『龍馬夜行』《龙马夜行》"Night Journey of the Dragon-Horse" by Xia Jia 夏笳『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』"INVISIBLE PLANETS Contemporary Chinese Science Fiction in Translation" ケン・リウ=編 Edited by Ken Liu (Liu Yukun / 刘宇昆)(ハヤカワ文庫)

CREATIFIED BY VEGANヴィーガン 大麦麦芽100% ノンアルコール まさにビールを飲むが如し 龍馬1865 プリン体ゼロ 添加物ゼロ(炭酸以外) 長崎にて商社を創業し、 グラバー氏との取引を始める。 その交友からビールを譲り受け、 初めてビールを飲んだ年が 1865年といわれています。CREATIFIED BY VEGANヴィーガン 大麦麦芽100% ノンアルコール まさにビールを飲むが如し 龍馬1865 プリン体ゼロ 添加物ゼロ(炭酸以外) 長崎にて商社を創業し、 グラバー氏との取引を始める。 その交友からビールを譲り受け、 初めてビールを飲んだ年が 1865年といわれています。CREATIFIED BY VEGANヴィーガン 大麦麦芽100% ノンアルコール まさにビールを飲むが如し 龍馬1865 プリン体ゼロ 添加物ゼロ(炭酸以外) 長崎にて商社を創業し、 グラバー氏との取引を始める。 その交友からビールを譲り受け、 初めてビールを飲んだ年が 1865年といわれています。

なぜこのノンアルコールビールが龍馬なのか知りませんのと同様に、このお話のタイトルも最初よく分からなかったです。原題そのまんまだし。中国で1865年というと、捻軍に清朝直営禁軍が包囲殲滅された戦いの年だとか。

捻軍 - Wikipedia

高楼寨の戦い - Wikipedia

センゲリンチン - Wikipedia

獅子文六の小説で映画化もされた在日華人の物語『バナナ』の主人公がやはり竜馬で、神戸華僑のオジサンから、さかんに「ロンマー、ロンマー」と漢語読みで呼ばれるのですが、それは流石に本作と無関係でした。

stantsiya-iriya.hatenablog.com

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意味はとれるけど、日本語として練れてないタイトルなので、『からくり辰駒とばりの道行』『からくり辰駒しじまの道行』とでも訳してみたらどうだろう、と思ってました。この話は、はるか未来、人類が死に絶えた後、彼らが残したからくり機械が、生まれ故郷を目指して、一歩一歩進んでゆく物語です。とてもふいんきがある。イイ話。

で、著者付記に、ロンマー、ドラゴンホースについては、下記ユーチューブをご覧くださいと書いてあり、URLのうち、ひとつは見れなくなっていたのですが、もうひとつは見れ、龍馬が実在する(あるいは実在した)ショーアトラクションの出し物だったことが分かりました。

www.youtube.com

佛中国交50周年を記念してフランスで作られ、この後北京へ贈られた、動く立体造形です。

www.afpbb.com

まさか実在するとは思ってませんでした。なんでこれの二次創作というか、これを主人公にした物語にしようと思ったんだろう。特にコラボとかメディアミックス戦略でノベライゼーションしたわけでもなさそう。

kotobank.jp

上記のことばに触発された、フランスはナントの製作者が、龍とも馬ともつかぬ機械仕掛けのクリーチャーを、法中国交50周年を記念して創造したそうです。長い年月の末(とAI技術革新の結果?)意志を持ったロボットは、旅の連れ合いの、これもからくりの蝙蝠と共に、人類が死に絶えた後の世界を旅します。『からくり辰駒道行夜路』ダメかなあ。

2015年2月に《小説界》という雑誌に出た作品で、英訳はこのアンソロジーが初。どう考えてもこの小説自体は、仏中友好50年ジョイント企画のメディアミックスではないと思います。関係ありませんが、「小说界」の英訳が"Fiction World"で、はからずも日本語と中文の「小説」の意味の違いが浮き彫りになってると思います。あちらでは《小説》ということばはうそごと、つくりごとのイメージが強いので、それで「小説界」が「フィクションワールド」になると。日本に「小说界」という雑誌があっても、英訳は、「ノベルワールド」"Novel World"になるはず。フィクションワールドにはならない。

このドラゴンホースは、2015年2月発表の本作では、引き続きモニュメントとして中国に留め置かれたことになってますが、同年8月の下記記事では、ナントに凱旋帰国したとあります。

www.xinhuanet.com

その後の消息のニュースがないので、維持費もかさむし、ひょっとしたら解体されたかもなと勝手に思いました。コロナカ初期、フランスでは黒人介護士がねたきり老人を見捨てて施設から遁走して大変なことになっているというデマを中国が流した後の法中関係は知りません。修復したでしょうけれど。フランスは米国に自由の女神を贈り、中国にロンマーを贈り、後者の行方は杳として知れない。

