『海神(わだつみ)の島』"Wadatsumi no Shina."(A Sea God's Island.) Ikegami Eiichi 読了

装幀 片岡忠彦 装画 mocha 取材協力 柿谷哲也 イカロス出版 読売新聞オンライン2019年4月1日~2020年4月1日連載に加筆修正 読んだのは単行本(まだ文庫化してません)で、巻末に参考文献なし

読んでなかったので読みました。『黙示録』は二段組で六百ページ越えでしたので、けっこうなんぎでしたが、こっちは段組になんてなってなくて、十二章で五百ページ弱でしたので、イケるかなと考え、だいじょうぶでした。読書にあてたぶつ切りの一時間ごとに二章くらいのペースで、三日で読み切れた。

段組 - Wikipedia

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/714QRLghq2L.jpg表紙は物語最大の見せ場、某接続水域における海流の吹き溜まりへの飽和潜水アタック。

アマゾンの煽り文句

読売新聞オンライン連載中からその一騎当千ぶりが話題をさらった、汀・泉・澪の花城三姉妹が、沖縄、東京、鹿児島、福岡、山口、台湾を縦横無尽に疾駆する! 失われた「海神の秘宝」を巡り、三姉妹の欲望と三大国の思惑が錯綜する――冠前絶後の冒険小説。
山田風太郎賞受賞作『ヒストリア』から三年、満を持して贈る受賞第一作。

なぜそこに「一騎当千」が? とか、空前絶後はよく聞くが、冠前絶後はそれとどう違うのかとか(検索しても、空前絶後と前代未聞の違いでアフィするサイトしか出ません)いろいろ不思議な煽り文句です。下のインタビューでネタバレネタバレされてますが、本書は、現代沖縄の暗部を、ひとつでも大変なのに三つもまとめて面倒見た小説。

池上永一さん『海神の島』 | 小説丸

タブー①軍用地の不在地主ゴルゴ13でも在京不在地主を取り上げた話がありましたが、主人公三姉妹は、牧港補給地区に七万九千坪の土地を所有する祖母の、年間地代収入五億二千五百万の相続を巡って、骨肉のバトルを繰り広げます。

www.google.com

牧港補給地区 - Wikipedia

頁447

(略)軍用地主という存在は戦後沖縄の暗部だ。米軍基地は沖縄に弊害をもたらすと同時に、地主たちにとっては金の卵を産む鶏であった。純白の正義を掲げる平和活動家やマスコミにとって、基地地主の存在はタブーとなった。単純化されたイデオロギーの世界では、社会的弱者であるはずの者が、貴族的な生活を送っている事実は受け入れられなかった。

あろうことか、三姉妹(のうちのふたり)は、第七章で、牧港補給地区の日米返還合意、そして軍転特措法見直しによる地代補填縮小消滅(辺野古反対県政へのカウンター)発表を受け、その政府指針をご破算にすべく蠢動し、成功させます。

頁241

 返還の跡地利用はワンパターンだ。大抵が、北谷のアメリカン・ビレッジか、那覇おもろまちそっくりになった。(後略)

今沖縄基地返還後の利用について検索したら、こういう痛いことを書かれたせいか、総合病院建設だのなんだのが出ました。ヨカッタデスネ。『気分はもう戦争』で、矢作俊彦が「公団住宅が攻めてくる」とか「埼玉の呑百姓よりミネソタのヤソキーだぜ」と言ってた団地の時代と違って、現代はショッピングタウンがお好き。

頁243には反戦運動家、平和活動家(タブー②)への登場人物たちの嫌悪感が爆発して、エラい毒舌連投が続きます。グレタサンまで出てくる。ここと、頁40に出てくる、チューリップハットにサングラスの活動家が基地のフェンスに色とりどりのリボンを巻き付けていて、リボンの中にはカミソリが仕込んであって、さわるとケガするくだりは、そういうの神奈川の私は寡聞にして見たことないので、へーと思いました。あぶないダメ。平成に過激派が座間キャンプにペットボトルロケットしかけた畑には(声明あり)今でも県警が別の口実で毎日パトロールに来ますけどね。

