『北京大学三ヵ国カルチャーショック』読了

 下記のニュースには大いに感心したので、その記者の著述を何か読んでこまそうと思って読んだ本。

gendai.ismedia.jp

題名だけだと分かりませんでしたが、手に取ってみると、あーこの表紙知ってるわ、と。なんしか、今まで書店の棚などで何度も遭遇しながら、何故か敬遠して読んでなかった本でした。

 装幀ーー鈴木成一デザイン室 装画・挿画ーー下谷二助 

アマゾンレビューによると、本書以降、マスコミ関係者は同大学の留学生寮に住めなくなったそうで、本書が進学(本科生や院生へのそれ)や部屋の分配にまつわる学内収賄構造を明らかにし、留学生の麻薬漬けについてルポしたからだそうです。企業派遣留学生のナイトライフを紹介してるので、企業派遣語学留学生からも恨まれてるだろうとそのレビューに書いてありますが、それは少し後の2ちゃんの中国板なんかでも有名なことなので(この時まだ2ちゃんは佐賀バスジャック事件の猫洗面器黎明期でした)たぶん恨まれてないと思います。

とはいえ書かれた時期はやっぱ古いので、現在の留学生ライフがどうかは分からないです。西八の葉青サンが書いた復旦大学の小説二作の、中間の位置に本書を置くとちょうどいい感じかと。韓国人到来前(1992年の中韓国交正常化から少しして、大量の韓国人留学生が中国を目指すようになる)と到来後の日本人縮退がようせいの小説で、丁度バっティングした時期がコンドーさんの本書。

頁196、スリクにラリラリのベイダー日本人女子留学生へのインタビューがあり、インタビューの場所が三里屯、ジウバージエ(酒巴街)でファンキー末吉がやってるジャズ屋なのがまず笑いました。確か当時もうあって、地球の歩き方にも載ってたかと。この女子留学生が麻薬にはまっていった遠因として、中国の賄賂社会に適応出来ず上の学部に進学出来なかったこと、覗きなど、中国人のムッツリスケベ攻撃にさらされたことが語られており、後者は、天城山心中の前に、愛新覚羅慧生が東京中華学校における教職者の同種の行為を告発しようとしていたことを思い出しました。慧生は日本人愛国者の恋人にピストルで撃たれて死んだことになってるので、告発は成立しませんでしたが。

天城山心中 - Wikipedia

このインタビューで、甘家口など、ウイグル人街が大麻入手関連で登場しますが、それはほかでも報道されてたし、公安のガサ入れで壊滅したとかなんとか聞いたような気もします。今はどうなんでしょう。それより、北京にウイグル人街があって、それは何故その場所にあるのかという点で、中央民族大学の絡みだというのが書かれていないのが、何故なんだろうと思いました。北大以外にも、清華大学や語言が本書には登場しますが、中央民族大学は登場しません。電影大学とかも登場しないので、まあいいのかもしれませんが、なんとなくそこは物足りなかったです。それと、ウイグル人街より前に、在中のアフガニスタン人たちが北京南駅のほうで、ガイジン相手にやはり大麻を贖っていたが、ある時期公安が動いたかなんかして、その一角のバラックがぜんぶ廃墟になったことがありましたが、そういうのは書いてないので、ちょっとさびしかったです。

この女子学生は、ハシシュからマリファナに移行したと書いてあり、逆だろと思いながら読み、そのラリリかたの描写や、そこからハードドラッグに移行する展開などから、ディックの『暗闇のスキャナー』で、主人公がやはりラリパッパの女の子に警告する、キミがソフトドラッグだと思い込んで吸ってるのは混ぜ物入りだ、違うものだよ、アヘンだよそりゃ、だまされてんだよ、の場面を思い出しました。で、この頃の在中金満邦人留学生を見て、思っていたことも思い出しました。なんでこいつら中国を選んだんだ?カネがあるなら、マイアミでもカリフォルニアでもケアンズでもロンドンでも行けばいいじゃいか?アジア、中国を選んだことで、自分で自分に「二流」のコンプレックスを植えつけ乍ら暮らして、それで楽しいんかな? こいつら。

