『ドミトリーともきんす』読了

ドミトリーともきんす

ドミトリーともきんす

アマゾンでは分からなかったのですが、B5版でした。
AKIRAやナウシカのサイズでなぜ出すのか、と訝しみましたが、
昨日コンビニ兼本屋で今日からヒットマンのB5サイズ見たので、
なんでもありだなどうでもいいや、と思いました。かのマットグロッソが初出で、大幅に加筆修正したそうです。
そう言われても、マットグロッソは消えるし、
デジカメで接写でもしないと魚拓取れないので、
どこがどう変わったかとか分からないです。
この辺、如何に国会図書館デジタルアーカイブ保存に力を入れても、
アマゾンらデジタル出版屋が変わらなければダメなんですよね。
文化遺産に対する認識理解度が問われる。

で、ドミトリーと云い乍ら、皆ウナギの寝床みたいな個室じゃなかろうか、
カプセルホテル形式なんじゃないの、と思いながら読むと、
あとがきの前のページに見取り図があり、ちゃんとドミトリーだと分かりました。

四人の自然ナントカ学の人が出てきます。
やはりというか、湯川秀樹が出てくると、もうこの人の随筆力が凄まじく、
ほかは全部飛ばされてしまいます。
私から見ると湯川秀樹という人は書香の家に育った典型的な京都人で、
貝塚茂樹小川環樹という漢籍漢学に進んだきょうだいを持っていて、
理系文系を超越した、普遍は是普遍の眞なり、みたいな人だと思ってまして、
いま念のため検索したら、父親と長兄もまた理系の学者であり、
しかも素読を教えた祖父は英字新聞を購読していたというから、
これはもうやんぬるかなやんぬるかなだ、おえん、と思いました。
物理学もエッセーも、この人にとっては同じ糸でぴんとはられている、
連続した存在なのだ。という感じ。
中谷宇吉郎もアラスカの氷河が積ん読のままなのですが、
昭和新山にまつわる話が実に力強く、胸を打たれました。

高野文子の新作なのだから読者の期待するハードルは高くて当然なのですが、
湯川秀樹のようなド直球の天才が出てスバンとミットに収まってしまうと、
別にあきらめたわけじゃないけどそこで試合終了だよ、という感じです。以上