『河よりも長くゆるやかに』(小学館文庫)読了というか、プチフラワーコミックスで以前読んでいたので、中身的には再読

 カバー写真 荒木経惟 カバーデザイン 末沢瑛一 エッセイ 夢枕獏 読んだのは1998年2月1日付の第15刷(!)

河よりも長くゆるやかに (小学館文庫)

河よりも長くゆるやかに (小学館文庫)

 

 その辺から出てきたマンガ。単行本二冊を一冊にまとめて文庫化。初出は書いてません。まさか表紙がアラーキーとは思わなかったです。

河よりも長くゆるやかに - Wikipedia

吉田秋生 - Wikipedia

読み返す前から、ここに溢れるほどの大友克洋臭があることは分かっていて、この時代('80年代前半)は志のある少女漫画家も大友エピゴーネンを目指したんだよ、と誰かに上から目線で語りたい気持ちでいっぱいです。ブログって、そういう時のための穴として最適か。王様の耳はロバの耳、は大切な国家機密情報ですが、『カリフォルニア物語』『吉祥天女』『夢みる頃をすぎても』『BANANA FISH』と書名を並べるだけで時代感を味わうのは自己満足。私はバナナフィッシュもヤシャもあんま好きでなくて、その後、漫画をそんな読まなくというか読めなくなってから気がつくと作者が『海街ダイアリー』というえらく評判のいいまんがを描いていたのですが、海街はいまだ未読です。線やタッチが、人の親のそれになったとは思う。タタミイワシのエッセー漫画のころはこどもの視点だった。

で、読み返したこれの、見開きでフェンスと基地の大友エピゴーネンカットなどはさらさら予測していたんですが(頁30)、頁225、じゃああんたは犬にかまれたことを忘れられるの?のカットが、今四海で大流行中のかわいいヤソキー娘の絵で、そんなだった記憶がないのであせりました。これ、今でも心に残りますし、青いといえば背伸びという感慨も並行して今は持っています。人は年をとる。私は吉田秋生漫画のこういう部分が大好きなのですが、邪道かもしれません。いや、邪道だろう。サラリーマンになってから『BE-BOP HIGH SCHOOL』を読む人と同じベクトル。

ガタイのいい筋肉質の男子、クラスで目立つ男子を眩しく描いて読者に疑似体験をさせる漫画の系譜でいうと、やっぱり身体の描き方が上手いと思います。筋肉が不自然でない。しなやかである。女性も然り。今のように資料もハウツー本も専門学校も大学の漫画学科も揃ってる時代のほうが、首から下が不自然に乖離していたり、ポリゴンから1mmも進化していないギクシャクが垣間見られるのはどうしたことでしょう(才能の差)

作者は、日常づきあいと、部活と、あと少量のホモ雑誌を資料に漫画を描いたのだろうと推測してますが、私にとっては、運動神経がじゅうぶんよいのに絵を描くことも大好きな女子の系譜のほうが眩しくて(一条ゆかりとか)、勿論女子の就職、将来の選択も絡んで、才能とフィジカルに恵まれた女子が一般企業でなく漫画を狙ったりもしたのだろうと思います。で、それに加えて、つきあってる男が彼女の漫画方面への努力傾注をスポイルしない幸運、というのもあったろうと思います。無理解だとそれで終わるから。

頁338の左上のコマのセリフは今でも無意識に出ます。でもこれは元ネタがあるんだろうな。私は知らないだけ。頁366でそのせりふの天丼仕掛けてくるのがおそろしい。そりゃ刷りこまれるわ。以上