読んだのは2023年10月15日の初刷。Cover Design:益子典子(mameco)連載担当者/須藤綾子 単行本編集責任者/岡田真弓 単行本編集者/須藤綾子、鈴木萌香(由木デザイン) 資料写真提供・取材協力/Hiroaki Hiramaz 「姉系プチコミック」2023年⑤・⓽号掲載。
笙野サンが田中さんと結婚した場合、笙野母の「孫が見たい」願望を叶えるためには田中さんは滝川クリステル並みに高齢出産せんければならず、どうすんだろなあと読んでいたら、山根ふみか31歳という新キャラが笙野サンの見合い相手として登場し、もう新キャラいいよと思ったのが⑥巻。したっけ、うまいこと話をまとめて、さすが売れっ子ベテランまんが家と思いました。それが第13幕。
「それは 全部 田中さんが作った僕だ」(頁67)
うまいこと言うなと思いました。読者のひとりひとりが、ふと、「それは 全部 芦原さんのマンガが作った私だ」と思ったとしたら、それが死によって一瞬を永遠に転化させ、生死も時空も超越した作者の本懐になるんでしょうけれど、さすがにそこまではないかな。
頁53にアサヒスーパードライの缶が出ます。こんなハッキリ書いといて、なんで第15幕の三好さんの冷蔵庫のビールは架空ブランドだったんだろう。「攻撃したかったわけじゃなくて」はこの描写に対してではなかったと思います。
で、老人ホームのメイクボランティアはいいんですけど、コスメで田中さんが美しくなったとたん、三好サンが田中サンにコナかける分かりやすい展開に私はドン引きしました。そんでまたバカのひとつ覚えみたいにローマの休日とときめきトゥナイトでしょう。オードリーやグレゴリー・ペックはともかく、池野鯉サンもいい迷惑ではないかと。「攻撃したかったわけじゃなくて」はときめき天丼に対してではないはずですが…
ここの映画ラインナップに「ラ・マン」が入ってるのはおかしいと思います。マルグリット・デュラスを攻撃したかったのなら、それでもいいですが。だって宗主国フランスのびんぼうムスメ(白人)がベトナム華僑のお金持ち青年に金で買われる話ですよ。黄禍論の逆張りで、ビアンカ・タムとかエリカ・ジョングとか、いろいろ思い出しますが、大前研一や千昌夫は別です。とりあえず言いたいのは、ナイン・ハーフとラ・マンはぜんぜんちがうということ。なんでここにラ・マン入れたんだろう。故人は語らず。知るすべなし。
頁140で胸倉掴むのはよかったです。今は胸倉掴むだけで録画されてたら暴行罪とかそういうしゃらくさいこと、マンガに言わないでと思う。その点を指摘した編集がいて芦原さんが反論して「攻撃したかったわけじゃなくて」になったわけじゃないと思う。
三好さんが偽装結婚戸籍貸ししながら田中さんにコナかけてるって展開になったので、老後の面倒見てもらうならマジメ女子って結論に達したのだろうか、これはひどいとしか。
頁140で胸倉掴むのはよかったです。くりかえしになりますが。いやーてっきり三好サンには年上のオババ的パトロンがついていて、その金でお店やってるという展開であるべきと思ってました。それなら、パトロンと別れて田中さんとくっつくのもありじゃないですか。くりかえしになりますが、これはひどいとしか。
一定期間マを置いた第15幕では、芦原サンも頭を冷やしたのか、不倫で心にキズを負った職場の同僚百瀬サンや、三好さんの音楽仲間の弓岡さんという新キャラが続々現れて、それはダメだよと冷静かつ客観的にいろいろアドバイスするのですが、たぶん単行本にならないので、⑦巻までしか読んでない読者は、田中さん危うい展開だったけど、ウィシュマサンやクルド人問題がアレってことなの? としか思わないかも。そっち方面からもツッコミがあったかもしれず、「攻撃したかったわけじゃなくて ごめんなさい」
帯。私が単行本を買ったのは小規模駅前書店ですが、そのそばのショッピングモールに入ってる大規模チェーン店の帯は全巻コレでした。
帯裏。
今のドラマはそもそもいちいちDVDなんか作らないのかもしれません。そうすると印象操作の飛ばし記事ということになりますが、実際の所どうか知りません。
