を教授に見せられて、こんなんだから55ルピーの製品になるんだ、インドにこんな精密高度なものは要らない、それぞれの工程(四工程)をそれぞれ安価に製造可能なマシンでこなせばそれでよい、と考え、高利貸から一年期限で金を借りて製作に入ります。で、それが完成するあたりで、後半のヒロインが登場します。ここからが素晴らしかった。2018年ベストと考える所以です。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/53/Akshay_and_Twinkle..jpg/360px-Akshay_and_Twinkle..jpgこの映画、主演男優の奥さん(右)が原作小説(短編)をまず書いて、それで彼女が企画して、監督を指名して、最初主演男優は自分の旦那以外を想定してたのですが、実在のパッドマンが、あんたのハズがいい~と言ったのでそうしたそうです。日本の活字業界はほんとに弱体化したと思うのですが、原作小説の翻訳が出てこないのが悲しい。韓寒の邦訳がほとんどないのもさみしいですが、これもさみしい。でも奥さん、本業は女優で、そっからプロデュースする側に回って、そんで小説も書き始めたとか。そんじゃまあ邦訳とかされないのかなあ。インド好きはインド夜想曲か悪魔のナントカか停電の夜を永遠に読んでろみたいな。

Twinkle Khanna - Wikipedia

 後半のヒロインは、最初エンタテイナーかと思ったですよ。太鼓叩きながら歌うたうディーバ。満場の観客は拍手喝采。それが巡業中ナプキン切らして、夜の街をタクシーでざぶとん薬局探して走りまくる(女性スタッフ誰も持ってないのか。彼女以外全員タンポン派だったのか)。で、主人公と知り合って、その製品の良さと彼の一途なアブナさに感銘を受け、テヘランニューデリーだかデリーだかどっかの発明家ショーに出展をいざない、それが一等賞になり、しかしそれでもナプキンを家内制手工業でマニファクチュアリングするには田舎の反発が激しく、そこでまたまた彼女が登場し、田舎をドサ回りしながら、既製品のナプキンが55ルピーなのにこれはたったの2ルピーで、忌部屋にこもらなくても生理期間の五日間家事労働がこなせて、その分ロスが減るだす、メアドはホットメール(ほんとにそう言ってた)で、徐々に、徐々に、販路を広げてゆく。この、工場のある場所は、ウィキペディアに、マディヤ・プラディーシュ州のインドールという街だと書いてあったのですが、もともとの村はどこか書いてません。実在パッドマンはタミル人で、鬼瓦みたいな人です。鬼瓦は、日本では南のほう、アフリカでは西のほう(ナイジェリアとか)って気がします。後半のヒロインは、最初、主人公に「ナマステ」って挨拶するんですよ。ヒンディー語なら、のちに主人公が国連で演説する時、最初に「ナマシュ(ス)カール」って挨拶したそのナマスカールなわけですが、「ナマステ」ってガイジンみたいに挨拶するくらい両者は属する文化が違うんだな、ってよく分かる場面でした。中国人が中国人にニーハオって挨拶するようなものです。

インドール (インド) - Wikipedia

goo.gl

後半のヒロインは、シク教徒(私はタイガー・ジェット・シンの「シーク教徒」と呼ぶ方が好きですが、シク教徒のほうが正しいし、字幕の字数も少なくて済むだなと)で、親はインテリの上層で、彼女も上層なのですが、献身的に田舎暮らしして主人公を助けます。男の主人公が売ろうとしても試着してもらおうとしても恥恥恥なのですが、同性の彼女がやればなにもかもスラスラうまくいく。買い手の女性の中から、現金収入がほしい人たちが、セールスレディーになったり、職工になって、工場は規模を拡大してゆく。世界史でインドの植民地化を習う時、インドは家内制手工業からマニファクチュアリングの勃興期にあったが、先行して綿工業の大量生産化に成功したイギリスに叩き潰され、原料供給地兼製品購入消費地の立場に叩き落とされた、と習いますが、ナプキン廉価生産販売を阻んだ因習慣習も国際競争の面から見て、インドに不利に働いたのかもしれません。17世紀18世紀に。セールスレディーもインド女性なので、2ルピーの約束売価を守らず、自分の裁量で勝手にまず言い値を釣り上げて交渉で下げる例のインドを始めるわけですが、正直にやらなくちゃダメ、みたいな字幕が入って後半のヒロインが止めます。ここも、くまなくすみずみ描いてリアルにしあげる努力怠ってないなと思いました。この映画のあと、日本のどこかで、フェアトレードで、生理用品は第三世界の女性たちの手工業品を買いましょうという動きがあったとして、それがほんものかいんちきか、賛同するか賛同するけれども金は出さないかは私の関わる所ではないんだろうなと。

