装画 富安健一郎 装幀:早川書房デザイン室
収録十三作品のうち、むっつ目。1999年7月脱稿。kehuandawang《科幻大王》2002年1月号掲載。これは英訳なしで、ハングル訳もまだの、文字通り本邦初訳、この三千世界でにほんごがトップバッター訳出。掲載時期をズラしてはありますが、訳者解説にもあるとおり、NATOによるユーゴ空爆が背景。『繊維』『メッセンジャー』と来て、ここで、ボスニアのムスリム女性が宗教を捨てて結婚した相手のセルビア人男性を主人公に、彼が妻と娘を守るため、バタフライ効果を実現する数理モデルを武器に、四海を跋扈する物語を出してくるとは予想出来ませんでした。
筒井康隆がアフリカの爆弾から始まって、「お父さん、大統領になるにはどうしたらいいの?」を書くまで20年以上かかってるというのに、漢語SFの歩みの軽やかなこと(この人だけかもしれませんが)越境。沖縄の漁師の場面は、もっとイヤラシイ、沖縄独立支持者の中国糞青のレス文章を読み慣れた人だと、拍子抜けかもしれませんし、それまで関心のなかった人だと、中国人沖縄についてよく知ってるなあと思うかもしれません。
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オチは米海軍士官の会話なのですが、ここはちょっと分からなかったです。オキナワつながりでいうと、池上永一『レキオス』に出て来る米海軍技術士官はスタートレックオタクという設定で、そういうせりふがぽんぽん出て来ます。同じようなものを劉さんに期待しても、それはちょっとまだ、そこまで米国文化に親しんでないでげす、という感じでした。以上
この人のピンインカタカナ名は、「ツ」と「シ」の書きわけが出来てない人には鬼門。