モーパッサン短編集 Ⅱ(新潮文庫)"Recueil de nouvelles de Guy de Maupassant (2) " Traduit par Aoyagi Mizuho 読了

カバー装画 織田広喜 デザイン 新潮社装幀室 巻末に訳者による解説

モーパッサン短編集(二) (新潮文庫)

モーパッサン短編集(二) (新潮文庫)

 

増田れい子『たんぽぽのメニュー』にピクニックの話があり、これに収められている『野遊び』"Une partie de campagne" を引き合いに出して、いや、映画のほうを引き合いに出して、日本のピクニックは、おにぎりとおいなりさんがマスト、北鎌倉におあげをふたつに切らないおいなりさんの名店があって… と続いていくので、読みました。

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Partie de campagne (film) — Wikipédia

昨日のオー・ヘンリーとちごて、モーパッサンはエロいだすな。この話も、郊外の私営ピクニックランドみたいなところに馬車を乗り付けると、食事が出て、一家揃って飲んでめろめろになった辺りで、亭主連中にはハゼ釣りの釣り竿持たせて昼寝させ、瀬戸ナントカじゃないですが、地元の観光客相手の屈強な若衆が、俺は母親に行くぜ、じゃあ俺は娘、と、三々五々草むらにシケこんで裾やら髪やらが乱れるという… 映画はそうじゃないんでしょうね、増田れい子という人は、そういう妄想エロストーリーだからわざわざ引用したわけではなさそうなので。

昭和四十六年一月二十五日初版 読んだのは平成廿年七月十日の三十六刷

ギ・ド・モーパッサン - Wikipedia

そのエロいモーパッサンは、フランス語版ウィキペディアだと、こんなところがマイノリティにさべちゅ的だったと、いっぱいいっぱい書かれています。すごい時代ですね。オー・ヘンリーより若い年、43歳で自殺未遂ののち精神病院で没す。以上

【後報】

O・ヘンリーの『賢者の贈り物』なみに有名かと思った『首かざり』"La Parure" が入ってます。『蝿』"Mouche" はえげつない話で、『ポールの恋人』"La femme de Paul" はLGBTQ?もの。フランスの風刺、フランスのえっちって、こんなあっけらかんとしてたっけ、と思いました。少なくとも夫婦生活と浮気は、事実も小説同様盛んな気がします。イタリアは事実は盛んなのに、小説は暗いので、フランスもそうかもと思うと、フランスは事実がイタリアほどではないのか、なんなのか、明るくていいですね。

頁281、『マドモワゼル・ペルル』"Mademoiselle Perle" に出て来る「王さままつり」が分からなかったので、検索しました。

ja.wikipedia.org

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『馬に乗って』"A cheval" ネタバレですが、馬車や騎馬の時代にも当たり屋っていたんですね。

頁374『家庭』"En famille"

(略)慢性の掃除病にかかっている細君は、がらんとした部屋に散らばっているマホガニー材の椅子を、しきりにフランネルのきれで艶出しをしていた。いつも彼女は糸で編んだ手袋をはめ、色とりどりのリボンでつくったボンネットをかぶっているのであるが、 それが、ひっきりなしに耳の上に落っこちてくるのである。そして、彼女が蠟引きをしたり、ブラシをかけたり、艶出しをしたり、灰汁で洗ったりしているところを人から見られようものなら、いつもきまって言うのであった。「わたしはお金持ちではありませんので、宅では万事質素です。でも、清潔がわたしの贅沢なんです。そして、この贅沢だけで結構です」

 こうありたいものです。

(2020/10/23)