『トヨタ物語 強さとは「自分で考え、動く現場」を育てることだ』読了

 編集 坂巻正伸 日野なおみ 装幀 岡孝治 写真 村田和聡

トヨタ物語

トヨタ物語

 

巻末に協力者一覧と参考文献。日経BPの2016/Apr/25号から2017/May/29号まで連載に加筆修正。

 下記のヤフーニュース(続トヨタ物語の連載第何回めか)を偶然読んで、面白いとのことだったので、読みました。作者の本は『キャンティ物語』を以前読みました。でも飯倉のキャンティ、まだ行ってないです。そういえば。

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カンバン方式は以前就活中に聞いたことがあって、某日本最後の総合家電めーかーはカンバン方式取り入れてないとか、そんなふうに聞いたです。平塚の自動車関連の会社の人だったかな、カンバン方式の話をしてくれた人は。その人は、『ザ・ゴール』読んで、カンバン方式理解してたみたいです。

本書を読むと、トヨタの人のみならず、生産現場の人は「下請け」という言い方を絶対しないとあります。「協力会社」というそうで。外野の人間だけ下請けと云うんだとか。

私はというと、頁353の1991年の朝日新聞の反トヨタネガキャンそのままの認識でした。下請けいじめ、という… 1977年に国会で福田総理にトヨタ方式=下請けいじめの図式で質問した議員が共産党だったこと、どこでもトヨタの生産管理の人間がカイゼンに来ると、もっとも嫌がらせをするのが労組であること、などからまあそういうことなんだなと思います。泊まりこむ寮の前で夜中シュプレヒコールして眠らせないとか、凄まじい。頁294。トヨタ帝国主義ということばを読んで、けれど、トヨタ内の生協は素晴らしい、あれほどの生協は見たことがないと生協マニアの人が言ってたのも思い出します。

カンバン方式という名前で、しかし内容を知らずして読み、トヨタ生産方式(TPS)が正式名称であることを知りました。ジャスト・イン・タイムというのはなんとなく分かり、また、小ロットごとに輸送した方が、倉庫代より安くつくというのは、へーと思いました。倉庫寝かした方が、いちいち汗かいてガソリン焚いて運ぶより安いと思ってましたので。トヨタ方式が出版業界にも適用されたら返本どれだけ減るかみたいなことがどこかに書いてありましたが、広告料で賄えてるからファッション雑誌などは売れなくてけっこう、みたいな大前提がインターネットの出現でがらがらと崩壊した後の現状が現代ですので、本書でいうと、オイルショックにもかかわらずソ連原油を安定供給したために、低燃費車両開発を追求しなかった共産圏ヴィーコーの末路とかぶるのかなと思います。

トヨタ方式はよく分からないまま読了したのですが、アマゾンなんか、適用したら、非人間的な職場の典型と言われるあの工場作業も文字通りカイゼンされるんじゃないのと思いました。だだっぴろい倉庫に無秩序に在庫を置きまくるのでなく、ジャスト・イン・タイムで各メーカーから輸送する。トヨタ方式は、ディーラーの納車までの期間が長すぎて、すぐに乗りたい顧客オリエンテッドでないのをカイゼンしてますので、ネット通販が在庫を持たずとも即納出来る体制作りに貢献出来そうな気がします。

アマゾンの例でいうと、書籍に関して倉庫をなくすためにアマゾンが何をやってるかというと、キンドル、電子化ペーパーレスで一挙に地球環境解決も狙ってるのですが、トヨタは、そうした高度なテクノロジーに依存した生産設備更新をすると、一朝ことが起こった時、専門的なナレッジを持つ人間でないとブラックボックスの解明が出来ず、解決出来ないので、そういうものより、伝統的な「からくり」「くふう」で対応するのが好きだそうです。本書には、トヨタ生産方式が世に誇れるのは、畢竟、日本という井の中の蛙で終わらず、米国ケンタッキーを始めとして、海外にシステムとして移殖出来て、さらにそれで成功をおさめたという、「普遍性」が背景にあるからとしており、全面的に賛成しますが、そのアメリカで、アメリカ人はDIYやガレージ仕事が好きなので、日本よりメチャクチャ「くふう」によるカイゼン案をみんな上長にアピールしてきて、しかし大半は既にあったり、使いものにならなかったという箇所が(わたし自身を棚に上げて)おかしかったです。

