高野秀行サン『酒を主食とする人々』*1の元ねたになった本*2を書いた砂野唯サンの著書を図書館で検索して出た本。あとがきによると、2022年3月22日から9月24日まで名古屋大学博物館第28回企画特別展「世界の発酵食をフィールドワークする」展示に際して、図録でなく関連書籍を出してみようという意図で刊行された本とのこと。著者総勢14名ですが、いずれも「発酵食品の自然と文化研究会」メンバーで、この人たちはこの時点では16名いるので、2名執筆をサボッたということになります(ちがう)コロナカでの展示会だったので、何かと大変だっと思います。2021年度科研費・基盤研究(A)「アジア発酵食文化圏の再構築を目指す学際的研究」採択。京都大学東南アジア地域研究研究所・共同利用・共同研究拠点「東南アジア研究の国際共同研究拠点」令和初年度共同研究助成。あとがきで名古屋大学博物館西田佐知子サン、同宇治原紀美子サン、名古屋大学地震学研究寺川寿子サン、農文協プロダクション阿部道彦サン、阿久津若菜サン、大阪市立大学和田信之サンに謝辞。
表紙(部分)装丁:庄司誠(エビタイデザイン)右上がカンボジアの餅麹唐辛子入り(オス)P204。右下がモンゴルの馬乳酒、アイラグP189。右から二つ目上がラオスの壺酒、P195に似てるが別の写真。日本人研究者。右から二つ目したがラオスのパーチャオという淡水魚発酵食品P219。左から二つ目上はカンボジアの魚類発酵食品プロホックP89。左から二つ目下はエチオピア、コーヒー豆。コーヒー豆は発酵ではなく焙煎なので、このページの間違い探しクイズがあったらこれが正解の悪寒P54。⇒悪寒が当たって、珈琲も製造過程で発酵があるそうです。なので、「この中に発酵でない食品が一つ混ざっています。さてそれはどれでしょう」というクイズが表紙に隠されている可能性はなくなりまっした。學刈也。(20250907追記)左上はどこか東南アジアか中国西南地方の酒宴かと思われるのですが、本文に同じ写真無し。そういう意味でのクイズがあったらこれが正解。右下はラオスの、納豆をトッピングした米粉スイーツカオレーンフンP154。本書には、ここ以外にネパール、シリア北部のアラビア人やクルド人の写真が収められているのですが、表紙には使われていません。何故かな。一説には、アラビア人の写真の肖像権は許諾がとってもゴイスーというか、無許可を探し当てられて部族の慣習法で復讐されたらかなんとでも思ったのかもしれません。川口もあんまり写真出ないですよね。下記の展示会なんか、50年前の写真なのに、一枚一枚法的な肖像権保持者を探しまくって、おkなのだけ展示して、誰が継承してるのやら子孫不明でござるはボカしてた気瓦斯。
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下は展示会の模様。以下後報します。残念閔子騫。
【後報】
考えたら、表紙の写真は、素材を装幀家に渡して、てきとうにセレクトチョイスしてもらった可能性が高いですので、本文にない写真があったり、アラブ周辺西アジア周辺、人類のほぼすべての農耕と牧畜の起源が集中する西アジアの写真がないことも、深い理由はないのかもしれません。「映え」とバランスだけが問題だったのかも。


カバー折の内容紹介と、中表紙。
本書は副題がないので、そこはシンプルでいいと思ってます。正題が長いので、副題迄付けたら大変。「発酵食品の自然と文化研究会」著とせず、個人名で編著にしたのは、その会にまだ知名度がないからと思います。いずれ変わるのかどうなるのか(後述しますが、いろいろ読んでご多幸を祈念しなくもなく)各人のプロフィールのところに、好きな発酵食品を書くしばりがあったようで、海外と国内とで一品ずつ、合計三品ほど、計算が合いませんがみなさん書いておられます。一番多い品目が、東南アジア、それもタイ、ラオスがフィールドの人が多いからそうなるのかもしれませんが、発酵豚肉、タイではネーム、ラオスではソムムーと呼ばれるもので、四人がそれを挙げています。ただこの料理は、発酵度合いがあまいと生の豚肉ということになってしまい、寄生虫のリスクが高まるので、ラオス日本人会などでは屋台で絶対買わないでと医師が警告を発していたかと思います。
