『酒のほそ道 五十三 』"SAKE NO HOSOMICHI 53"(The Narrow Road to/of Sake)[酒と肴の歳時記]by ROSWELL HOSOKI(ニチブンコミックス)(NC NICHIBUN COMICS)読了 読書

オダサガで、10月に店を閉めるウイグル料理店の帰りに、ハミマで見つけて買ったマンガ。

その二日くらい前には、地域最大の品揃えのマンガコーナーの某書店に行ってるのですが、見かけてなかったです。売切れてたのかなあ。でも縁があって、買えた。

妄想を しながら 飲んでいると ・・・オレ宗達が、 頭の中に生まれるのです。 時には前田課長役で、 時には宗達本人として漫画の世界の中で飲む。 そんな妄想の酒ほそワールド晩酌、あなたもひとつどうですか。 茂木 功 (ワイン専門誌 「ワイナート」 元編集長) 酒のほそ道ラズウェル細木

今回のあとがきの人は、甲子園球場高校野球を観戦しながら飲む話と、新宿京王百貨店の駅弁大会でみつくろった駅弁をロマンスカーに持ち込んで、食べて飲んで箱根往復し、スカ弁当を引いた者が罰ゲームだったかなんだったかの話に出て来る人だそうで、ようするに実話の当該人物。編集畑の人間だそうなので、ちょっと書くことが細かすぎて、そんなに愛を押し付けないでヨッ、あんたんとこの雑誌はいっつもそんななの? もう少し取捨選択して、ネタの八割をボツにして、残ったえりすぐりの情報で勝負しなさいよッ、と自分は字数ほぼ無制限のこんなところで遊んでるくせに知ったような口をききやがって、みたいなことは一㍉も思いませんでした。と書けばよいと思ってる。免罪符だと思っている。

ラズウェル細木のコミックス最新刊 「文明開化めし㊤」 幕末から明治の新たな食を描く!! 7月13日 発売!! 発行:リイド社ラズウェル細木のマンガ はじめてのジャズ教室」 いちばんわかりやすい ジャズ入門 7刷出来!! ロングセラーヒット!! 発売: DU BOOKS 大艳費 発売中!! 週刊漫画ゴラクで 大人気連載中!!!「酒のほそ道」①~52巻 大艳費 発売中!!

上は帯裏 コンビニで買ったので立ち読み防止がビニルカバーでなくビニルテープで、それを剥がす時に帯が少しとれてしまいました。そんなこともあるんですね。かつて出していたソロイクメンによる育児本の復刊は、ないんだろうなぁ。

というわけで、上はテープにくっついた帯の一部分の写真です。

❖四季を彩る呑兵衛の足跡❖ 酒のほそ道 《酒と肴の歳時記》

中表紙(部分)「❖四季を彩る呑兵衛の足跡❖」なんてキャプション、前からあったかナァ、と思ったので撮りました。cover design:CRIATIVE SANO JAPAN

カラー口絵の秋で、霞の目博士が厨房でフレンチシェフの修業をする二足の草鞋人間として登場しますが、ぜったい「ちむどんどん」でヒロインが新聞社とイタリアンの二足の草鞋をしていた場面を踏まえての本歌取りだと思います。ラズウェル先生の琴線にも響いた「ちむどんどん」

●まえがきーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 これを書いている2023年5月現在、コロナ禍は依然収まってはいない。友人知人で感染する人がいまだにいるし、今なお進行中である。しかし、昨年の暮れぐらいから、飲みの会のお声がかかる機会が増えてきた。みんな、我慢に我慢を重ねてきて、そろそろ限界ということだろうか。

そんな話でもなく、重症化する率が軽視出来るほど低いままなので、もう大丈夫と五類に移行したからだと思います。マスクするしないも自由だし。ラズウェルサンの周辺の出版業界は、しといちばい在宅勤務率が高かったので、空気の読み方に差分があるのかもしれません。

まえがきはこの後、二日酔いしやすくなったと続いていて、それは老いのせい一択です。年を考えて飲みなはれ。

頁19、飲み屋で他の店の話をすることについて。私は民族料理店の話になりがちなので、ペルー料理店、ブラジル料理店、スリランカ料理店、ベトナム料理店、タイ料理店ラオス料理店(もうない)、カンボジア料理店、イラン料理店、チベット料理店、ウイグル料理店などなどを較べてもしかたないので、許容範囲と考えています。

