『ワイン通の復讐 美酒にまつわるミステリー選集』"Murder by the Glass" An anthology of stories edited by Peter Haining 読了

図書館でワインで検索して出て来た本。いつか読むリストに入れっぱなしにしてましたが、なんとなく読むことにして、借りました。字が大きくて、読みやすいです。1ページあたり、廿字×17行。

f:id:stantsiya_iriya:20210106163351j:plain
f:id:stantsiya_iriya:20210106163357j:plain

図書館本のカルマとして、背焼けしていますが、写真にうまく写りませんでした。なかなかシャレオツな表紙。装丁者未記載がかわいそう。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/513ZJ4K9RCL._SX322_BO1,204,203,200_.jpg表紙に書いてある翻訳者は、元TBSでフリーになってからニュースステーションのアナウンサーをやった人とは同姓同名なだけのようで、奥付を見ると、堀たほ子という人が主宰する翻訳グループ「葦の会」(フリーの翻訳者の集まりで、記載時点のメンバー18名)が分担して訳出に当たったそうです。非常によく知られた作品も多く収められており、まったく新訳したとも思えず、なんだかなあと。各話前段に編者の前口上が書かれてるのですが、そもそも版権のページの英文にしか編者名が書かれていないので、前口上をいきなり読むと、誰の文章だよこれと、戸惑います。

株式会社 心交社 [TOPページ] - 株式会社心交社

心交社 - Wikipedia

出版社を見ると、かつてはジュニアアイドル写真集、いまはBLが主戦場の出版社のようで、黄文雄『厚黒学』なんかも出しているのですが、ようするにそういうことなので、装幀者が書いてないとか、翻訳にあたって従来の訳をどこまで参考にしたかとか、誰が編集したかとかどうでもいいように見えることとか、すべて、考えるな、感じるんだ、でいいんだろうと思います。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51ZW14JQCWL._SX296_BO1,204,203,200_.jpgPeter Haining (author) - Wikipedia

https://www.fantasticfiction.com/h/peter-haining/

https://www.fantasticfiction.com/h/peter-haining/murder-by-glass.htm

原書の著者一覧が分かるサイトは見つけられず、上のように、一部の代表的な作家を並べた煽りが分かるだけです。しかし、ふしぎなことに、そこに出てくる、キングスレイ・エイミス、ドロシー・L・セイヤーズ、ルース・レンデルの作品は、邦訳には収録されていません。まったく何がなにやら。

ワイン通の復讐 : 美酒にまつわるミステリー選集 (心交社): 1998|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

<以下各作品>

ワイン通の復讐ロアルド・ダール

"Taste" by Roald Dahl (1945)

一般的には、『味』というタイトルで知られてる作品で酢。訳したのは渡辺眞理という人。とりあえず復讐の話ではないので、この時、なんでこんな邦題にしたのか不思議。

Taste (short story) - Wikipedia

アモンティリャードの樽エドガー・アラン・ポー

"The Cask of Amontillado" by Edgar Allan Poe (1846)

これも知られた作品。訳したのは堀たほ子。

The Cask of Amontillado - Wikipedia

マーマレード・ワイン』ジョーン・エイケン

"Marmalade Wine" by Joan Aiken (1971)

磯部和子という人の訳。ネタバレで云うと、要するにミザ以下略。導入の雉は、ブレアウィッチっぽい効果でした。

宴の前にサマセット・モーム

"Before the Party" by W. Somerset Maugham (1926)

 山上龍子という人の訳で、こんな、がきデカみたいな名前の翻訳者がほんとにいるのかと思いました。

 『所得税の謎』マイケル・ギルバート

"The Income Tax Mystery" by Michael Francis Gilbert (1958)

江川仲子という人の訳。そんなに儲かるとも思えませんが、どうでしょう。

アブサンのボトルをめぐって』W・C・モロー

"Over an Absinthe Bottle" by W. C. Morrow (1893)

市岡隆という人の訳。其の十年ほど前にも、ミステリマガジンに山本やよい訳が載ってたとか。

 『未亡人に乾杯』クリスチアナ・ブランド

"To the Widow" by Christianna Brand (1984

本田紀久子という人の訳。セラピーとか催眠術とか、そんなの。學のない精神科医が、ルノアールをレンワーと読むのですが、英語だとそうなるのでしょうか。未亡人に、英語でないルビが振られてるのですが、本を返してしまったので、もうなんと書いてあったか分からない(もう一度借りれば分かる)⇒思い出しました。ウーヴ・クリコでした。

ヴーヴ・クリコ - Wikipedia

失踪』E・C・ベントリー

"The Unknown Peer" by E.C.Bentley (1938)

古久保美恵子という人の訳。1985年にもミステリーマガジンに訳されているとか。

ハイボールの罠』クレイグ・ライス

"Wry Highball" by Craig Rice (1959)

竹澤千恵子という人の訳。出た、という感じ。マローンもの。このアンソロジーにはビールは登場せず、これがかろうじて庶民的なお酒といえると思います。モローの話もジンでなくアブサンなので、よけいこのハイボールが光るという。

競売前夜ジョルジュ・シムノン

"Vente a la bougie" by Georges Simenon (1955) 

真璃子という人の訳。メグレ警部もの。『メグレとワイン商』という長編もあるよ、と書いてあるのですが、そっちは地元の図書館にはありませんでした。

 『ワイン探偵ベリング』ローレンス・G・ブロックマン

"In Vino Veritas" by Lawrence G. Blochman (発表年不詳)

西井敏世という人の訳。『八百万の死にざま』でお馴染み、須加田さんのローレンス・ブロックの短編かと思ったら、ブロックではなく、ブロックマンでした。ということは怪盗バーニィでもない。インド人と科学者コンビのシリーズで有名な人なのかな?

In vino veritas - Wikipedia

最後の一瓶』スタンリー・エリン

"The Last Bottle in the World" by Stanley Ellin (1968)

小坂和子という人の訳。これも有名な短編。作者は、アミルスタン・ラムで有名な人。

以上