今はなきさがみ野のラオス料理店のネームクック。これは2022年4月の写真。「うちはちゃんとやってるけど、現地だと危ないですね」という息子さんの声を信じて、よくここで食べてました。ここは所謂インドシナ難民の定住者だった。神奈川はインドシナ難民のオールドカマーと、研修生のニューカマーが、ベトナムとカンボジアではそれぞれいますが、ラオスは前者だけな気瓦斯。
東京の東側で2025年6月に食べたネームクルック。正式名称がクルックであることを初めて知りました。カシュカシュした味で、慣れ親しんだ味ではないかった。私は、都内屈指のデートスポット目黒寄生虫館もまだ行ったことがなく、近くまで行くと邦楽が分からなくなる、否、方角が分からなくなるのですが、最近読んだダーチャ・マライーニサン*3も名古屋の反枢軸思想の持ち主の子どもとして収容所生活を送った際はおなかは寄生虫だらけだったそうで、戦後も長く学校では蟯虫検査と虫下しのチョコレート配布世帯単位があったわけですが、今は板前や料理人向けの蟯虫検査もほとんど保健所で行わなくなったそうで、それだとタイやラオスの発酵豚肉食べてても、検査受けてるから大丈夫とは言えなくなってる世の中なんだなと思います。
私は中国でどうしても生野菜や野菜のおしたしが食べたかったので、ちょくちょく市場で天秤棒で量り売りしてる野菜を買って自分で調理してましたので、帰国後保健所に行って検査して、陰性でした。もうそういうことも出来ないんですね。學刈也。
(a) 最初はインジェラとエンセーテ。著者は砂野サンではないです。『ほろ酔いの村』の著者の篠原徹サンでもない。また別のひと。①中村安希サン『食べる。』*4によると、邦人バックパッカーのあいだでインジェラは「ゲロ雑巾」とあだ名されるくらい好き嫌いがあって、そのインパクトはその本の集英社文庫のカバー裏煽り文句にまで明記されるほどです。しかし内容的には、中村サンは結局リピーターになるほどインジェラのことが忘れられなくなり、それとは別に、そのエッセーは南京虫の恐怖に満ち溢れたものになっていて、私の胸を打ちました。2014年文庫化なので、まだ「トコジラミ」への言い換えは浸透しておらず、南京虫です。高野秀行サンもクレイジージャーニーの最中さんざん南京虫には悩まされてる。スタッフは皆ホテルに泊まったのに、現地の家屋で寝ずんばナントカにあらずとやせがまんしたせいで… ホテルに泊まっても虫を回避出来たかどうかは知りません。誰かが持ち込んだら駆除は難航しそうなので。②邦人は「ゲロ雑巾」扱いなのに、世界の食通からは「食べられるテーブルクロス」(『食べる世界地図』ミーナ・ホランド)「万能のパンケーキ」(『パンケーキの歴史物語』ケン・アルバーラ)「アフリカでもっとも洗練された食べ物」(松本仁一『カラシニコフ』否『アフリカを食べる』)と評されるそうで、米国では大変高い評価を得ていて、首都ワシントンだけで数十軒エチオピアレストランがあり、いずれもインジェラがメインだそうです。東京でも四つ木のほかに、検索すると東急線絡みで二軒ほどエチオピアレストランが出るのですが、インジェラはそれほど気軽に食べられる料理ではないのか、予約要みたいな感じでした。まあ鶴見でボリビアのクニャペを食べようとしても予約前提ですし、外食業は仕込みとその無駄がほんと悩みのタネなので、そういうものだと思います。中村サンはオランダのアムステルダムでインジェラに再会してますが、それはテフという独自穀物で作ったものでなく小麦製だったとか。