帯折。いやー、レポートまんがや出演者インタビューが読みたかったのですが、電子版には収められてないんですよ。
電子版にはこんなんしかなかった。役者さんのビジュアルは電子版では保護されたりするので、しかたないなあと思いますが、レポートまんがはどうなんだろうと思ったです。
頁4。これに関する記述がレポートマンガにあったら、知りたいと思いました。掲載誌の紙版の出品は微妙なお値段で、めちゃくちゃボッタでもないのですが、でもなあと思い、かといって国会図書館に行って司書さんの労を煩わすまでかというと、それもなあという。ライターさんが国会図書館でそんなことやってたら白い目で見るほうのアマチュアが私ですので、その私がやってどうするという。
結論から言うと、別の方法で閲覧しました。レポートまんがには、⑦巻頁4にリンクするような記述はないかったです。撮影現場に原作者がお邪魔する件について、ブラックジャックに宜しくの人がSNSで主演とやりあってたのはこれの気の回し過ぎかとは思いました。サバランの店内はセットだそうで、自由が丘の同名店でロケしたわけでななさそう。中島京子サン『やさしい猫』*1のNHKドラマは海老名と大和のあいだの実在のスリランカ料理店でロケされたそうですが、セクシー田中さんのサバランはセット。
ただ、まんがの店内は自由が丘の店をかなり忠実に模してますし、ドラマ化に際しては、監督もプロデューサーもお店を訪れたとか。脚本家は知りません。
もともと、2018年に「セクシー田中さん」の企画がスタートした時に、芦原サンがお店を訪れたとか。そして、その時点ですでに芦原さんにはベリーダンサーの知己がいたそうで。だから、最初からいろいろベリーダンスにまつわる文化などには知識があったと。企画ありきで後付けで学んだのではなく。
ポールダンサーのまんがなら、有間しのぶサンも同じ小学館で描いてますし、モーニングでも連載がある*2のですが、ベリーダンスだとちがうのかなあ。主演の木南サンもそれなりにダンスはこなしてたのですが、腰ばっかのベリーダンスは勝手が違って大変だったそうです。上記インタビューによる。
はなしを戻すと、自由が丘の店主は、②巻頁82の夢の場面のドラマでアラブ人を演じたそうで、でもイラン人。エンドロールに協力で店名が出てるそうで、お店では追悼のため一年間献花するとのことでした。売名で写真飾ってるわけではないと。で、作中ではギロッポンにお店があることになっていますが、ギロッポンに実在したペルシャ料理店は現在広尾にあるそうです。私が行く予定はありません。昔の知りあいにも会えなそうだし。
でも、日本でお店でフェセンジャン出してるのがこの店だけなのに(そうらしい)「絶品ですよ」とまでキャラに言わせてしまうのは、いささか盛ったなと私は思いました。笙野の①巻頁137のせりふ、「食べたことないから正解の味がわからないけど」が読者の最大公約数では。家庭料理で食べたことある人ならこの店の味がどの程度か判断つくんでしょうけれど。
左は第15幕(2023年12月8日発売の1月号掲載)の煽り文句。編集的にはもうすっかり原作者自ら脚本を売りにしてる感じ。思うに、これでイカレた脚本家の怒りに火をそそいだのでは。
今回の一連のSNSで、小学館と原作者は一蓮托生みたく芦原サンが書いてるわけですが、大企業ですし、内部でもセクションによってだいぶ温度差があるんではないかなあと思いました。この煽り文句や単行本⑦巻頁4でのぶっちゃけがある一方で、レポートまんがなどでは1㍉も原作改変について触れられてない。
空 行
白 間
美 嫁
2月6日付の上記布告を読んで思ったのが、編集者が若手で、芦原サンはベテランなので、編集が軽い気持ちで暴走した時、芦原さんが姉御肌でひとはだ脱いで(エッチですね)ケツ拭いたりかばったりしたのかなあと。「先生、言っちゃってください、言っちゃって!私も同じ気持ちですよ!」とかいう感じだったかどうかは知りませんが。でも、だとすると、逝去後、たしかに、「さびしいです」になる。
O型がそういうことをしてはいけないのかなあと。A型ならよかったかも。B型だったらそもそも若輩編集者なんかどうでもいい。