頁32、なめろうを焼いたさんが焼きは食べたことないと思います。朴葉味噌みたいな感じなんでしょうか。

頁41、注文を紙に書かせる店。香港のヤムチャの店を例に引いて、「中国語や広東語」と書いているのが、分かる気もするし、広東語と併記しての「中国語」という言い方はもう少しヒネれないか考えたりもしました。マンダリン・チャイニーズとか、北京官話と書いても、それはそれで通じないのかな。厚木基地正門のブリトーの店も紙に書かせますが、パクチーを英語で何と言うかなど、知識が試されます。グーグルマップの写真でオーダー表を見て予習して行くか、あるいは現場でカメラの翻訳機能をフル活用する必要があります。

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デッドプールの好物、チミチャンガを食べに行った時の写真。"cilantro"がパクチーです。メキシコ料理やペルー料理ではよく使われるという。

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”guacamore”と書いてワカモレ。アボカドのディップというかなんというか、です。

ワカモレ - Wikipedia

stantsiya-iriya.hatenablog.com

この日のグーグルロゴは、知里幸恵生誕120周年ロゴでした。

左は頁48、タルタルソースの話のいちぶ。最初は、手書きの誤字と思いました。

✖完然

完全

しかし、検索すると、「完全なさま」の意味で、「完然」という単語もないことはないかったです(ただし一発変換は出来ない)

この話のコラムで、目玉焼きのほうが茹で玉子より簡単に出来るという記述があり、レンチンの目玉焼き器というかポーチドエッグマシーンを使えばそうだろうけどと思いました。人類はユデタマゴの殻を剥くのさえめんどくさがりになった。キン肉マン

また、頁46で、タルタルソースとソースの材料をぞれぞれずらっと並べ立て、どっちのほうが材料多過ぎで素材の味を殺しているのか、という不毛なディベートの場面がありますが、これなど、実際はスマホ片手に、検索してその結果を読み上げながらやってるのではないかと思われます。そうでなければ、こんな細かくいちいち覚えてられない。

頁55、11月11日は人が四人立っているように見えるので、「立ち飲みの日」という話。中国ではかの有名な《光棍节》(ひとりものの日)で、ネットで爆買いする日でもあるのですが、婚活パーリーなどで必ずあぶれてしまう、壁のすっごい花、咳してもひとり状態の者たちが、聖闘士星矢のもじりで《剩斗士》、斉天大聖孫悟空のもじりで《齐天大剩》などなど、ネットで書かれているのを読んで、大笑いしたのも今は昔の物語。パパ活返しという大技をくらってしまいました。

中国に立ち飲みはあるのかという命題をときどき考えてみるのですが、あちらの「飲み」は酒や酔いを楽しむためにあるのでなく、相手をツブす愉悦を得るためにやる気もするので(そうでない、朋友同士の飲みなら、会話の内容を他人に聞かれずに済み、かつ料理も安心素材の手料理ばかりの家飲みでやる気がします。男子厨房に入る文化で嫁さんにばかり料理を作らせないから家に招待する敷居も低い)打拳ばっかやるやつばっかの、白酒がきいて立てなくなる椅子つき屋台はあっても、椅子のない立ち飲みはないから、椅子を凶器にしての乱闘がしづらくなるということもないのだろうなと思ってみたり。

頁67、私も豚肉のスキヤキで育ちましたが、しゃぶしゃぶは生の危険性があるので、食べてこなかったです。で、豚は寄生虫があるが牛はないと解釈していた折、エチオピアを舞台にした小説で、エチオピアの牛は寄生虫持ちが多いとあったので、なんだよ牛にも寄生虫いるんじゃん、と、世の中が信じられなくなったことがあります。中途半端な知識は人を惑わせる。あの頃世界に検索があったなら。

広島市食検だより 2018年8月 第47号

https://www.city.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/116017.pdf

家畜感染症学会誌 5巻1号 牛の消化管寄生虫病の現状と課題

https://www.kachikukansen.org/kaiho2/PDF/5-1-1.pdf

頁75、八丁味噌おでん。しぞーかおでんも黒いと言われますが、八丁味噌とは関係ないのでしょうか。

頁79、女子大生が就職して役員秘書になってました。サザエさん的に時間の止まった世界でなく、相対性理論的に説明のつく、なんらかの理由でのろのろと時間が進んで行く世界を描いてるのかもしれません。そしてその理由はアルコールというオチ。頁138あたり、後輩なのに宗達より先に結婚出産育児、ともに相手は職場婚の同僚たちと飲む話があります。それぞれ結婚した時期の単行本はけっこう離れてるのですが、同じ空間で時が流れている。話を戻すと、この元女子大生の話は、彼女が宗達にかすみサンのネタを振って、そこで作者もどうオチをつけたものか行き詰って、お茶を濁した感があります。さいごの半ページくらい、まるごと原稿差し替えたかのように、話がつながらない。

