『ブンミおじさんの森』(原題 ลุงบุญมีระลึกชาติ)(英語タイトル Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives)劇場鑑賞


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2010年第63回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞

『世紀の光』とこれしか見てないんですが、『世紀の光』が、
シャープな現代の撮影技術なのに対し、これは関連上映の『東北タイの子』みたいな、
むかしのぼやっとした撮影技術を使っているのだと思いました。
4ドアセダンの窓がパワーウインドウ*1でなかったり、テレビがブラウン管テレビだったり、
そういう古式ゆかしいところも、カンヌで賞獲りに行って、獲れたからこそ、
よかったですねと言える演出なのかと思いました。

自動車が左側通行とかは、忘れてました。

でも自宅で透析受けれるんですね。幽霊でもキット操作出来る。

僧衣の着脱とか、上座部仏教の葬儀、数日仏門に入ってまた還俗する上座部の慣習。
こういう、外国の風俗を分かりやすく映像で説明するのも、カンヌ狙い。
死ぬまでエッチ、老いらくの恋、エロ、を適度に混ぜ込むのは、
いちばん大事な、カンヌ狙いの戦術。審査員がみんなそんなのなのを見越しておく。

そういうところを除くと、この映画でも、私は、台湾映画との共通性を感じました。
台湾映画でも、輪廻とはあまり関係ありませんが、幽霊は頻繁に出るので。

この監督は、恐怖映画のロジック、人を驚かせる演出方法を、
会得してると思いました。諸星大二郎みたいなものか。
ハッとさせるのがうまい。途中、ブレアウィッチになっちゃったよ、
と思ったのですが、ちゃんと帰って来た。

そういう緻密さもありつつ、未来の場面が、単なるスタッフの休憩写真だったりと、
ところどころ、この人破滅願望もあるのかしらん、と訝しみました。
タマリンドの剪定も、ハシゴ使わず、下のほうの枝だけでお茶濁してるし。

政治的に偉そうにこの映画を語るなら、経済好況下における開発独裁への漠然とした不安、
でしょうか。それもまた台湾と共通する課題かな〜、台湾は民主化しましたが。
不満はないけど不安。

『世紀の光』で書くの忘れましたが、タイは、トランスジェンダー
セクマイに寛容な文化風土なので、『世紀の光』は、誰がヘテロで誰がホモか、
分からないまま手探りで観るという感じでしたが、この映画にその心配は無用でした。

ラオスも多様な性を受け容れる邦かどうかは、私は知りません。インドシナ三国でただひとつ、
アメリカ大使館が撤退しなかった、つまり駆逐しなかった、寛容な国がラオスです。
言語的にはタイ語とあんまり変わらず、東京弁と京都弁くらいの差異しかないとか。
(この映画ではタイ人から、訛りがひどいと揶揄されてましたが)
だいたい、共産主義者の軍隊がパテト・ラオ、ラオス愛国戦線て、どういうことよ。
インターナショナルじゃないんかい、みたいな。

あと、『東北タイの子』見た時、意味は忘れましたが、「パイレーオ」とか、
「サーウ」とか登場人物が大仰に喋るたびに、耳に残ってるその響きが、
懐かしく感じられました。『世紀の光』はそれがなくて、で、この映画は、
オバサンが犬に話しかける場面だけ分かりましたwww
「キーン○○」キーンは食べるで、文頭に来てるから命令形で、
食べ物の名前の○○は聞き取れませんでした。○○食べなさい。
「アローイマイ?」アローイはおいしい。マイは疑問文に付ける言葉で、
おいしいかい?タイ料理店でまかない食べるときに、
タイ人のコックさんやホールのおばさんからよく聞かれました。なつかしい。

カンヌ獲れなかったら、みんなどういう評価してたんだろ。
それも知りたい気がします。以上