そのかわり、ネトウヨが、彼らの背中についてるスイッチをポチると、脊髄反射的にマウントとりもってぺらぺらしゃべってくれはる、移設反対座り込みのオジイオバアたちが、テレビインタビューで、自分らは日当幾らの雇われだと語る動画や、それに類する場面は出ません。教職員組合退職者の会のノルマで出席せんければならず、出ないと「もやい」からハブられてしまうという老女の嘆きは出ます。頁249。

言ってることは正論なので、表向きにはツッコメないが、人として嫌悪感があるという本書の叙述は、それなりに重みがあります。この、正論なので表向きにはツッコメないといううるまロジックは、日本の「空気を読んでツッコまない」と違うのならば、儒教科挙に培われた中華の影響もあるかもしれず、しかしまあ回教圏ではどこもイスラム原理主義の正論には反論出来ずがエスカレートしてますので、人類に普遍な所作なのかもしれません。

タブー③は、ある島のことで、上の小説丸ではネタバレでモロダシしてますが、産経新聞縄田一男書評ではマスクしてましたし、本書も途中までは、どこの島かで、福岡県も巻き込んでてんやわんやしてますので、ここでも書きません。

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ヒント①:文革江青がねじろにしていた、西直門だか動物園だかのあたりの、国賓レベル?をもてなすのにつかうんだかなんだかのホテルレストランは◯◯◯賓館。

ヒント②:台湾も領有を主張している。

上のアマゾン煽りで「三大国の思惑が錯綜」とあるうち、アメリカと中国はすぐ分かるのですが、もうひとつは日本のようであり、第四勢力として台湾が登場すると考えてもよく、かつまた、三大国の残りのひとつを台湾と考えてもよいような展開となります。と書いた後で帯を見たら、「日米中の思惑」と書いてあったので、台湾は第四の勢力と考えてそれでよいかと。池上さんの歴史小説では琉球も独立勢力として対等に張り合うのですが、21世紀では沖縄県なので、それで台湾が出てるというと、さすがにこじつけかな。じっさい、池上永一サンの筆は、台湾にも平等に是々非々で、

頁452

 台湾南部の離島、蘭嶼(らんしょ)に住むタオ族は、台湾本土の少数民族から人種的にもかけ離れていることで知られる。彼らはオーストロネシア人に属し、フィリピンのバタン諸島に暮らすイヴァタン族の一派だと言われている。タオ族の言語は明らかにイヴァタン族系のものであり、お互いに通訳なしで意思疎通できるほど類似している。

(中略)タオ族は人種的に台湾本土と違うという理由で迫害され、就職や進学で深刻な差別を受けている。男は学校を卒業すると、高雄港で苦力(クーリー)さながらの港湾作業員として働く。女は夜の仕事に就く。高等な仕事は大陸系の台湾人が独占している。(中略)

 そして彼らの住む蘭嶼は、台湾社会の抱える暗部だ。原発から出る放射性廃棄物施設が蘭嶼に作られ、ゴミ捨て場にされた。一般的な台湾人に蘭嶼のイメージを問えば「政治的問題」と答えるだろう。(以下略)

蘭嶼 - Wikipedia

上の文章の、以下略以降に、沖縄基地の特定の場所やタブー③への米軍枯葉剤ダイオキシン)投棄がほぼ事実として出て来るのですが、そこまで大規模な事実があったかどうか、検索しても出ませんでした。ここ、筆が走ってないでしょうか。出たのは2015年のサッカー場の記事くらい。

ryukyushimpo.jp

『黙示録』では蔡温が取り上げられ、『ヒストリア』ではなぜかゲバラ焼肉のタレが取り上げられ、じゃーあとは謝名親方か伊波普猷か、とは『黙示録』感想で書いたことですが、今回はヒトでなく、土地でした。ウガンウタキとかを取り上げてきた系譜。ユタとかノロとかの制度を取り上げてきた系譜の延長でも何か本書を定義出来るのかもしれませんが、こじつけくさくなるのでしません。ノッチとか陸(アガ)ギタラと呼ばれる海岸線の奇岩がよく出るので、オバマ大統領にかけたジョークと思いませんでした。

