ལམ༌གྱི༌ཉི༌འོད།『路上ろじょうの陽光ようこう』"Sunlight on the Street"《路上的阳光》ལྷ་བྱམས་རྒྱལ། ラシャムジャ lha byams rgyal 拉先加 日本オリジナル短編集 Japan Original Edition 日本独创短篇集 感想を書く前に

『路上の陽光』ラシャムジャ|海外文学|書籍|書肆侃侃房

路上の陽光

路上の陽光

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装丁 成原亜美(成原デザイン事務所) カバー写真 Chongtian/EyeEm/gettyimages

東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所「多言語・多文化共生に向けた循環型の言語研究体制の構築(LingDy3)」研究成果のひとつとして刊行、だそうです。『路上の陽光』『西の空のひとつ星』『川のほとりの一本の木』の三作のみセルニャに既出。ほかは書き下ろし訳か。巻末や訳者あとがきに、原書の初出が書いてないのですが、新作二作を含むとのことなので、それでかも。

ラシャムジャの邦訳は、長編『雪を待つ』が先行して勉誠出版から2015年に出版されているのですが、『雪を待つ』は少なくとも二つの点から、作品以外の麺で、否、面で興味深いです。

(1) 増刷がオンデマンド版。

本邦訳は一連の勉誠出版チベット作家邦訳シリーズの一環で発売されたのですが、トンドゥプジャ『ここにも激しく躍動する魂ガー』*1 タクブンジャ『ハバ狗を飼う』*2 ティメー・クンデン『ペマ・ツェテンを探して』*3 ツェラン・トンドゥプ "Black Fox' Valley" *4 の各作品のうち、これだけが過度にショタ受けしたせいか版元品切れとなり、版元がネトウヨに乗っと…、否、担当編集者が会社を去ったせいもあってか、何故か二刷のないままだったです。それが、2021年春に岩波ホールチベット映画祭をやった時に、角界、否、各界から圧があったのか、刷りまして、それはいいのですが、これがオンデマンド版で、落ち着いた紙質のカバーついたハードカバー本が、ツルツル紙のソフトカバー本になり、値段はおんなしという、そりゃないぜセニョリータ状態になりました。

私自身は2020年秋、GoToEATまっさかりの時期に、必死こいて各書店で在庫検索して、コレド室町の台湾誠品書店日本支店の棚に残っていることをつきとめ、そく取り置きしてもらって新日本橋からタクって取りに行って、ついでにコレド室町台湾料理店でランチ食べたら、GoToEATの割引なしで支払った客がよほど珍しかったのか、ホールスタッフから何度も目を皿のようにして見られました。私はスマホ持ちでないのでGoToEAT利用出来ないです。

(2) 邦題が漢語タイトルに影響を与えた。

『雪を待つ』の原題 བོདཀྱི་གཅེས་ཕྲུག は「チベットの子どもたち」とでも言うべき意味だそうで、アムドなのにチベットと銘打つと、チベット全域を代表するみたいでおしょすいべやとかないかしら、と、私自身読んで思いました。同じことを誰かが考えたのかどうか、2015年の勉誠出版タイトルは『雪を待つ』となり、これがあまりにハマり、海を越えた影響があって、それまで本作の漢語タイトルは原題を意識した《成长谣》だったのが、2018年9月に作家出版社から《等待下雪》(雪を待つ)の漢語タイトルで龙仁青译で出版されています。こんなことってあるのかと、開いた口がふさがってません。

拉先加_百度百科

なんにも書いてないので、本词条缺少概述图,补充相关内容使词条更完整,还能快速升级,赶紧来编辑吧!と書かれてる百度のラシャムジャのページ。

stantsiya-iriya.hatenablog.com

書くことが多すぎて、何も書けない、私の『雪を待つ』読書感想。チベットレストランの店主から「そんなによかったですか」とピンとこなかった感じで訊かれました。作者のもとにも海外チベタンからのいろんな声が届いていて、本書収録『遥かなるサクラジマ』がそのアンサーだとすると、けっこう重いです。

前作の邦題にはそうした渚にまつわるエトセトラがありましたので、『路上の陽子横浜横須賀』にもそうしたいわれがあるのかないのかと思っておりますと、はたして漢訳も "LuShang de YangGuang" てなタイトルでしたが、2015年に出てるそうなので、これに関しては中文タイトルが先行しています。

輸入書 路上的阳光 - 拉先加中短篇小说汉译集【中国・本の情報館】東方書店

本书收录的作品包括:《路上的阳光》、《影子中的人生》、《卓玛的梦》、《天葬》、《盼雪》、《寒风》、《米拉吱吱》、《那一年》、《冬虫夏草》等。

邦訳とカブッてる作品がほかにもあるのかどうか。《天葬》は『風に託す』に、《寒风》は『西の空のひとつ星』になってる気もしますが、気のせいな気もします。チベット語が分かれば原題から一発なんでしょうが。《米拉吱吱》の意味が取れないので、この作品がとても気になりますが、読んだら肩透かしかもしれません。『ミラレパじじい』くらいの意味でしょうか。

