『大衆酒場ワカオ ワカコ酒別店 1 』(ゼノンコミックス)読了

 デザイン 森本沙央理(AFTERGLOW) 初出はWEBコミックぜにょんというところで、2019年一月から七月更新まで。原作者になっているしんきゅうさんは、三話くらいからストーリーから手を引いてるとカバー折で言ってました。でも時おり合作ふうに、自分で描いたワカコを登場させます。

大衆酒場ワカオ ワカコ酒別店 1 (ゼノンコミックス)

大衆酒場ワカオ ワカコ酒別店 1 (ゼノンコミックス)

 

 ファンタジーなので、言いたいことだけ分かればいいのですが、モヤモヤがつのる作品でもあります。

・親の代からの居酒屋

 ・複数の駅から15分の距離の住宅街の店

・開店午後七時。閉店が午前二時。ラストオーダー午前一時半。

若い女の子(ひとり。固定)がサーブをつとめる。さいごまではいない。

・大将がカウンターで調理全般まかなう。五十歳で老眼。チョンガーですかね。

取材協力店は巻末記載で五軒。痴気情事や夜鷹近辺。マンションの一室で個人名でやってるように見える店があるのですが、週末カフェならぬ週末居酒屋でしょうか。流石中央線沿線青春群像。常連客で持ってる店という設定は、高齢化が心配されるだけですので、お話的には、取材先の中央線ぽい客も来ます。

 あとがきマンガで、取材先の料理人さんの手際のよさに取材スピードが追いついてない感じと描いてますが、飲食店で働いた経験もどうなんだろうという逸品。

茶碗蒸しとかあさりの酒蒸しとか土瓶蒸しとか、一見手のかかるように見える品をワンオーダーする客ばかりなのですが、これ、たぶん、東京だと、頼まれて嫌な顔をする店は悪で、京都や関西だと、お店はぜったい顔に出さないが、気遣い出来ない客が惡だと思います。浮くな。その意味で、醤油などの調味料をどぼどぼ皿にそそぐ客や、揚げ物の一点注文はどうだろうと思いましたが、揚げ物はたったーげとねぎとろメンチカツ(創作料理)の二回しか出ません。しじゅう鍋の前に立ってなくてよいので、厨房が一人しかいない店は揚げ物便利と思うのですが、違うのかな。

この大将は、網で魚焼く時も、あさり蒸すときも、焼き鳥焼く時も、ずっとその火の前にいるので、それだと複数オーダー同時にこなせないだろう、こんなフィクションありかと思いました。同時並行で料理作るとか、作り置きでぱぱっと簡抜入れず客に出せるとか、そういうのも見せないと、へんだ。冷やしトマトはスライスするところから始めてもいいですが(関係ないですが、私は「串切り」という単語を、関東から関西に流れてきた、残留孤児二世の、半分黒社会かも知れないなあというお客から日本語で教わりました)ポテサラを、あれはなんだ、頁114、ふかしてる? 油で素揚げしてるようにも見えるのですが、マサカね、という下準備から始めて、かなり粗く、芋が残るくらいに、すりこぎでなく、しゃもじで切るようにつぶして出す展開に、クラクラしました。なんでそんな手間かける時間かかるやり方するんや。しかしポテサラにタクワンを入れるという発想は面白いと思いました。これは食べてみたい。

頁33、焼き鳥は開店前にぜんぶ串打ちしてるというのですが、前日の売れ残りだってあるだろうに、毎日売り切れる位の仕込みだとすると、十一時過ぎくらいになると、本日売り切れのメニューがそれなりに増えて来るんではないかと思います。この店は、品書きのタンザクに、「売り切れましたまたどうぞ」みたいな紙貼ったりしてないみたいなので、オーダーしてみないと、ソールドアウトかどうか分からない。卖完了,请再来。

あと、私は、本日のおすすめはホワイトボード派ですので、この店のようにコピー紙のメニューを各席に配るのは好かんです。汚れるし、ホワイトボードなら、売り切れたらタテ線入れればいいだけなのに、紙だとどうしろというのか。サーブの女の子の「八っちゃん」の負荷が増えるだけではないか。大将、女の子とお揃いのユニ、黒地に◯ワTシャツ着て悦にいっとるばやいじゃないですぜ。

あとこの大将、レンジを使う所は見せないが、バーナーは使うので、フードプロセッサーもレンジも普通に使ってるはずと思います。何故見せないか。

仕入れと仕込みの場面もまだ描いてないですね。出入りの八百屋に、野菜高いと文句言ったり、八百屋のほうが気を利かして、高い野菜を安めの代替品に代えてきてくれたりとか、そういうの。私も、冬瓜が高い時期に、大根に代えときましたと八百屋にさらっと言われて、板場が納得するかどうかは間に入った私に一任、みたいな時どきどきしたことがあります。

もうひとり板場に、おかみさんとかいないと、この規模でも店は回らないと思いますが、そこが秘めたる今後の展開なのか。じゃりん子チエも、おかあはんがけえってきたしね。以上