www.okinawastory.jp

www.okinawastory.jp

頁12、ウマチーを知らなかったので検索しました。

www.orionbeer.co.jp

頁51、「これくらいはさせていただかなかいと、私なんてすぐに西川口に飛んじゃいますから」とザギンのホステスが言う場面がありますが、NK流は性病で?壊滅し、西川口は事実上のチャイナタウンになったとの認識です。このホステスは超一流ということになっているのですが、信ぴょう性がやや薄れると思いました。

頁13、練乳を沖縄でワシミルクというとは知りませんでした。

頁113、沖縄でグァバをバンシルーと言うとは知りませんでした。こういうのを知ることが出来るのが池上小説の醍醐味のひとつですが、よくネタが尽きないものだ。

頁113

 服の買い物がてら市場でバンシルー(グァバ)を一袋買った。皮ごと食べる果実は、独特の酸味が暑気払いに効いた。マンゴーやパッションフルーツもいいが、島人が郷愁を誘われる味といえば、このバンシルーだ。泉は一口齧って、薬のような香りを頭の隅々まで巡らせた。

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熱く語る題材がある一方、例えば与那国馬は、そういえばそんなのもいたわね、的扱いです。頁145。西表島の関する記述はちょっとだけありますが、イリオモテヤマネコは一行も出ません。そういえば私は、最初に行った西表で、本島出身のオジイから、基地は雇用に必要なのに、反対するひとはどうしてかね、とまず言われていたので(見かけたナイチャーがパヨクかどうかリトマス試験紙にしたのかもしれませんが)沖縄の人の基地観は、そんなもんかと思ってました。池上サンは上京時代、パイナップルの収穫とかキビ刈り体験とかのスタディツアーに噛んでたりはしなかったでしょうか。私は噛んでません。

頁171に出て来る、下関の土井が浜・人類学ミュージアムは、行ってみたいような、そんなヒマはないような気持ちです。

土井ヶ浜遺跡・人類学ミュージアム - 下関市

頁209で、人民解放軍海軍大佐とザギンのホステスが、中国のランドパワーシーパワー両立成否について侃々諤々のやりとりをする(しない)場面があり、ランドパワーの衰退が中国の分裂を招くという説が池上説でもあるなら、だから少子高齢化も進むことだし、西北で徹底的な弾圧をしてるのかもな、と思いました。というか、あまりシーパワーを増大してほしくない主観の反映でしかないと受け取られかねないです。本書は当然金満中国の影が存分にチラついてるのですが、コロナカ前の沖縄が、クルーズ船で大量上陸爆買い三昧の中国人インバウンドに潤されている(と一部で言われていた)ことにはスルーです。主人公のひとりは、阿拉丁(アラディン)グループのジャッキー・マーという人物から五億円の融資を受けることになっていたのですが、中国当局が彼の資産を凍結したことから、資金苦に陥ります。そういうことも、あるかな。

頁261、アイドルの漢語が「愛豆」とは知りませんでした。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

本書に登場するのは〈黑爱豆〉で、"打破旅行禁令,最后登陆台湾!" (渡航禁止を破ってついに台湾上陸!)"大家哈啰~!"(みんなハロ~)だそうです。(原文は繁体字

頁264〈拍立得〉の意味が分からず(本書では「チェキ」の意味で使用)辞書では「インスタントカメラ」とあるのですが、「ポラロイド」の音訳ではないかと推測します。pailide

拍立得照相机の意味 - 中国語辞書 - Weblio日中中日辞典

台湾警察は頁265で「擧起手來!」(手を挙げろ!)と言ったり頁299「库斯科是什么?」(原文は繁体字)(クスコって何だ?)と言ったり、忙しいです。〈粉丝〉fensiは春雨でなく、ここではファンの意味なんですね。

「粉丝」に関連した中国語例文の一覧 -中国語例文検索

頁306に「台湾料理のごちそう」が出て、「菜脯蛋」が大根の切干の卵焼き、「荫鼓蚵仔(原文は繁体字)」が牡蠣と豆腐の?ドウチ―炒め、と検索して、牛肉麺は西北のそれでなく台湾の牛肉麺でそのまま理解しましたが、ここに仏跳墙、否、佛跳牆が入っていて、家庭料理の中に一個だけ高級中華が紛れてる感があるのですが、ファッティウチョンは家庭料理でもあるものでしょうか?