原注に、詩歌のセリフの部分は、海子ハイズの詩『馬の夢』からの引用、とあります。それ以上書いてませんが、正確には「祖国、或いは夢を以て馬へと」とでも訳すべき題名の詩です。《祖国,或以梦为马》

中华诗库::现代诗库::海子诗选

baike.baidu.com

ハイズは安徽省の農村出身の天才児で、15才で飛び級北大進学、将来を嘱望されていましたが、1989年3月、天安門事件の三ヶ月前に山海関で鉄道自殺します。享年25歳。中国の飛び級制度は体格差のある年長同級生のいじめがあって、成果が上がらなかったとされていますが、彼がそうだったかは分かりません。

zh.wikipedia.org

www.youtube.com

ハイズサンは1964年生まれ。上の再現ドラマやPVを集めた動画で、パソウコンがこの時代ほぼほぼないのに出て来るのはご愛嬌として、カップラーメンも、まだ高嶺の花だったのに貧乏青年の常食として出てきてしまうのはちょっと時代間違えてるヨと思いました。

彼の名前と「詩」でアンド検索すると中国国際放送局の日本語記事が上位に出て、「日記」という詩で歌われる恋人の故郷がチベットと書いてあるのですが、ドリンハ(私が耳で聞く発音)は青海省の、どちらかというとチベット人ではなく青海モンゴル人の中心地です。

baike.baidu.com

[http://]

デリンハ市 - Wikipedia

「ねえさん、今夜ぼくにはゴビ(砂礫砂漠の意味*1)があるだけ」と書いてるくらいなので、ほぼほぼチベットでなくモンゴルを念頭に置いてるのだろうと思います。下のほうにチンコー麦が出ますが、まああまり深く考えまい(ご都合主義)彼がチベットに傾倒していたとウィキペディア等に書いてあるのと、ドリンハのモンゴルと、どう整合性がとれるのかは、分かりません。

私は北島、ベイダオもロクに読んでないので、中国現代詩はまったくチンプンカンプンで、新井一二三サンにでも解説してほしいくらいです。ハイズの詩はまとまったものとしては邦訳未刊行で、原書も、四、五千円は見んければならん感じです。でも詩だからか、相当ウェブに転がってるので、やる気本気元気があれば閲読可能。引用された詩も、'我也愿将牢底坐穿' '带着不可抗拒的 死亡的速度' '我必将失败' とか、なかなかだなあと思いました。日中の共通点をそこに置く、西方是楽観主義、東方是悲観主義という分類をまたしても思い出す。

仮にフランスから贈られたドラゴンホースにインスピレーションを得たとしても、それをそっくりそのまま作中に出さなくても、と思わないでもなく、なぜ完全なフィクションとしてお話を作らないのかという疑問は残ります。開高健が『輝ける闇』を書いた時、三島由紀夫が、完全な空想で書いたのならすごいと評価するが、ベトナムに行って自身の見聞を元に書いたのであるなら、そりゃね、みたく言ってたのを、ちょっと考えてみたく。SFは自由であるはずなので、同人みたいに誰かのキャラを動かしてもそりゃいいっちゃいいですが、でも、出来れば、完全にその人の頭で考えた創作で勝負してほしいかなと。

日本のSFの黎明期も、小松左京サンやら筒井康隆サンやら、そうそうたる知の巨人たちがSFというジャンルに集結していたわけですが(だが中国は、このカカサン北大や、カクケイホウサン精華大のように、SFでも最初から女流が躍進していた点が、ホモソーシャルな日本と異なる)もし筒井康隆サンが、『日本以外全部沈没』とか『カラダ記念日』みたいなパロディジャンルにばかり拘泥していたとしたら、そらもったいない、この人の多種多様なオリジナル世界を読者が知らないなんて、そら殺生や、となるでしょう。どないだカカサンという。

東山彰良サンも、最初はナルトのノベライゼーションなどをやってましたが、遅かれ早かれというか、オリジナルで勝負し出して、中森明菜のセカンドラブを作中歌で効果的に使ったことで直木賞を受賞したわけなので、かかサン頑張りよし、以上です。

ja.wikipedia.org

最初、この小説のタイトルは、アルスラーン戦記の下記『征馬孤影』的な題名に昇華出来ないものかと思ったのですが、思いつきませんでした。

以上

【後報】

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宮前平

(2023/7/15)

*1:

stantsiya-iriya.hatenablog.com

この本に、『三叉戈壁ゴビ』"Three Forks, The Gobi Desert. " 1987年という小説が収められていて、それによると、ゴビはあのゴビ砂漠の地名ではなく、砂砂漠を指すことが多いとか。