③高野秀行サンは彼自身によるとインジェラアレルギーがあるらしく、『酒を主食とする人々』の初めの方で、在日エチオピア人のたまり場になっている東京の東の方のスナックでTVクルーにインジェラを振舞い、自分でもバクバク食べて案の定猛烈なナントカになって病院に担ぎ込まれたとか。未知の食べ物に対しチャンと遺伝子がアレルギーを用意してくれているという話は私にも覚えがあり、畑の隅に植えたルッコラの葉っぱを誰も食べないので毎日ドンブリ一杯シシリアンドレッシングで食べていたら、閾値を超えたらしく、食べると口内が痺れて味覚が麻痺するようになりました。話を戻すと、高野サンが食べたのはホントのテフ製インジェラで、アムスにあるような小麦製ではないということになります。④この項の著者藤本武サンによると、邦人のエチオピア研究者の中でもインジェラは好き嫌いがはっきり分かれていて、食べない人は食べないそうです。砂野サンはどっちでしょうという。むかし、アムドでシャーマンの神降ろしの儀礼を取材に来た民俗学者のしとが、四川料理飽きた広東料理食わせろとダダをこねていましたが、それとはたぶんレイヤーがちがうと思う。中村サンは毎日食べたらインジェラが気になる存在になってきましたが、私はトルファンクチャカシュガルと毎日ラグマン食べてたらラグマンを見るのもイヤになりました。
⑤エンセーテは穀物食品の名前でなく作物の名前で、ニセバナナとも呼ばれる植物で、その根茎をエチオピアのひとだけが食用にするんだとか。まあ、標高二千メートルナイト生えない高山植物らしいので、何処でも食べるようにはそりゃなってないねと。インジェラが穀物「テフ」で作った発酵クレープで、エンセーテから作った発酵パンには「コチョ」「キッタ」などがあるそうです。さらに藤本サンはエチオピアの発酵パン文化について(小麦で作っても発酵)も紹介してますが、発酵パンは欧州にもふつうにあるというのは、「あるブスの少女ブッブーッアルプスのしょうじょハイジ」にも出てくる黑パン白パンですぐ分かるかと。ロシアで黒パン初めて見た時には驚きました。シベリア鉄道の座席、シートをパカッと開けると中がビッシリ黒パン格納庫で… 紅茶キノコもクワスも簡単に出っくわして、おどろいたといえばおどろいた。気分はノンナ・ペトロワ。
(b) 次が砂野サンのエチオピアコンソ、デラシャ、ネパールのネワール。「酒を主食とする人々」です。森永由紀という人が後ろの方でモンゴルの馬乳酒、アイラグについて書いていて、そこでも、アイラグがとれる夏場はアイラグだけで食事はいらないという人が産地にはいるそうです。本書の発酵食品の中で酒が出てくる箇所は、すべて「酒を主食とする人々」が絡んでいる。これに関しての私の推論兼結論は高野サンの本にも書きましたが、①酒害は近代の病で、酒がマスプロ生産されるようになってから大衆化した。②前近代ではヒトの寿命は短く、酒に追いつかれる前にほかの要因で命を落とす人の方が多かった。尾張徳川家旗本直参(と言っていいのか)朝日文左衛門サンが元禄時代に書いた『鸚鵡籠中記』など、その抄訳の中公新書『元禄御畳奉行の日記』で読むと、黄疸が出て目が真っ黄色な完全なアルコール依存症者ですが、泰平の御代の旗本サムライでもなければ、なかなかそこまで酒におぼれるような生活は、おぼつかなかったかと。すごいですよ、五十代になって親に十代のヨメをゲットしてもらったり(心を入れ替えてもらうための老親の骨折り(;´д`)トホホ)、子供部屋侍の面目躍如。
(c) 次は、人類が細菌を如何に手なづけ、飼いならしてきたかのドメスティケーションの歴史を遺伝子情報とか塩基配列から読み解くロンブン。中川智行という著者。清酒の酵母は野生のそれを強化したものかと思いきや、ホンマに純粋培養のもやしっ子で、外部からのストレスに弱いとか、ラガー酵母は中世までの欧州エール酵母に、大航海時代パタゴニアからもたらされた遺伝子がミックス、フュージョンされて奇跡の進化を遂げたものだった、とかのウンチク。
