栄えある四番打者なのですが、WBCでもヤクルトの村上さまは苦しみましたしという。
版元の紹介文
先鋭化する民主化運動の傍らで生きる「あなた」たちの物語。
感情過多でどんどん流れてゆく話で、登場人物たちのとっかえひっかえの性交渉が多いので、タイでそれだと、どやさと思わないでもないです。バンコクの喋り方と、南部の喋り方について、それが交錯する刹那の、ふとした淀み、天使が通り過ぎる瞬間が描写されますが、著者はプーケット出身とのこと。本作と同じ訳者による別の作品の邦訳が見つかったので、下に置いておきます。
東南アジア文学 Southeast Asian Literature - 14号
2527年のひどく幸せなもう一日 / ウィワット・ルートウィワットウォンサー / 福冨渉訳
浜辺にて。作家ノック・パックサナーウィン、ウテーン・マハーミット、ウィワット・ルートウィワットウォンサーらとガチンコの「最近面白かったタイ文学」ばなしをしているのだが、彼らの読書ペースに全く追いつける気がしない…特にウィワット。 pic.twitter.com/plg8LS2dLe
— Sho Fukutomi / 福冨渉 / โช ฟุกุโตมิ (@sh0f) 2016年3月13日
気ままに美波。右のしとがルートウィワットウォンササンみたいです。いろいろ打ち込んでみて、著者のアルファベット表記が、Wiwat Lertwiwatwongsa であることは分かりましたが、そこからタイ語表記にうまくジャンプ出来ず、別名の"Filmsick"も、同名の歌曲しか出ませんでした。ひょんなところで、結局カタカナからタイ語表記に飛べました。
上の、日本では映画祭でしか上映されてないタイのドキュメンタリー映画のウィキペディアの日本語版があって、そこからタイ語版に飛んで、出演者のひとりのウィワットサンのタイ語表記をゲット出来たです。
เดอะมาสเตอร์ (ภาพยนตร์ พ.ศ. 2557) - วิกิพีเดีย
ウィワット・ルートウィワットウォンサーサンは、วิวัฒน์ เลิศวิวัฒน์วงศา デス。さてそこから、ウィワットサンがタイ語のSNSで、このアンソロジーの宣伝告知をしていれば、タイ語の題名も、寄せ書きのタイ語入力も分かるしコピれるかと思ったのですが、そうは問屋がおろしま千円で、私の能力では何も見つけ出せませんでした。
https://thailand.kinokuniya.com/bw/9786167831053
タイの紀伊國屋が売ってるこの人のタイ語の著書。こんなのが見つかったくらいです。で、訳者解説に、この作品は「ペパーミント・キャンディ」のイ・チャンドン監督「ボーニン(burning)」から霊感を得たと書いてあるので、当該映画のウィキペディアタイ語版からタイ語タイトル มือเพลิง を引っ張って、これでいいやと思ったです。
stantsiya-iriya.hatenablog.com
映画バーニングは、世界のハルキ・ムラカミ作品『納屋を焼く』を、監督がおのれのインスピを信じて違った話にした映画ですが、原作を意識しすぎて自滅した感じです。こうやってウィワットサンにリスペクトされるほどの映画とは。アンソロジー《绝缘》は日韓同時刊行なので、シンガポールの作家サンの作品でもムスリマ専業主婦が韓流ドラマに夢中になってたりと、韓国人がうれしくなりそうな箇所がときどきあります。映画「バーニング」は、夕暮れに主演女優サンが、トップレスで踊る場面があるのですが、胸がまったく揺れないので、整形なのかCGなのか、どっちだろうと思ったことだけ覚えています。
その後、解説のその前の箇所に原題のタイ語表記がもろに書いてあって、ギャフンとなりました。
しかしまたこれが、タイ文字タイ文字したフォントでなく、ラテンアルファベットに似せた書体のクセモノタイ文字で、案の定グーグルレンズは"anlHU"と、意味不明のアルファベットとして読み取ってくれました。chatGPT破れたり。(chatGPTではないですが)
しょうことなしに、各種タイ文字比較指南ブログなど参照させて頂きながら、あれこれ試して、違ってるかもしれないけれど、いいやで出したのがこれです。
ลูกไหม้(グーグル翻訳:焦げたボール)
とほほ。
また、アンソロジーの、寄せ書きの中のウィワットサンの手書きタイ文字を、グーグルレンズで活字にしてこまそうと思ったですが、ほとんど文字と認識してくれませんでした。残念閔子騫。寄せ書きの日本語以外の文の邦訳は、つべの小学館公式垢の、宣伝動画にあり、上の文は「燃えさかる世界で、本が友に、そして燃料にならんことを!」だそうです。
https://youtu.be/waHE1bh8LOI?t=148