མཚོ་སྔོན་མི་རིགས་དཔེ་སྐྲུན་ཁང་།

邦訳巻末の原書発表年を見ると、表題作は2010、2012と二つ書いてあります。後者が青海民族出版社から本作をタイトルにした短編集が出た年のようです。

ལམ་གྱི་ཉི་འོད། རླུང་ལ་བཅོལ་བ། ཁ་བར་སྒུག་པ། གྲིབ་གཟུགས་ཁྲོད་ཀྱི་མི་ཚེ། མི་ལ་ཙི་ཙི། སྒྲོལ་མའི་རྨི་ལམ། ལྷགས་རླུང་། རོང་གྲོང་གི་འགྲུལ་བཞུད། མ་ཡུམ། ཁ་བའི་མཚན་མོ། དབྱར་རྩྭ་དགུན་འབུ། མཇུག་བྱང་།

青海民族出版社の本書ページは目次がそのままペーストしてあるので、収録作品が分かります。この読書感想に書くチベット語タイトルもここからコピればいいやと楽観しましたが、『西の空のひとつ星』以外カブってる作品はありませんでした。邦訳作品はなべてこれ以降発表作品。残念閔子騫

下記は、原題で検索すると出て来るページ。批評でしょうか。

༄༅།།ཉི་འོད་ཀྱི་རྒྱབ་ལོགས།  — སྒྲུང་ཐུང《ཉི་འོད་ཀློང་གི་སྒྲོལ་མ》དང《ལམ་གྱི་ཉི་འོད》གཉིས་ཀྱི་གཤིབ་བསྡུར། བྱ་གཞུང་དབྱངས་བྷ།

https://ti.zangdiyg.com/Article/detail/id/17904.html

༄༅།། སྒྲུང་ཐུང《ལམ་གྱི་ཉི་འོད》ལ་དཔྱད་པ། ཚེ་རིང་གཡུ་སྒྲོན།

https://ti.zangdiyg.com/article/detail/id/10801.html

巻末には、担当編集藤枝大サン、装丁の成原サン、ハンブルク大学ドルジ・ワンチェク先生やセミナー、朗読会参加者各位、セルニャ関係者への謝辞。ラスト作品執筆の契機ともなったセミナーに関連して、編集者田島安江サン、アルジェリア文学研究者鵜戸聡サンへの謝辞もあり。

ラシャムジャ旋風はまだ続くというか、なぜか小学館が年の暮れに出すことになっている、チョン・セランが提唱して、村田沙耶香が受けたという、「絶縁」をテーマにした国境横断新作競作アンソロジーに参加するそうです。日本、シンガポール、中国(折りたたみペキンの作者)タイ、香港、チベット(ラシャムジャ)ベトナム、台湾、韓国。

honno.info

【編集担当からのおすすめ情報】 きっかけは韓国を代表する若手作家チョン・セランさんのひと言でした。「韓中日+東南アジアの若手世代の作家7~9人で、同じタイトルのもとそれぞれ違う短編小説を書いてアンソロジーを出してみたいです。今、思い浮かんでいるタイトルは『絶縁』です」この提案を、『コンビニ人間』が世界的ベストセラーになった村田沙耶香さんに伝えたところ「痺れるテーマですね」と快諾。その後、アジア9都市9人の作家の参加が決定しました。『折りたたみ北京』にてヒューゴ賞を受賞した郭景芳(ハオ・ジンファン)さんをはじめ、いずれも気鋭の作家です。多くの作品が既存作品の翻訳ではなく書きおろしという前代未聞のプロジェクト、日韓同時刊行です!

オーディオブックも予定してるとか。チベット語のアムド口語で朗読するわけじゃないんでしょうが。

prtimes.jp

周辺を巡る記述としてはそんな感じで、これから八編の小説について感想を書きます。

今週のお題「最近おもしろかった本」

📚最近なに読んだ?× 話題の本・名作・技術書、なんでも! 今週のお題は「最近おもしろかった本」です。 読書の秋とはいえ、いきなり本を読もうと意気込んでも、何を読んでいいのか迷ってしまいますよね。そこで、みなさんが最近読んだ本のなかから、おすすめを紹介しあってみませんか? 今週は「最近おもしろかった本」をテーマに、みなさんのエントリーを募集します。「ずっと読みたかったあの本をついに読んだ」「この技術書が役立ちました」「何気なく読んだらめっちゃおもしろかった本」など、あなたの「最近おもしろかった本」にまつわる出来事を、はてなブログに書いて投稿してください! ご応募をお待ちしております。

以上