(d) 次はシリアに取材した、人類の牧畜農耕発祥の地の酪農なう。まー当たり前ですが写真は男性のみ。その家庭の女性側、インサイドは女性しか入り込めないし、入り込んで得たものは持ち出せない。それはルール。
しかし上記はタリバン憎しで言ってるでまかせ。嘘八百。上のはてブにも書きましたが、ここにも書いておきます。故中村哲医師曰く「男性親族の付き添いがいれば、女性だって男性医師の診察が受けられます。当たり前ですよ、女性の患者や家族を見殺しにするわけないじゃないですか。どうしてそんな出鱈目がまかり通っているのか」私が死亡直前の川崎市中原区の講演で聞いた話です。学校に行かせない話と、診察を受けさせない話のあいだには、本当の話と嘘八百のデマという深い差分がある。が、タリバン憎しの人間はそこを分けない。しょせん宗教はアヘンでだから宗教はキライ、な人たちなのかも。
(d) 次はカンボジア北部取材記。右の町田のカンボジアレストランのメニューにもある「プロホック」(メニューではプラホック)がクメール人の代表的な魚類発酵食品なのですが、カンボジアも北部に行くとラオスのラオ人が結構住んでいて、ラオスの魚類発酵食品「パデーク」のほうがおいしいので、順次入れ替わりが進んでいる、というすごいトピック。
プラホック 魚の味噌!
プラホックこそカンボジアの味!
日本で食べられるのはここだけかも?
ちょっと癖のある味ですがカンボジアに行ったつもりで挑戦!
陸続きっておもしろいですよね。国境はあるんだけど、どっち側にもどっちの民族も住んでいる。クメール人は基本的に富山の散居と同じ散居なので一戸ごとにバラバラに間隔を開けて家を作るけど、ベトナム人は道路沿いに長屋みたいに家をくっつけて建てる。だから混住地域も、世帯ごとにすみ分けを見破るのはそれほど難しくない、とはベトナムのカンボジア人、クメール・クロムの本*5で読んだことです。通婚してたら、そこは個人単位で分けるのかもしれませんが、なかなかそれは難しそう。で、ラオ人の住居はどうなのか知りません。関係ないけど、富山も魚介類すぐこぶ巻にして発酵というか旨みを移しますし、バタバタ茶なんていう発酵茶もありますね。へしこは福井で、北九州のいわしの糠炊きとどう味がちがうか食べ比べをしたいなあ、なんて、3.11の前は思ってたこともありました。もうだいぶ私は老いた。今ならそれは動画の企画なのかもしれない。
ラオスのパデークは今は亡きさがみ野のラオス料理店ではそのものズバリは食べたことがなく、中央線沿線に点在するラオス料理店のメニューを検索すると、ケーンノーマイに使われてるとありました。ケーンノーマイなら食べたことあります。
中央線沿線のメニュー。
2022年4月のケーンノーマイ。
2021年5月のケーンノーマイと、カオチーという、もち米を薄焼き卵でくるんだものとデザートのライチー。ややこしいですが、ラオ語では、仏印全土に広まったバゲットサンドもカオチーというそうで、ややこしい。パデークはよほどオイシイらしく、プロホックのクメール人だけでなく、モン族や漢族にも広まったソウデス。(e) 次は近代以前の「農村食」が近代以降どう変わるかの考察。手造りの時代から、マスプロ生産工業製品を通貨にて購入の時代へ。大量の商品作物を安定した価格で消費者に供給し続けるため、農民自らの食生活が、「タムパ」理由でインスタント化してしまうという呪いは、「食の安全」などというお題目では解けないところまで踏み込んだ解釈が出来てないのは残念閔子騫です。
(f) 次は、ダシとしての発酵食品に踏み込む都合上、そもそもダシって? というところから、「うまみ調味料」の世界へ。
