『さすがの猿飛G (1) 』(ヒーローズコミックス) 読了

さすがの猿飛G (1) (ヒーローズコミックス)

さすがの猿飛G (1) (ヒーローズコミックス)

装丁 福躍 惠(ARTEN)
編集担当 平井敦貴
初出は月刊ヒーローズ


いくつになっても恋の呪文はスキトキメキトキス!\世紀を越えてただいまっ!/僕らの肉丸&魔子ちゃんが、少し大人になって帰ってきた!!

著者の現在のもうひとつの連載まんが『バディドッグ』が面白いので、なんとなくこっちも読んでみようかくらいの気持ちで買ってみたマンガ。『バディドッグ』は、主人公がガン持ちという設定が非常に興味深かったです。ガン持ちは日常存在しますが、主人公に据え置いたまんがはまだ珍しい気がしましたので。

バディドッグ 小学館公式
https://bigcomicbros.net/comic/buddydog/
https://comics.shogakukan.co.jp/book?isbn=9784091895998
https://www.shogakukan.co.jp/books/09189694
https://www.shogakukan.co.jp/books/09189868

巻末に、PLAY BACK>>>「さすがの猿飛」という見開きがあり、1980〜1984の前作連載の豆知識が今北産業になっています。帯にテレビアニメの主題歌の歌詞が使われている点からも分かる通り、とにかくこのコンテンツはアニメだったと思います。サザエさんのすぐ後に同じ局が放送していたのですから、記憶に残らないわけがない。当時のマンガのパンチラなどもこの漫画に収められていますが、正直、主人公の顔が安定してないな〜と改めて思っただけです。紐パンを描くとか、野心的なチャレンジだったのかどうか。
アニメは放送時間帯に非常に恵まれていましたが、当時からうすうす思っていたのが、水曜夜に同時期放映していた「うる星やつら」のドタバタ演出をそのまんま取り入れていた点で、取り入れたにも関わらず、本家「うる星やつら」の押井守のハートに火をつけてしまったようで、当時一瞬だけ映る内輪ネタとか、どこまでこまかく書き込むかとか、すべての点でスタジオぴえろが本気になって暴走したので、同じセル画の使い回しで予算を補うのが関の山だった?「さすがの猿飛」は、サクラのワイハー編とか、けつねコロッケだかなんかのお銀だとか、緑色の新幹線にのったあたるが「大阪の姉ちゃんひとりじめ」を絶叫しながら東京から北へ北へと向かうラストシーンとか、とにかく当時の押井守スタジオぴえろのほとばしる才能をかたっぱしから見せ続けられるだけで、作品の出来、成功とは無縁のところであえなく二番煎じのレッテルを貼られたまま終わり、同じ作者のグーグーガンモは小学生が主人公でお色気をあまりとりいれず、うる星やつらとの競合を避けて(どっちも小学館だし)アニメとしても差異化をはかった、と思います。そして同じ作者が高校生ものから小学生ものへ移るというのは、江川達也講談社「BE FREE!」からジャンプ「たるルート」へ移ったときに、模倣したような気もします。
著者のデビュー作がクラッシャージョウであると、カバー折り返しで改めて思い出し、初期はそういう絵だったと感じ入りました。もう描けないと思います。ああいう絵は。「ギャラリーフェイク」は、アニメが人気あるらしいですが、私は見たことなく、助手のサラをクウェート人にした設定が、「欧化したアラブ女性」を描くことのアレコレ、枷を作者に与えたと思うくらいです。ギャラリーフェイクの時代、もうふたつ美術関連の漫画が走っていて、どれも人気があり、不思議なことだと思っていました。

里見桂の「ゼロ」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BC%E3%83%AD_THE_MAN_OF_THE_CREATION
小池一夫/叶精作の「オークション・ハウス」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9

あと、ギャラリーフェイクのフジタは、「〜ですぜ」が口癖の、ブラックジャックエピゴーネンのひとりなので、その点も少し残念ではあります。
このマンガには特にないのですが、ガイジンニンジャ対純国産忍者(宗家)の対抗という展開は、早晩無理がくると思いますし、前作が高校生で、今作が19歳くらいで、しかし時はバブルから21世紀に移っている点も、なんだかなあと思います。劇画オバQみたく、読者の時間にあわせて、漫画のキャラたちが成長してくれたわけではない。ジュニアたちの世代でツーものやってるわけでもない。肉丸の顔は、安定してません。ヒロインの霧賀魔子は、作者が経た時間の数が反映されてると思います。
作者のマンガで印象に残ってるのは、『うにばーしてぃboys』という連作短編で、確かスピリッツ掲載だと思うのですが、その中で、各文化系サークルが数名ずつ、自治会だかサ連だかとそのバックのセクトが企画する、三里塚反対闘争に動員を協力しなければならない、そうしないとサークル活動費や学祭にさしさわりがあるんだかないんだか、という話。そういう大学もあるんだな〜、と思いました。見栄講座の時代、80年代のノンポリが唯一セクト学生運動に関わらざるを得ない場面というものを、ちょちょいと切り取った漫画だと思います。

うにばーしてぃBOYS 小学館公式
https://www.shogakukan.co.jp/books/09192552

以上