もちろん親が、欧米留学だと遊んでしまうから、中国なら遊んでもたかがしれてるだろうから(金銭面でも)それでアホガキを意に染まぬ中国に押しこんだ側面もあるでしょうが、そうは問屋が卸さないという麻薬汚染の面を描いて見せた本書なわけですが、本書はそういう留学動機をちゃんと書かず、中国語が出来ると就職に有利だからみんな中国に来るみたいに書いていて、いやそれはないからと私も思い、作者もマッチポンプでそれは否定してます。日本企業は、優秀な人材を採ってから必要であればそれを中国に留学させるわけで、あと語学堪能が必要なら、日本語の出来る中国人エリートのほうを採るだろう、現地で中国語勉強してそれで一流企業に就職出来るわけないじゃんという。カリフォルニアやニューヨーク留学の日本人が、英語を身につけただけで一流企業に就職出来たわけないのに、何故中国ならそれが成立すると思い込むんだろうという。

遊ぶんなら欧米でしょう。赤西。作者は、中国ブーム(笑)が来る前の邦人留学生は、中国オタクばかりだったと書いていて、私も、天安門以後、いち早く中国に戻った留学生たちに会って、一部に似た印象を持っています。まーその頃も安く住めるので親が押しこんだ組はいましたが。日本と欧米で受験失敗組。本書には、天安門で留学生がぜんぶ逃げたので、1989年秋から、帰ってきてください、また留学生送り込んでくださいと、日本の各大学に、北京から大学関係者がお百度詣りしたことが書いてあります。それは知りませんでした。

中国オタクにならなくては、中国にいた意味はない、発揮出来ないと思います。てなもんや商社しかり、安田峰俊しかり。しかしそれも、なかなか舵取りのむつかしい生き方で、本書に、団結する韓国人に比べ、砂のようにバラバラの日本人(魯迅はそれを中国人の比喩として使いましたが、私にはそれは、現代日本人にも当てはまると思えてならない)を統一する留学生会、留学生連絡会を清華大学で組織しようとしたが、まーこれが日本人は笛吹けど踊らずだし、中国側も韓国側も言いたいことだけえんえん言って来るし、仲介役だけ消耗して死んでしまう(比喩)というくだりがあり、まあそういうとこで成功するとその人の人生も成功するんちゃう、と思うですが、そういう話ではなく、同じ時期に、私も一瞬だけ北京にいて(HSK受験)北京外大(ベイワイ)で留学生連絡会を作ろうとしてる動きがあるんですう、みたいな女性やオッサンと会ったことがあります。場所は、安田峰俊和僑』でも登場した、友誼賓館裏手の豪勢なコテージ。日中友好をうたい文句に上流北京ライフを謳歌する人たちを初めて見て、中国の賄賂社会に馴染めない人間(本書によると邦人留学生はたいがいそうらしい)が、邦人の一部の、そういう、うまいことしいな既得権益チックな生き方なら馴染めるかというと、やはりという話で、中国オタとか、日中友好とかも、たいがい胡散臭い方に振れると胡散臭いと思ったものです。古森義久が『日中友好まぼろし』を書くわけだと。本書にはまだそういう日中友好の光と影の記述はありません。無邪気に中国を、反日だが友好は守ると信じてる。

本書には一ヶ所だけ蓮舫が登場するのですが、そこまで辿り着くのに疲れたので、ここでいったん切ります。以下後報

【後報】

なんか上で、北京留学の麻薬汚染みたいに刺激的に私も文章書いてるので、そればっかクローズアップしてもなと冷静に振り返って思います。だいたいハッパとハシシュの大麻なので、まあそんなものどこの国に行っても(韓国は知りませんが)ギロッポンに行ってもそれなりだろうと。切り分けて冷静に考えるべき。