頁108
例えば、ナンプラーは今やタイの定番の調味料として知られているが、実はその歴史は新しく、20世紀前半に中国からの移住者による生産・販売をきっかけに、タイ湾に面した中部のチョンブリー県からタイ全土に広がった(石毛直道とケネス・ラドル共同執筆論文、1987年国立民族学博物館研究報告12収録)
ベトナム戦争の時はベトナム語のニョクマム、ヌクマムの方が知られていたのに、今はベトナムレストランでも「ナンプラー」とカタカナを魚醤の瓶に貼ってしまう時代。いかに戦争が文化の発達を阻害するかのいい例、というのは前にも日記に書きました。しかしそこまでナンプラーの歴史が浅いとは。でも日本でも海岸部以外で、いつからカツオだしコンブだし煮干し入りの味噌汁作り始めたかっていうと、かなり新しいだろうし。(g) 次はラオスに取材したパデークの話。本書はこのようにパデークが二回も出ます。そんなにうまいのか。パーデークの英語版ウィキペディアを見ると、ヴィエンチャンのコンビニのプラボトルのパデーク写真が載ってます。
パデークの関連項目にカンボジアのプラホックはないです。どちらの民族もウィキペディアの編集に熱心じゃないしな。ビルマ人も熱心じゃないですが、ビルマのガピはある。
(h) 次はアジア納豆。かなり高野秀行サンのアジア納豆の本とカブッてます。高野サンの方には、インドネシアのテンペは納豆菌じゃないので納豆には含めない、などシロウト向けの基礎知識を入れてるのですが、こっちはそこまでじゃないです。もともと納豆はダシとして日本でも使われていた、とは本書でも書かれてるのですが、高野サンは文献を渉猟して、江戸時代は実は関西大阪のほうが汁物のダシとして納豆を使っており、大阪人は納豆汁の味に慣れ親しんでいた、という大阪人にはおよそ受け入れがたい歴史の真実をつきつけており、ふつうのルポとエンタメノンフのちがいはこのあたりにあるんだよと思わされます。
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高野サンはこの後アフリカ納豆に行き、アフリカ納豆が盛んな国は政情不安でなかなか近寄れない(少なくとも大出版社の企画としては、万一の際企画ゴーサインの責任を恐れてオーケーが出せないし、オーケーが出ないと取材費用もない)わけで、アジア納豆に関しては国内でも探すのはそれほど難しくなく、私もラオス料理店でラオス納豆トナオを、ネパール料理店でネパール納豆キネマを見せてもらって味見もしたことあります。ナイジェリア納豆の入ったスープも食べさせてもらったと思う。
キネマの天地。
トナオのだしの入ったカオソーイ。
"OGBOLO SOUP"と"FUFU"とフィンガーボウルと水。2022年2月。ナイジェリア料理店。
頁154のコラムに、ラオスのカオソーイは納豆が入っていて、カオレーンフンという米粉のスイーツは納豆がトッピングとあります。表紙写真の左下。この米粉のスイーツ、最近インドネシア料理屋で食べたパダン風サテーの下の具に似てると思いました。
拡大。2025年8月。つい先週。
そこから納豆菌のコラムが入って、(i) 噛み茶、発酵したお茶の塩味をガムみたいに口淋しい時くちゃくちゃ噛む文化の紹介になります。執筆者は佐々木綾子サンという人。お茶を食べるというとビルマのラッペットゥがすぐ思いつきますが、この章の本題は食べるお茶でなく噛むお茶。お隣のタイ北部で取材してます。
ラッペットゥ。本書ではラペッソー。2025年2月。日本で食べるとさりげなくキャベツの千切りでカサ増しされてますが、ビルマではキャベツじゃないと思う。カサ増しするにしても。
別の店。2021年3月。安田菜津紀サンの難民の食卓とかいう本で、ロヒンギャをミャンマー難民と同列に扱ってるのはおかしい、ロヒンギャは不法入国者だと安田さんが取材した店なのに訴えてたのも今ではなつかしい。
