『ファンキー末吉 中国ロックに捧げた半生』読了

ファンキー末吉 中国ロックに捧げた半生

ファンキー末吉 中国ロックに捧げた半生

書名が作者の名前とは思ってなかったので、図書館にリクエスト後、
ステイタス確認したとき、書名と作者名打ち込み間違えてると思い、
永遠に届かないとあきらめてました。したら、届いただけでなく、
他館本リクエストせず、自館で購入したみたいで、税金勿体ない、
俺しか読まないのに、何が選定委員会の琴線に触れたんだろうと訝しんでます。
こんなことなら、自腹で買って、寄贈すればよかった。

<作者のこれまでの自伝>
『大陸ロック漂流記―中国で大成功した男』アミューズブックス 1998/08刊 読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20160915/1473892834
『酒と太鼓の日々。』ホットカプセル 1995/05刊 読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20160118/1453116216

これまでも聞いたことのない出版社からの出版でしたが、
今回もリーブル社という、高知県の出版社からの刊行で、
この本自体が2014年2月からの高知新聞連載に加筆編集したものだそうで、
そういう縁みたいです。前書までは、香川県出身と書いてましたが、
実はルーツは高知県だとか。しかし、水が血よりも濃いのなら、香川県だろう…

図書館が何故か帯ごとビニルかけてくれていて、
極端な煽り文句が読めますが、アマゾンの画像も帯付きなので、
云いたいことは皆共有出来ると思います。ロックをやったら殺されるんじゃなくて、
政府批判が攻撃にまでエスカレートしたら潰されるだけじゃん、みたいな。

選定委員会は北朝鮮絡みで評価したのかもしれませんが、私はそれ知らないので。
地政学的に、韓国と中国が直に国境接したくないというそれだけの理由で存在してる国ですし、
ミサイルもなんか意味有るのかと、あまり乱発するとばかみたく思えてきています。
あそこの人民はみんな人質みたいなもんじゃないかな。汚職も窃盗もひどいそうですが。
…作者は北京在住なので、北朝鮮直営レストランのオール北朝鮮人従業員とか、
出稼ぎとか、家族の写真を壁に貼ってる留学生とか、とにかく情報量はダンチだと思います。

話を戻すと、第三章までは前書と被ってますので、特にアレでした。
頁041、PB机。⇒"BP机" が正しいです。
誤植か、古い話なので作者が間違えたか。ポケベルの中国語。

百度百科
http://baike.baidu.com/view/79739.htm?fromtitle=BP%E6%9C%BA&fromid=3402781&type=syn

被ってますが、本書ではJAZZ屋の記述一切ナシ。なぜでしょう。
第四章五章で、作者が中国でどうやって音楽でメシ食う世界に噛んでたか、
よく分かるように書いてあります。要するに、それ以前の、前書と被る部分の、
“关系学”が財産になって、その賜物。前書の奥さんは、本書では「前妻」
本書では再婚のくだりもあり、20歳年下の日本人だそうです。
JAZZ屋は書かないのに、そういうのは書くのかwwww

頁111
 私は今まで「売れる」ためにいろんなことをやってきた。いや、「やらざるを得なかった」。売れるために作ったものが売れなかった時のみじめさをいつも強く感じていた。(中略)売れるために生まれてきて売れなかった子供は、売れなければ生を受けてすぐに役目を終えて抹殺されてしまう。

前書になかった記述といえば、中国でまだ楽器がロクに手に入らなかった頃、
渡航のたびに楽器をたくさん税関ごまかして持ち込んで配ってたとか、
崔健がファンチーを意識して、外国人の言うこと菊名中国人のロックは中国人ガ〜、
みたいなさやあてかげぐちがあったこと、くらいでしょうか。

頁147
 子供たちを北京から連れて帰る時に東京で数日一緒に生活した。上の子は日本語はもうすっかり忘れてしまっていて私とは中国語で会話する。銭湯に行った時に、まだ小学校に上がっていない下の子は無料だったのだが、番台のおばさんは私達が中国人の家族だと思って
「あんた年をごまかしているでしょ、これだから中国人は」
 と文句を言った。日本人の中国人差別を目の当たりに経験することとなったが、怒りよりもむしろ中国人に見られたことの方が何故かうれしかった。どこに行っても「芸能人」としか見られなかった生活に比べたら全然いい。

本書の中国人名表記は前書よりさらにワケワカメで、前書は、
大陸は簡体字、香港は日本漢字と判断したのですが、本書は、
同じ大陸人でも、趙さんは簡体字で"赵"なのに、
張さんは簡体字の"张"にならず「張」のまま。呉さんも"吴"になりまへん。

昔のバンド、ヘイバオとかタンチャオ、ツイジェンは、もうそれしかないので、
音楽に疎い私でも知ってるわけですが、新しい21世紀のバンドや歌手は、
検索してここに動画でも貼ろうかとも思いましたが、とりあえず未検索です。
海賊版天国の中国では、ミュージシャンは興行収入しかなく、辛い生活、
とむかし誰かが言ってましたが、本書によると事実はそうではなく、
興業、コンサートやテレビ(中国は地方ごとにテレビ局があるのでいっぱいある、
歌謡番組もいっぱいある)の収入が莫大で、新曲のリリースは、
カネにならないけど、出さないと忘れられるからする、程度の意味合いだとか。

作者は寧夏回族自治区のバンドと最後北京郊外でコミューン生活しますが、
寧夏に行った時の話とかも書いてほしいなと思いました。回族と漢族の軋轢とか。それに、
水耕稲作指導のため移住させられた朝鮮族とか、いるですから。あと沙漠緑化の日本人。
下記はヘイバオのドラムと元カノドイツ人の会話。

頁254
「あの頃の北京は本当によかったわよね……あの頃に戻りたい」
 赵明义は激怒してこう言った。
「あの貧乏な頃に戻れと言うのか? 中国人は豊かになってはいけないのか!! くそっくらえだ!!」
 豊かになれる者から豊かになれと訒小平は言った。一度富を手に入れたらもう手放すことはできない。ロックの夢を語っていた若者は、今では豊かになって不動産と車と女の話しかしない。私が彼らのような高級マンションに住むこともなく、こうして貧民街に住んで貧乏なアンダーグラウンドバンドの連中と暮しているのも、ひょっとしたらあの頃の北京を懐かしんでいるだけのことかも知れない。

思想の自由は得られないままでしょうから、せめて物質的豊かさを享受したい、
そういう刹那的な悦びなんでしょうかね。あとは力関係かな、外国人との。
そう思いました。以上