トヨタ方式が、佛作って魂入れずにならないようにするためには、危機感と、会社をよくしようという上からでない意識が必要なんだそうで、しょせん資本主義じゃん、会社が潰れても人間が残ればよい(幸せならなおよい)という考え方の人とは、相容れないだろうと思いました。「会社が潰れたらチームメンバーたる社員も幸せじゃないだろー」「自分の幸福は社畜以外の場所にあるので、ぜんぜんですだ」相容れない。

トヨタといえば張社長が、日本なのに張という姓であることが、むかしすっごく気になって、2ちゃんで、なんであんたがたは張社長を在日認定しないのかと聞いたら、江戸時代から日本にある姓であるみたいな即レスがネトウヨの闇から返って来て、それからほどなくして、漫画るろうに剣心で、七本刀でしたか、それのトップバッターで大阪の張という髪を逆立てた人物が登場し、その張もまた、なんで張やねんという説明がいっさいないなあと思ってましたが、名字でなく名前が張なんだそうで、なんだそれ。

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本書登場人物のみょうじでいうと、「二之夕」という苗字が読めませんで、"niji-yu"と讀んで、JYパークやんけ、とお茶を濁してました。

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本書を読むまで、名古屋グランパスの胸サポ「豊田織機」がよく分かってませんでした。自動車産業が日本のベンチャーであった頃、木綿で布を作る会社だったトヨタが、じゃぶじゃぶお金をまわして、国産自動車に熱意を傾けたから、今のトヨタがあるんですね。今のグランパス、ピクシーとか釣男とかを経て、TPSでカイゼンするとしたら、どのようなものになるのでしょうか。そもそもリネカートヨタ方式じゃない気瓦斯。アンドン引いてライン止めるのが推奨とはいっても、労災は推奨でないだろうという意味で。

住友銀行は国産自動車の未来に懐疑的だったのでトヨタに冷淡で、だからトヨタも住友とは長く付き合いがなかったという箇所は、へーと思いました。頁141。

キャンティ物語でもそうですが、著者は「戦後」にこだわる人なので、東映砧撮影所の労働争議と、スト破りのため米軍が戦車と戦闘機まで持ち出した事件を脱線して書いています。中国系(台湾系)とヤクザが闇市の勢力争いでまっこうからぶつかった新橋暴動で戦車が出たと聞いてましたが、世田谷でも出たんだなあと。出てもパットン。サメの口模様。

大野という人が生ける生産方式だったそうで、ボーツ―先生の係累の会社であるダイヤモンド社で『トヨタ生産方式』という本を書いていて、114刷もすったわりには、累計47万部だそうです。「生産革命」なら平積みなのに、「生産方式」では専門書の棚に入れられてしまふ、だそう。頁184。

どうも私の職場でも最近これを読んだ人がいるのかいないのか(私も含めると確実に「いる」ですが、それは違うかと)十人のラインを九人にするとか、人は安定を好む生き物である反対の方向にひっぱろうひっぱろうとするのがトヨタ生産方式なのかもと思います。同業他社が皆トヨタのすごさを認めつつ、トヨタで働きたくないと書いてあって印象的でしたが、ページ忘れました。

大野という人の初期のカイゼンで、座って働いてた人を立って働くようにしたというのがあり、立って働く方が人間自然だからだそうですが、コンビニのように客に正対するのなら分かりますが、スーパーのレジのように、斜めになって立ってると、片足のヒザ悪くすると思います。

stantsiya-iriya.hatenablog.com

そんな本でしょうか。以上