頁24に、日中留学協会調べの、1997年(一部は1996年)の北京の長期留学生数の数字が載ってます。これ、その前と、その後で、どうなったんでしょうね。その前は、韓国人はなかった、「한국은 없었다」(国交がなかったから)のは分かります。

<以下データ引用>

     日本人数 韓国人数 その他

北京大学  320人   340人 268人

北京師大  233人   152人 156人

語言    420人   420人 910人

北外    350人   100人 135人

第二    199人   185人  76人

清華     90人   180人  90人

人民大学   93人   117人 113人

その他   905人   1256人 1054人

計    2610人   2750人 2802人

本書によると、韓国勢の伸長とともに、北朝鮮からの留学生はリトリートしていって、しぼんだそうです。著者が中朝蜜月時代?の1991年に語言を訪れた時は、北朝鮮が宿舎を一棟借りして住んでいて、全員金日成バッジをつけていてどこからも見分けがついたそうです。私もその頃語言に行ったことがあるのですが、まるで気がつきませんでしたwww ただ、本書で「コリアンタウン」と紹介されているウーダオコウ、五道口の、それ以前の姿をこの目で知ることが出来たのはよかったです。コリアンタウンと化した後もちらっと見ましたが、日本人のやってる寿司屋がぽつんとあって、ガラガラだったことしか覚えてません。

上の統計で、首都大学はその他に分類されてるんだな~と思いました。この頃はノーと言える日本とか、中国可以说不とかの時代でしたが、マサカ日本の東京都立大が首都大学なんてアホな名前に改名するとは夢にも思わなかった。東大は帝国大学に改名しませんでしたが、首都大学、う~ん。大阪いちりつ大(府立大?)を民都大学に改名したらつり合いがとれると思います。京都いちりつ大(府立大?)は古都大。

 作者は高校時代に交流ナントカ等で韓国を訪れていたことから興味があって学んだのか、ハングルも堪能だそうで、頁29に一文書いてあるのですが、教科書とかに書いてある文章ではなく、語尾が映画で聞くような「~ゴヤ」というようなハングルなので、これが四方田犬彦いうところの「ためぐち韓国語」って奴かなと思いました。それでいいのかな。

頁29

2천원마지 더주었으니 괜찮을꺼야.

「2000元でダメを押したので、もう大丈夫」

学部別合格料金

韓国語で言葉の最後に~ゴヤ.と言うときはどういうニュアンス... - Yahoo!知恵袋

頁141に族譜のルビで「ゾクポ」と書いていて、「족보」だからチョクポじゃないのと思いましたが、校正時見過ごしたのかもと思います。頁209で、作者は韓国人留学生の吐き出す金を吸い上げる北京上京朝鮮族たちから、在日だと思われていたと書いてますが、「在日同胞」と書いていて、なんで「僑胞」と書かないのだろうと思いました。日本語じゃないからか。キョッポ。日本人の企業留学生はカラオケや床屋マッサージで中国人を買春するわけですが、韓国人企業留学生が行く先は朝鮮族のホステスと書いてあって、ここもう~んと思いました。

あと、私が会ったような、韓国で学生運動やりすぎて、KCIAやらなんやらにマークされて、就職出来なかった韓国人が、見返すために中国に留学してる例に、作者は会わなかったのだろうかとも思いました。ドラマのモレシゲ久弥とか、普通に出てくる(頁217)ので、企業留学生と徴兵逃れの国内受験失敗組以外に、苦労して影のある留学生にも会ってると思うのですが。

中国語は、日本で中国語の家庭教師だった女性と結婚したということで、東大卒なのでもちろん出来るとは思いますが、それに加えて内助の功のパワーがありそうだと思います。私は読んでて、頁72の"位子"と"椅子"の違いすら分からなかったです。

頁72

"今儿早上没占到图书馆的位子……"

「今朝は図書館の席を取りそこねちゃった)