[B! Togetter] お気付きだろうか?# 相沢友子 さんのインスタプロフに堂々と書き連ねられた作品の殆どが、漫画や小説が原作であり、0から1を作る脚本家ではないという事に。
脚本家のクリスマスブチ切れSNSが事の発端としても、⑦巻頁4や連載最新話の煽り文句のが先ですので、「苦い経験」「困惑」「存在意義」「同じことが二度と繰り返されませんように」というのは、そうとう煮えくり返ってたんだろうなと。でも一月末の芦原さん逝去後の2月6日のSNSで、何も知らないかったことにして発信したらアカンがな。同日2月6日に小学館公式発布がツブして吉。
電子版には載ってなさげ*3ですが、プチコミック2024年4月号に編集部の追悼文が載っており、それによると芦原さんはダラブッカの腕前はかなりのものだったようです。ベリーダンスショーにもたくさん行っていたとか。ただ、『セクシー田中さん』のタイトルは芦原サンから持ち掛けたものだったという箇所は、どうかな。なら毎回、"Step of Sali"の英題入れなくてもいいでしょう。"Step of Sali"ならこれまでの作品と路線が変わらない題名で、キレイですが、セクシー田中さんはセクシーコマンドーすごいよマサルさんとアフロ田中シリーズをくっつけただけの芸のない二番煎じのタイトルだと、私は思います。
原作改変バトルには永遠の終止符を打てたかもしれませんが、代償に連載の続きが描かれないまま終わってしまったのは、いかにもフェアトレードの反対だと思います。釣り合わない。そんなことでこの作品がグリンゴやカムイ伝の仲間入りをしてしまうとは(とりあえず小学館連載を並べてみました)
「生きづらさ」とか「登場人物全員こじらせ」とかの言葉にばかり接してると、見失いがちですが、まず、自分を助けてからです。自助は、自分を助けると書く。自分あってこそ。すべての人に寄り添う優しいメッセージを考えるのもいいですが、その前に自分。以上
【後報】
私なら怨霊になるかな。なれないけど。祟る方向で。
(2024/5/31)
【後報】
①リテイクで費用面で新たな負担が発生していたことはなんとなく予想ついてましたが、サントラ発売中止で回収費用も発生していたこと、海外配信もストップがかかっていたことは知りませんでした。どちらも、こんぐらがってもつれたすえに、なんとなく誰かのせいみたいな感じで起こってるので、実力のあるキーマンがきちんと交通整理すれば和解してゴーサインが出てた気がします。むかし理詰めで勝負するタイプの上司に、寝技の達人には勝てませんよねみたいな話をしたことがあるのですが、うすく笑って、「寝技もいいけど、いっつもいっつもそればっかりだとね」と、「寝技もいいけど、カレーもね」みたいなことを言ってました。芦原サンに対する説得が毎回寝技かどうか知りませんが、もしそうだとしたら、飽きられるのも当然と思います。
②当初から難しい人と分かっていたのに、三度目のドラマ化を推し進めた小学館のメディアミックス部門も不思議です。調査対象でないので調査されてませんが、誰か興味のある人は調べてもいいと思います。
③脚本家のひとが弁護士を立ててきてたとは知りませんでした。対する漫画家サンがタッグを組む出版社にも信が置けなくなっていたら、そら追い詰められた心境でどうかしてしまうポテンシャルもゼロではなく、実際悲劇が起こったのかもと思いました。なんでフジテレビメインで仕事してた人が二十年ぶりに日テレで仕事しようと思ったのかなあ。しかも「難しい」人原作で、自分は前回云う勿れの風呂水サン設定改変で炎上してるのに。
❹クラハシサンを短大を専門学校にしたり、私立公立で制服がカワイイだなんだの性格にするというドラマ独自の改変は、まんが連載第一回でイキナリトラソプに破れたヒラリー・クリントンの演説を原文英語でぺらぺらしゃべり出すような、能ある鷹は爪を隠すクラハシのキャラを、まったく理解してないと芦原サンは思ったことでしょう。でも脚本家のしと的には、制服がかわいいかわいくないで傷ついたりすることの何処が悪いの? かもしれない。水と油は水と油でしかないと思います。
❺アフターピルや小西進吾の男子会については触れられてますが、性被害未遂のヤリコンが当初削られそうだった件は一行も出ません。ちょっとふしぎ。