あと、後半のヒロインは、農村にあってもいついかなる時でもきれいです。これはあからさまなフィクションですが、(すなぼこりだけでも汚れるだろうに)中国では文革下放体験があるのでこういう描写はありえず、農村と都市のあいだには憎しみしか横たわってないのですが(だから21世紀でも幹部の腐敗が原因で農村暴動が起こってその都度もみ消される)インドはもともと階層社会なので、わりとあっけらかんと美人うらやましいわねみたいな感じで農村女性にも都会人が受け入れられるのだろうかと思いました。どこの世界でもそうですが、歯並びがひとつポイントです。悪い物硬い物食って擦り減ってる歯、歯列矯正してこなかった歯、それと、都会人の、きちんとお手入れされてる歯。顔立ちはみんな彫りが深いインド人なのですが、歯並びで、違う。残酷というかなんというか。

ネタバレしないと、本当に感動した箇所を書けません。男性が、自分を育ててくれた、年上の女性(と書いて「ひと」と読む)を回想する話は、腐るほどあり、最近も、倉科遼が『荷風になりたい』で、司敬だった自分を若いつばめ兼で育ててくれた銀座のママを回想する場面がありましたが、若い女性が、自分で金銭的にも活動面でも支援して、オッサンを育てる話、しかもカラダとかの関係でなく、自分から口づけして、自分から振る。このての話は、世界にはほかにもあるのかもしれませんが、私はこれくらい鮮やかにそれを描いたのを、初めて見た気がします。この映画はその面で相当かっこいい。若い女の子とオッサンだと、どうしてもオッサン優位になりがちですし、オトコを育てるったって、年上女性でさえ往々にして無傷では済まなかったりするので、若い子が傷つかないわけがない。そこをすべてファンタジーで切り抜けるとは。すごいです。ジジイが見たら「おこちゃま映画」と罵倒するでしょうが、何が悪いという。エンタメのフィクションなんだから、求めているか分からないものを与えて喪失感を味わうような展開はせんでいい。いりません。

主人公は父親が不在(登場しない)の女家族で、後半のヒロインは母親がどうしたのか見落としましたが、父親が男手ひとつで育て上げた。ファザコン云々の裏読みがしたい人はそれが出来るよう原作者である主演男優のワイフは計算してるし、また彼女のなにがしかが投影されてるんではないと思いました。

私はインド映画というと、どうしてもインド社会がオトコなので、オトコ映画で、寝てるあいだにイレズミ彫られて彫った男を愛してしまうという、日本ならエロ小説でそういうのがあって模倣犯の犯罪があったような映画が爆音上映のバーフバリだったりする世界なので、こういうかたちで女性の感性が絡んだ、フェミニンと言ってしまうとカテゴライズされて雲散霧消する世界が描かれるとはまったく思っていなかったので、そこが大きな拾い物でした。よくこのふたりの関係を考えた。前半の幼な妻(旦那のナプキン試作品の実験台になることも、そうして失敗作で恥をかくことにも、伝統的な対応しかできない)で油断しました。そういうふうに作るとは。いい映画でした。

この後見るインド映画は、例のパキの子連れて亜大陸横断する映画ですが、子役の飛び道具に頼ってないか、こっちはやや心配です。

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ナプキン (生理用) - Wikipedia

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卫生巾_百度百科

衛生棉 - 维基百科,自由的百科全书

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Arunachalam Muruganantham - Wikipedia

सेनेटरी नैपकिन - विकिपीडिया

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以上、力尽きたので、ほかの日記は書かず、寝ます。おやすみなさい。こうやって少しずつまた量を減らしてゆこう。よい夢を