←立ち小便 立ち勉→

ジアルなんて北京ふうの口語を使う点も、ハングルと同じで、実際の会話の交流を重視した姿勢の表れだと思います。立小便なんていかにも日本風の習慣を入れたのは、イラストレーターのてきとうな仕事だと思いますが、作者は内心にやにやしながら、あえて何も言わなかったのでしょう。作者は中国人の日系企業就職説明会や日本人留学生向け企業合同説明会にも顔を出していて、東大卒で官僚にならずフライデーの意地を見たと思いました。自分がプータローで作者が横にいたら、さぞいやだったろう。エッセー書いて、音羽グループで採用してくれと日参したかもしれない。そんな根性ないか。

若き日のりりしい作者。日本公子。作者は、天安門の年に東大を出て講談社に就職、フライデーと週刊現代編集部を経て、一年間北京留学した、その記録が本書です。やー、そうとう中国語もやったはずなのに、勤務先にHSKの成績を提出しなくていい身分を周囲からうらやましがられたとか、異色です。奥さんといっしょに北京滞在で、けど留学生寮に住まなくてはならない規定から夫婦北京内別居とか、端境期だなと思いました。この頃もう激増した留学生はアンコントローラブルで、勝手に市内に住みだして、怨みのある大学留学事務局に家賃払わない奴が続出してた気がしますので。あるいは大人の対応で、寮費払いつつ市内の、あんましやかましく言わないでも借りれるようなところで、河南省の担ぎ屋やカオヤンロウの屋台引きと薄い壁隔てて暮らしてみたりとか。月三十元とかそんな家賃で。

夫妻が市内在住だったら、留学生の内情はこんなに書けなかったと思いますが、記録としての意味以外だと、留学生の内情なんかそんなに需要がないので、それより駐在にも役に立つ北京事情書いたほうがよかったのか、それだと玉石混交の邦人北京エッセーに吞まれて散逸してしまうのか、悩ましいと思いました。

近藤大介 (評論家) - Wikipedia

奥さん。

その2 6歳からひとりぼっちを生き抜いたカノジョのスーパー危機管理能力 ー 近藤大介さんの場合 ー |

頁229に、リージャンで地震に出っくわした時のことが書いてありますが、本書では、ナシ族のガイドの和宏強という人に助けられたとあります。当時雲南大学観光科の四年生だったとか。

baike.baidu.com

そことは関係ありませんが、複数でいっしょに旅行するのに、ホテルはシングルばかりとる日本人留学生は、相部屋でいい韓国人と比べてコスパ悪しと書いてありますが、これは地方の、バックパッカー崩ればっかのところとはまた違いますので。身分証をとやかく言わない旅社とかテントとかの旅行の世界を好んだ邦人もいたよ。あとダーリーズとか。

頁235、作者は浦和育ちなので、日本人留学生にしては珍しくサッカー好きだったそうで、アトランタの頃だと、そんなものですかね。でも確かに当時の中国は、ブンデスもプレミアもセリエもばんばん放送していた。リーガは、当時そんな人気なかったので、見た記憶ないです。フランスワールドカップを、私は中国でほとんど見て、それは人生のある一定の時間と引き換えでしたが、唯一まともに見たワールドカップです。でも甲Aは、チケットまあまあ高かったと思う。

226、"人头马一开,好事自然来  中国人喝中国的XO"が書いてあって、懐かしく笑いました。1996年3月の、台湾総統選に合わせたミサイル演習にもついても書いてます。逆効果だったという結果までは書いてないのですが。そして、同じページ(愛国心についてのページです)に、中国人による中国人のためのマンガ雑誌"北京卡通"が五万部突破したと編集部の知人が自慢したと書いてあるのですが、当時の、日本の同人誌に比べてもアレな、ノートのえんぴつまんがみたいなものの寄せ集めが、かつての三毛から比べると、どんだけ退行してるのか作者も見て知ってるはずですので、「文革ガー」と一行入れておけばよかったと思います。勿論現代の中国漫画は、ビジュアル的には長足の進歩を遂げたはずですが、よく知りません。