stantsiya-iriya.hatenablog.com
❻小西と進吾の男子会をサバランでやろうとしたが、原作者に論外と蹴られた件は、おかしかったです。予算の都合上と言うことは、セットが使いまわせると思ったからでしょうし、別の店を借り切って撮影したら大変なのは冷静に考えると分かります。でもサバランにしたら、男子会に安田顕混ぜたくなりますよね、ぜったい。その誘惑がスタッフ内に出てくる可能性があること自体、芦原サンからしたらヤダヤダってなとこまで行ってたのかもしれません。そんなことやりませんよと言われても信じられないとこまで来てた(のかも)
stantsiya-iriya.hatenablog.com
⑦芦原サンが、自分が書いた九話十話の脚本が思った以上に低評価なのにガックリ来てて、八話までの高評価も自分がビシ!バシ!しばいたったからやでえ、と言いたくなってたというのは。分かるけどなんぎやなあと思いました。相沢サンからすると逆に、九話十話にも自分が以前に仕込んだアイデアがあんにゃけどな、せやしクレジットいれてくれなアカンねん、って感じなのも分かります。
❽全体の流れみたいなメモは日テレ向けに作っていたそうなので、それをもとに、まだ発表してない先の話を誰かペン入れして載せて、完結さしてみたらどうだろうと思いました。まあやらないでしょうが。
(2024/6/1)
【後報】
①水と油だったのを再確認しました。ヒラリー・クリントンの敗戦の弁を英語でソラで言えるキャラを、そうでないふうにイジリたい暗い欲求が脚本家にあってもおかしくない。元ヤンと優等生が社会に出てからやってるケンカ。当初芦原サンは語尾に三点リーダー「…」をつけて語尾を濁してるのですが、そういうふうに下手に出たからたかをくくられて修正要求も一回ではスルーされ、毎回何度もやらんならんくなり、そうすると相手は要望事項を「読むのが辛いんですけど」になるという。
手弁当でここまでやってくる相手が理解不能でしたでしょうし、報酬を削られるので頑強にクレジット削除に抵抗する相手のプライドが奈辺にあるか推し量ることもまた出来なかったでしょうと思う。あいだに入る人間が損得抜きで汗をかかず、自分の属する組織の枠を出てまで働かなかった気がするのも残念です。やったけど無力だったのかな?
②笙野がフラれる展開の解釈は、実は私は相沢見解のが正しいと思いました。原作者であっても、ひとり立ちした物語が江湖でどう受け止められているかは、すべてコントロール出来はしないというか。
③ヒンズー教徒が多いインドのベリーダンスはいかがなものかとTVにツッコミ入れたというくだりが小学館の調査報告書にあって、???でした。もともと柏を舞台にその話入れたのは原作ですし、ドラマ化の前だし。田中さんの「お父さんのいなり寿司大好き!」否「お父さんのちらし寿司大好き!」発言があったのでよく覚えています。インドで独自の発達を遂げたアラビアン舞踊も楽しんでください、みたいな話だったかと。
④「ハリージ+ドラムソロ」
これはサッパリ分かりませんでした。ハリージとダラブッカのアラビア語を組み合わせて検索すると、下記が出るので、笙野と小西と進吾が踊ればよかったのかもしれません。
⑤海外版をネットに出したら、イスラム過激派が突っ込んできそうなので、それで、原作者不在でもありますし、このままお茶を濁そう、なのかもと思いました。小学館はビッグコミックのカレーまんがでもかたくなにパキスタンのムスリムカレーを出しませんでしたし、何かあるのかもしれない。サバランのおやじはアラビア語版ペルシャ語版ウルドゥー語版等々で顔出ししてイランじゅうに知れ渡っても、どっちゅうことない気瓦斯。
⑥いったんは小学館を出て集英社に行った芦原さんを、旧知の編集者がコンタクトとってもどってきたみたいに読めて、人の縁というか、因果にも思いを馳せました。旧知の編集者だったら、「さびしいです」だけでなく、別に名誉殺人しろとか復讐するは我にありしろとかいうわけでなく、ドラマ化で起こった悲劇の再発防止のために何か動いてるような気もします。でないと自分が窒息しそうな思いに駆られて。
(2024/6/7)