『 スイート・ホーム殺人事件』 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 読了

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スイート・ホーム殺人事件 (ハヤカワ・ミステリ文庫 28-1)

スイート・ホーム殺人事件 (ハヤカワ・ミステリ文庫 28-1)

スイート・ホーム殺人事件〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

スイート・ホーム殺人事件〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

Home Sweet Homicide Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Home_Sweet_Homicide
クレイグ・ライスの小説をもう少し読んでみようと考えて、読んだ小説。作者とその子どもたちがモデルだとか。読んだのは長谷川修二訳の旧訳版。装幀/H・O・T  イラスト/杉田比呂美 「ご前さま」始め、今ではとても話せない古語の日本語、丁寧語の多い日本語で書かれていて、美しいです。それを子どもたち、ませた女の子が話すところがよいのだろうと。「おじゃがをかける」とか、じゃがいもを火にかけると言っているわけですが、もう口から出てこないです、こんな言い方。21世紀なので。
解説は小泉喜美子。大絶賛しつつも、やはり邦訳時既に彼女が故人となっていて、その壮絶な人生について触れつつ、その彼女がこうしたユーモア推理小説の名手であることとは矛盾しない点を、どう書いたもんだかという感じで、やはり書けなかったように思います。

解説
 クレイグ・ライス。
 この名前は私にとってあこがれの象徴であります。何十年ものあいだ、私は彼女のようになりたいと思ってきました。
(中略)
 いえ、いくら私が彼女にあこがれていると言ったって、べつだん私はレズビアンなかじゃない。女なんか、私は大っきらいなのだ。
 大体、女というのは、てめえ一人だけの狭苦しい台所お茶の間身辺雑記とか人生苦斗深刻悲劇美談ばかりありがたがる傾向がある。あるいは、他人の書いたものの重箱の隅をセセるアラさがしなんかをひたすらべたべたと書きつづり、それでもって自分も文学のキビしき世界に参加したみたいな気分になって悦に入るようなところがある。ああ、ヤだ。(もっとも、これは女だけとは限らないらしいが) 
 われらのクレイグ・ライスは、その種の女(ないしは男)に属さぬ、たぐいまれなる作家の一人なのであります!
 ――と、こういう具合にこの解説を書きはじめると、
「ほう?」
 と、あらためて彼女に対して眼を向け直してくれるかたが少しはふえるかもしれない。
(以下略)

まわりくどいなー、字数稼ぎかな、とは思いませんでした。

作者自身は結婚歴五回、子どもも五人だそうですが、主人公のシングルマザーは、初婚の後に別れたきり、子どもも三人です。彼女は始終忙しく本を書いているので、子どもたちは食事の支度くらい朝飯前で出来るようになっています。でも彼女も料理の名手で、やる気になればおしゃれもバリッと出来るし、子どもたちはみな愛らしいし、母親へのプレゼントなんかもこっそり用意しちゃうし、母親と殺人事件の捜査に来たやもめの警部(ホテル暮らし)との仲をとりもとうと相手から食事にさそってきたみたいなウソ伝言を両者に伝えるし、そして推理小説としては大事な点というか、子どもだから偽証とか証拠品隠しとか参考人をかくまうとか、バンバンやるんですね。最後のは分からないでもないが、犯行時間をズラすための偽証とか、ただたんに面白がってやってるだけなので、警察は見抜いてるんですが、ひとんちの子どもだから母親に遠慮して、てめこのクソガキぶっころすとか言えないわけです。前に読んだ作者の小説は、遅れてきたフラッパーガールみたいのが印象的でしたが、それがシングルマザーになって、子どもたちにその形質が継承されている、とでも言えばいいのでしょうか。

付箋をつけなかったので、昔の言い回しとかで分からない言葉がけっこうあったのですが、分からないままです。ひとつだけつけていた付箋は、頁171、「政治家刈り」です。検索したら何故か谷亮子とかが出ましたが、これは政治家プラス大外刈りとか小内刈りとかの単語から出てきただけで、政治家刈りという髪形は分からないままでした。この調子で、分からない単語や、気の効いた言い回しに付箋をつけて、ここに列記すればいつもの私の読書感想になるのですが、秋になっても時間がないので、今回はそれをしません。以上

<以前に読んだクレイグ・ライスの小説>
2018-10-20『時計は三時に止まる』(創元推理文庫)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20181020/1539982141


ヴォーカロイドが歌う"Home Sweet Homicide"という歌の動画。作った人はクレイグ・ライスの小説も踏まえてる気がします。

【後報】
フィクションとノンフィクションの違いはありますが、シャーリー・ジャクスンの『野蛮人との生活』と本書を比較してみたいと思いました。でも今は頭が働きません。とりあえずここに置いておきます。

2017-09-26
『〈スラップスティック式育児法〉野蛮人との生活』(ハヤカワ文庫)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20170926/1506436222
(2018/11/3)