本書は日韓の摩擦についてもちゃんと触れてるので、頁219、1996年4月、語言で、ナイフ片手の韓国人留学生が集団で、日本人と見るや取り囲んで「独島はどこの国の領土だ」と脅す事件があったと書いています。私がその時そういう状況だったらボコボコにされてたのか、逃げてたのか。韓国人うんぬん抜きで、当時は今よりナイフが(というかナイフ持ったチーマーとかが)身近でした。今は当時よりはしっかり管理されてる気がする。原宿歩いてるだけでナイフつきだされたりしない。

それ以外に、韓国人学生が中国人学生を眼鏡ごと殴って失明させかけたとか(ゴチエイか)西洋人女子学生をレイプしたという噂とか、どこの国の留学生社会でも韓国人がやってネトウヨを日陰で育成するのに貢献するような話がちょろちょろ出ます。頁213、日本人留学生金田卓くん(19)が1996年3月、五道口で失踪して以後見つかってない事件は、別の面からも懸案事項になっていると検索して分かりました。名前だけに注目してはいけない。

https://www.police.pref.yamaguchi.lg.jp/files/300191151.pdf

頁193、日本人は絶倫だが金にケチだそうで、これはタクシーの運転手も旅行先もみないうそうです。21世紀の中国に華々しく登場した"AA制"がまだこの頃なかったので、日本人のワリカンはキモかったようで。ぜんぜん関係ないですが私は最近、おごりおごられが通じず、おごるだけという経験をして、呆れました。頁193、"扫黄"(シケベ一掃キャンペーン)に「サーホアン」とルビ振ってますが、これも校正ミスで、"撒谎"(吹牛)とごっちゃになったと思います。

頁180、ピザハットが出てきます。"必胜客" 頁164、タクシー運転手曰く、日本人は"计较"「計較」、韓国人は"偏激"だそうです。

cjjc.weblio.jp

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作者もまた、音羽グループの一員ですので、細かい日本人より、金払いのいい韓国人のほうがいいと現地ローカルに言われていて、では中国人はどちら?と聞くと、中国人は中国語の流暢な韓国人である、そうです。

日本食レストランが、意見は言わずマズい飯を食って二度と来ない日本人が育てないことで潰れ、韓国レストランが、せいだいに意見をいいまくる韓国人客に育てられ繁盛するケースが子細に語られますが、これは北京の話で、日本の場合、なぜか日本食レストランはヤイヤイ言われなくても意を汲み取って努力する店が繁盛し、誰も不服を店主に云わず、ただ足を向けなくなって寂れる例が中国人の中華とか、オモニの韓国料理店である点も、21世紀だと触れておかねばいけないなと思います。本書では、北京大学日本食レストランが、店主の思惑にまったく中国人従業員がついてこず、面従腹背でサービス軽視で、給料だけもらえばいいみたいな態度で、確かに昔はそうで、それが永遠かと思ってましたが、そうでないことは、今日本の外食産業でもコンビニでも実証されている、というか、中国人がそうでなくても、そうであるほかの国の留学生もたくさん来てくれている、ということまで考えが及んでしまい、感無量です。作者が離中した直後なのかなあ、北京に養老乃瀧一号店が開店し、私も行って、中国人客がサシミを食って、("´_ゝ`)フーンとか言ってるの見て、これは普及するんだろかと思いましたが、普及しましたね。おかげで海洋資源が枯渇するほど中国人も魚介類を食べるようになった。その一号店が、日本からではなく台湾チェーンからの展開であったことは、明記しておく必要があると思います。