本書は中盤まで、わだつみの島とはどこか? や、遺産継承の条件となる秘宝とはなんぞや、で話が進む際、常に主人公の先回りをする怪人物がいて、すこぶる不気味なのですが、ネタバレで正体を明かすと、なあんだ、という… 独立行政法人になったからといって、京大の学者が、そこまでするかね、すぐアシがつくし、と思いました。先ごろの凶悪な暗殺事件も、最初は、井上日召の一人一殺とか、安重根みたいな人物なのかどうかとか、いろいろ人物像が推測されましたが、やはり人間がそこまでSDGs、サスティナブルな憎悪のモチベを持続可能なのは、宗教でしかないのかなあ、と考えました。白土三平の忍者武芸帖で、信長がもっとも手を焼いたのは一向一揆、とか、サスケで島原の乱を見学した由井正雪と丸橋忠弥が、「やはり人を動かすのは宗教か」「笑って死んでゆく、これほど強いものはない」と言っている、それ以上でない。

主人公三姉妹の両親は、軍用地主の親のもと、労せずして働くクセを身に着けてしまったタカリ根性の毒親で、途中まではカネをせびる描写が間接的にありますが、頁103に登場するやいなや瞬殺されます。

頁337

「赵大校,我想去看看钓鱼岛」

(あたし魚釣島に行きたいわ)

「我说不能不能

(できないと言ったらできない)

「なぜ? 趙大佐は誰に遠慮しているのかしら?」

「日本と中国が戦争になったらどうするんだ?」

「んもー。考えすぎですわ。あたしがチャチャッと上陸するから、趙大佐は沖で釣りでもなさっていたらよろしいのよ」

書かないつもりがタブー③を書いてしまいましたが、「島」でなく「台」じゃないのかなあとか。このように、本書の中文はしっかりしてて、下記とか、簡単なのに私には理解出来ないレベルです(比較が身についてない)

頁181

「不会,看这里的环境就知道,不比上海的夜总会差」

(いや、調度品を見ればわかりますよ。上海のナイトクラブに勝るとも劣らない)

ところが、下記の台湾テレビナマ放送の場面は語頭だけ中文で、あとが日本語になっており、ほかでもそうだったように、コロナカでネイティブが一斉帰国して、オンラインだと思うように意思疎通が出来ず、翻訳がオロソカなのかと思いましたが、この回はまだ武漢で隠蔽されてた時期ですのでそれはありえず、翻訳担当の台湾人があまりのブッとんだ内容に「アナタのアダマはコンクリデスカ」と言って逃げたのかもと思いました。

頁339

「首先(最初に)澪さんのファーストキスはいつでしたか?」

 通訳を挟んで澪が嬉々として喋る。

「幼稚園のとき、知らないおじさんがいきなり口を舐めてきましたー」

 一瞬、沈黙があり(略)

「哈哈哈。澪さんは面白いですね。プロフィールによると、サンタクロースに会ったことがあるんだって?」

「小学一年生の時、クリスマスイブの日に会いましたー」

(略)

「学校帰りに、道端でコートを着たおじさんが突然現れましたー」

「然後呢(それで)?」

「コートの下は素っ裸でびっくりしましたー」

「啊(え)? その人はサンタじゃなくて、見せ見せおじさんなのでは?」

(略)