2021年7月。
2021年10月。
この噛み茶というのは、なんしかキンマとかぶってる気がします。ビンロウで口を真っ赤にしてたら、お茶なんか噛まないんじゃいかと思う。本書にはその辺の競合は書いてまへん。


そのかわし、ここは本書の特筆すべき点が盛り込まれていて、本書は基本的に民族名は「○○人」で、「○○族」とは書いてないのですが、それを中国国内の少数民族にも踏み込んで使っていて、布朗族を「プーラン人」と書いてます。ヤッタネ! これはスマッシュヒット。カンボジアにおけるパデークとプラホックの覇権争いの箇所では、クルン人の箇所で「華人」の表記も見えます。
(j) 次はモンゴルの馬乳酒。なぜかモンゴル語のアイラグでなく、トルコ語のクミスで日本では広まってるとあり、中国語でチェゲーと呼ばれるとあるので、どういう漢字を書くのか検索しました。
したら、ウィキペディアではツェゲーはモンゴル語とあり、まあ楊海英サン言うところの南モンゴル(自治区)は中国領ですから、中国の56の民族すべての言語が(漢語含めて)中国語という前提なら、モンゴル語も中国語ということが出来る、なんだろうなと思いました。上の馬乳酒の日本語ウィキペディアは、朝青龍が登場するので、かなり面白いです。日本に取り寄せて体に塗ったりチャンコにいれて弟弟子に食べさせたりとか、ヤリホーダイ。
で、ちなみに、中文版のウィキペディアを開いてみたら、どの民族も「~族」となんか書いてなくて、「~人」表記で統一されており、胸がすっとしました。『朱のチーリン』作者の向井沙子サンも見習ったらいいと思う。カザフ人、バシキール人、カルムイク人、キルギス人、モンゴル人、ヤクート人、漢人、みんな「~人」表記。すばらしい。
ちなみに、ブリヤート・モンゴル人も出るのですが、そこは慎重に記述していて、日本語の得意技、必殺主語抜き文法で、ブリヤートから内モンゴルに移住して、さらにまたブリヤートに戻った家族がいる、という書き方をしています。宗像教授ブレーンのトールハンマーを恐れたか。
(k) 次は餅麹の話。なぜ新大陸の唐辛子が旧大陸の発酵食品に使われるようになったか、について、それまでもいろいろ胡椒など香辛料は発酵食品に使われていたから、新参者の唐辛子もそこにプラスされただけなんでは? という仮説を組み立てています。ここに中尾佐助サンの著書名が見え、読んだと思ってたのですが、検索で感想が出ないので、もう一回読んでみます。
このように本書はエチオピアの酒だけでなく、発酵食品界あちこちに広がってゆくおもしろい本だったのですが、「~族」と書かず「~人」と書くなど、スジの通った姿勢も見せ、しかしそうなると、これまでの仲良しサークル的なところに、中国人学者が入会を申し込んで、人たらしをしながら攪乱を始めるなど、「政治」が絡んだら大変ネ💛などとも思いました。
なんとなく思い浮かんだ、コマッタネ的な中国人学者の著書。堆肥は発酵肥料だが、スカトロとは無関係に発酵食でないので、このテーマでは入会出来ないと思いますが、世の中分からない。原水協と原水禁、日本学術会議と日本会議のように、分派やよく似た名前の別団体立ち上げなど、世の中なんでもありですので(法が弱い)たとえば代々木上原はあんだけデカいモスクがあるのにハラルレストラン銀座にはなっておらず、まったく逆のチベット仏教圏のブータン料理店があったりしますが、その店の向かいに、やはりブータン料理店を名乗る店が堂々開店、メインも同じダツィ、エマダツィという唐辛子の発酵食品で、これわざとツブしに来てるだろ、と思ったものですが、エピゴーネンのほうだけ潰れてくれて、ヨカッタデス、というようなことも世の中にありますので、気を付けながら、がんばってけさい。
下は巻末の農文協の本の広告。




以上
(2025/9/7)