頁39、コネタパラダイスで、1995年の全国統一入試で750点中577点をとった河南省の楊紅偉くん(18)が、受験票の写真がブサイクだったという理由で第一志望の蘭州大学、第二志望の鄭州大学から不合格の通知を受け(いずれも物理学科)、それを何故か北京青年報が大々的に報じ、全国的な問題となり、結局入学を認められたというニュースがあり、そんなことがあったんだ、知らなかったな~と思い検索しましたが、その事件は出ませんでした。河南省出身の同姓同名の人が、前年の1994年に蘭州大学に入学し、今では学内の専門分野で出世してるのですが、歴史学なので、ちがう。蘭州大学の物理学は、毛沢東の第三線で核開発を担う重要な研究機関なので、名前が出て来ないかな。

https://baike.baidu.com/item/%E6%9D%A8%E7%BA%A2%E4%BC%9F/56421

いちおう実在の人物も、画像検索で顔が見れて、普通の顔なのですが、本書のぶさいく天才くんも、大学合格の翌年整形手術を受けたそうなので、不合格になるほどのそのかんばせは、北京青年報のバックナンバーでも見ないと出ないのかと思います。日本でもそれなりの大学の図書館に行けば、マイクロとかあるかな。

 楊紅偉くん入れたので飛んでしまいましたが、本書は、日中韓に絞ってしまったので、私が薬とか抜きに大いに面白いと思った北京の黒人社会、ゾマホンを生んだ世界は書いてませんし(赤道ギニアスペイン語公用語とか、会うまで分かりま千円)香港台湾という、ちょっとちがった華人世界からの留学生も書かれてません。私がこの頃泊まった宿は、留学生寮がいっぱいではじき出されたインドネシアからの留学生がいて、宿の衛星放送で、ジャッキー・チェンの映画やってたので、ジャワ華人の留学生たちは、「ジャッキー!」と黄色い声あげてましたが、宿のオヤジはチョンロンシェンマジャオジャッキーごにょごにょターマーダとか言ってました。こういうのも入れたらよかったと思います。頁142、韓国人は基本的に自転車に乗らない、は、私の知ってる韓国人にはあてはまりませんが、面白かった。そして留学生間で引き継がれずゴミとなる中古自転車たち。

頁237

  私が知っている限り、日本人でただ一人、愛国心の旺盛な留学生がいた。日本でのニュースキャスターの職を一時休んで北京大学に留学していた蓮舫である。ただ彼女の場合、愛国心の対象は日本ではなくて、彼女の父親の故郷である台湾だった。彼女は私にこう語った。

「ある時、講義の中で教授が『台湾は中国の不可分の領土である』と言ったので、私は思わず立ち上がって、『先生、それは違う。台湾は、独自の通貨と選挙権と外交権を持っており、独立国家よ!』と反発したのだ。その後、『中国の領土だ』『いや独立国家だ』と言いあいになったけど、最後は教授が『確かにあなたのような見方もあります』と言って黙っちゃった。

 蓮舫も、次長課長河本が何をいいこと言っても生ぽ云々のリツイートされるのと同様に、何を言ってもヤフコメには「あなたの二重国籍問題についても明確に説明してもらってないんですけど?」みたいなレスがつく。相手に聞く気がないので、何をしても「説明してもらってない」がなくなるということはないわけで。

news.livedoor.com

蓮舫が野党でなく与党を選んだら、ぜんぜん言われようも違ったんでしょうけれどね。作者が音羽グループの中で中国を語るのと同様、しかたないものはしかたない。本書では、たぶん北京在住の台湾人はインヴィジブルな存在のままでいたいから登場しないのに対し、彼女一人が台湾の代弁者になっていると思います。台湾が出てくるヶ所ここだけだから。今なら教師ももっとねちこく彼女を攻め、炎黄の子孫ならもっと漢語をりゅうちょうにさべれるようになりなさいと追い打ちかけると思います。そして、本書のような事柄が21世紀の日本で報道されても、「そもそもなんで台湾のタイダー行かないの?なんで北京留学なの?」とは言われると思います。

以上

(2020/3/14)