隠れキリシタンの飲み屋がクリスマスを祝う話が頁98あたりですが、某輸血拒否の宗教はクリスマスを祝わないそうなので、読んでてどきっとしました。まあその宗教や聖書、コーランについて語ろうとして編集がとめたわけでもないと思います。

頁102あたりは、ジョニ黒、ジョニ赤の思い出話ですが、宗達がそれをするというのが、もう寅さん的な、孤独死予備軍に足を突っ込んでる証左のようにも見えました。ジョニ黒、ジョニ赤、ほんと聞かない。じゃあローヤル、リザーブ、ダルマ、白角はよく聞くかというとそれも。酒税法だけの話としても、それを知る世代はもうアラサーのリーマンではないと思います。

この巻は、松島さんに思いを寄せる小篠くんという後輩が、松島さんに話を振ったりなんだりの話がふたつあり、松島さんがいない飲み会では、ガラッと態度が変わる話が頁112あたりの、メニューがマザコンぽくて女性客にいやがられる店の回です。そして、小篠くんのそのわざとらしい松島さんへの態度に、かすみだけが気づいていることになっているのですが、かすみが松島さんを女子トイレに呼び出したり、地下駐車場で小篠くんがストーカーだったりするのはまだ先の話です、という予想があたるといいな。

小篠(おざさ→こしの) -人名の書き方・読み方 わかりやすく解説 Weblio辞書

頁126あたりは、斎藤の家で宅飲み。戸建てでひとり暮らしで東京とのことなので、セコムしてないとすぐ空き巣ほかに狙われると思います。ほんと東京周辺の戸建て独居というと、おちおち外出も出来ない話が多過ぎる。斎藤が在宅ワークなのはそれが理由かも。高給取りでもないのに出勤パターンをチェックされるおそろしさ。あと、実は介護してた時にだいぶ排泄物ほかで痛んでて、直すお金もない、直して継承させる子孫もない、という話も。

頁134、「好かんたこ」「いやいやぼくはいいだこ」というギャグは町蔵の小説で読みました。子持ちの雌がごはんをぎっしり詰めたように見えるから飯蛸というとは知りませんでした。タマゴを抱えたイイダコ料理の写真を検索したのですが、クックパッドとか、そういう世に知られたレシピサイトの写真がぜんぜん出ないので、やっぱなかなか買えないんだと思いました。

この巻のあとがきの人は編集職で酒ほそマニアなので、竜とトモミツの関係性、カヨちゃんなどについても考察してるのですが、トモミツはこの巻では宗達とうんちくディベートを二回しており(タルタルvsソース、ビールをチェイサーがわりに呑むのはありかナシか)この年で居酒屋にひとりでよく来る女性って、何か口論等で気に食わないことああって、それから見かけなくなる気がします。なんだかんだ言って、ほかの客と話すよりツレの男と話す女性客が絶対多数。ラクですしね。

竹股も出ますが、舞台は京都ではなく。しかしこの人貫禄ついたと思う。付き合ってる女性との釣り合いでそうなるのかな。なんとなく、付き合ってる相手によって、はたから見て、光ったり色あせたりすることがありますが、竹股は前者。私のような孤独死に至る銀色の遥かな道を歩む者とはかかわりのない話ですが。

天ぷらに塩は関西からと聞いてるのですが、最後の話、セーブザ天つゆには、そういったうんちくは出ません。ヒマラヤのどっかのピンクソルトとか、カレー塩のような変化球も出ない。見た目の色合いのきれいさだけで、味としては別になくてもいいじゃん、の、にんじんをおろしたもみじおろしも出ない。天つゆってかつおだしだと思うのですが、そこに悪の関西人がこぶだしを混ぜて反応を見ようとして、さらにまた別の悪の九州人が、あごだしにさらに九州の甘い醤油で攻めてくるという話もありません。

役員秘書登場が象徴的でしたが、ザ・ワールド! 時は動き出す、という感じなので、次巻どう大きく動くか楽しみです。かすみが何かスポーツを始めて、宗達痛風になるに1ペリカ。以上