「那个(臺灣なので繁体字のはずなのですが、ママ)(ええっと)。次の質問です。初めてのデートはどこでしたか?」

「小学二年生の時に、車のトランクの中でしたー」

「哈哈哈。可愛いね。隠れんぼしたんだ」

「誘拐されましたー」

「啊(え)? 大丈夫ですか? それって。犯罪……」

「猿轡を嵌められて、ペド野郎にビデオを撮られそうになりましたー」

 番組のディレクターは放送中断か、続行かの瀬戸際に立たされていた。(略)

「澪さんの好きなタイプの男性は?」

「死んだひとがいいですぅ」

「為什麽(ど、どうしてかな)?」

「だって生きている男の人は、みんな澪にイタズラするからですぅ」

 スタジオに不穏な空気が漂い始めた。(略)

「哈哈哈。澪さんは可愛いから、みんなが(略)学校での思い出はありますか?」

「校長先生が、澪のリコーダーを舐めているのを見ましたー」

「不会吧(ありえねー)! 遠目だったから、舐めてるように見えたんだよね?」

(略)

 さすが日本の芸能界は闇が深い、と百戦錬磨の呉宗憲もタジタジである。

「活説(ところで)(以下略)

最後の(ホントはこの後まだ「然後(それでは)」がありますが)「活説」huoshuoだけピンときませんでした。

この三女はグラドルを未成年飲酒画像流出で転落し、暴露系バラドルで復活するも名指し枕営業指摘で再度業界から抹殺され、ほそぼそと地下アイドルで生きている人物です。(作者の好みなのか、本書にユーチューバーはユの字も出ない)長女がモンスター級の夜の蝶(飛び級舞妓出世から金主を掴んでザギンに転出、業界イチの店をもつ)、次女が海洋考古学の俊英なのに比べ、運動神経抜群なのにアイドルとしてマイナスだからと隠していたり、食べ物にはすべてコンデンスミルクをかけて食べないと気が済まないが、それは、コンデンスミルクをかけないと食べ物をうばわれる幼少期の生活からついた性癖だった、とか、いろいろ池上作品のスーパー主人公の系譜に連ならないキャラです。カジマヤーの主人公も凡庸といえば凡庸でしたが、そういうキャラを置きたくなったのかもしれない。いつもいっつも、宮崎アニメから出てきたようなスーパー能力キャラばっかりだと、イカンゴレンと思ったのか。

頁118

 なぜか澪は性的な被害に遭うことが多い。電車に乗れば必ず痴漢に触られるし、道を歩いているだけで複数の男から後を尾けられる。テレビ局のプロデューサーから仕事の話がしたいと言われて、向かった先がホテルだったこともある。ひとりで飲みに行ったバーで、バーテンダー睡眠薬を混入されたことが数回あった。露出狂のおじさんに狙われ続けた腹いせに、スマホでおじさんの写真を撮ろうとして「盗撮するな!」と説教されたこともある。

 これは隙だらけでボヤンとした性格もあるだろうが、澪の愛情に飢えている気質がそうさせている面がある。

不肖アラマタや古井由吉を読んだ直後でしたので、口直しに21世紀的MeToo観が読めて大変助かりました。関係ないですが、長女の名前が「汀(なぎさ)」で、普通なぎさというと「渚」を思いつくので、「汀」と出るたびに、「みぎわ」と読みそうになってました。パン。

三姉妹は上から「エロ」「処女」「ロリ」と罵り合う関係なのですが、まず三女が「ヨゴレ」のほうが合ってると思ってしまい、そうすると次女が、なでしこリーグの「オトコ禁止」の「オト子」でいいじゃんと思い、しかしそうすると、長女に似合うあだ名が思いつきませんでした。本書は基地返還運動に対し溜まっていた感情が暴発した帳尻なのか、ラスト、延期したTOKYO2020のドローン情報を事前に掴んでいたのか雷電、みたいな展開になりますし、尖閣沖には実はたえず日本の潜水艦が待機してるとか(原潜でないのでそんな長期は難しそう)おもしろかったですが、三女を持ち上げたところに、なんというか、この作家さんの現在地があるのかなと思いました。

海神の島 -池上永一 著|単行本|中央公論新社

以上