上の文を誰かタイ語に造詣が深い人に電子的に打ち込んでもらおうかとも思ったですが、それはなんのためかというと、このブログを飾るためであり、一種の承認欲求のあらわれなので、やめました。でもそのうちやるかもしれません。スマホに打ち込んだ画面をキャプチャーまたは撮影して、それをまたグーグルレンズという手順がいちばん樂そうです。
ネクストバッターズサークルが香港の作家サンで、連作小説ということウィワットサンなりに理解した結果なのか、作中に香港人が出たりしますが、頁147、「旺角(モンコック)」に「ウォンゴッ」とルビが振られていて、おやと思いました。また、下記のような記述もあります。
頁169
蓋を切り離したブリキ缶には、ふたつの使いみちがある。ひとつは、(略)もうひとつは、保存しておいて、先祖への礼拝で金銀の紙銭を燃やすために使うというもの。中華系の住むタウンハウスのなかには吹き抜けの洗い場がある。
チャウ・シンチーのくだらない映画「カンフー・ハッスル」で、繰り返し対決シーンをする場所。また、解説でもこう書かれています。
頁184 訳者解説
(略)潮州系が多いバンコクなどとは異なり、プーケットには、自らを「ババ」や「プラナカン」と定義する福建系の華人が多く住む。この二概念の細かな差異については措くが、そこで想定されているのは、旧海峡植民地や周辺地域に移住して土着化した華僑やその子孫のことだ。その言語も文化も、タイで多数派の華人のものとは異なる。著者のウィワットも、ゆるやかながら、自身もババだと認識している。
ババ・ニョニャといえば、故ヤスミン・アフマド監督の「セペット」「ラブン」
stantsiya-iriya.hatenablog.com
大和のシンガポール料理店もニョニャ料理を出すそうで、パパ活の思い出ガー。
https://stantsiya-iriya.hatenablog.com/entry/2021/03/31/092144
上は、八丁堀のマレーシア料理屋で食べたニョニャ風から揚げ。
https://stantsiya-iriya.hatenablog.com/entry/2019/06/30/082128
三茶の街中華の肉骨茶定食。ぜったい福建料理ではないと断言します。が、それだけに、肉骨茶として珍しいのかも。
stantsiya-iriya.hatenablog.com
上记是そのものズバリのタイトルの小説ですが、摂食障害のはなし。これを投稿して入賞した著者は、承認欲求が満たされたのか、別の道(医学)を歩んだような。
チョン・セランサンの『シソンから、』もプラカナンには触れていて、さすがアンソロジーと思いました。著者の気配りなのか、タイのおもてなし文化なのか。
stantsiya-iriya.hatenablog.com
むかし知っていたマレー華人たちは、みな広東語話者でしたが、パクテーの「肉」も「茶」をデーと読む読み方も、福建のものですので、閔南語話者のインビジブルぶりは、まだ私には分かりません。どのみち、本作品のメインテーマではないのですが。
タクシンなどの例の、タイがふたつに揺れた座り込みデモ多発時代、新国王を巡るストーリー、などが背景としてあるのは、訳者解説で理解し、あとは感情とゆきずりの性交渉をただ読むという、高行健『霊山』からマチズモと男のロマンを抜きましてん、的小説かもしれません。
あと、この話は、コロナカの話でもあります。
以上
昨年秋にチベット文学の新作がないか検索した時、ラシャムジャの新作収録で出た本。12月の刊行直後に買ったのですが、春まで寝かせてました。一作ずつ感想を書きます。
装画=趙文欣 装丁=川名潤
オーディオブック同時発売とのこと。
日韓同時発売とのことで、韓国版は、さいごにチョン・セランと村田紗耶香の対談が入ってます。表紙のイラストや掲載のじゅんばんはいっしょですが、作家の帰属表記について、日本語版は日和ってると言うか、上海で中国ビジネスを営む小学館的に苦しいんだろうなあという書き方で、ウェブには個人名しか載せてません。対して韓国は直球。例:「라샴자(티베트)─구덩이 속에는 설련화가 피어 있다」
表紙のイラストを描いた人は上海在住。ではなく、今は多摩美に学んでるそうですが、今後どうされるのか。
巻末の、小学館編集部:柏原航輔サン、加古淑サンの弁によると、本アンソロジーの、どの国のどの作家に依頼するかの選定作業には、韓国文学の邦訳などを行っている出版社クオンの金承福サンと伊藤明恵サンが関わり、実際の契約交渉は、イギリスの出版社でそうした業務に従事していたパルミェーリ・ターニャサンというエージェントが大活躍したそうです。
絶縁というテーマは言い出しっぺのチョン・セランサンが出したものだそうです。
【後報】
表紙に書かれた「絶縁」のタイ語は"ตัดขาด"
(2023/5/24)
【後報】
福冨渉訳。
ハングル版は、日本語版をホン・ウンジュというイファ女子大仏文出で日本在住の翻訳者がハングル訳したとか。
下がホン・ウンジュサンの紹介箇所。
下が翻訳スキーム紹介箇所。
『절연』의 작업은 각기 다른 언어를 사용하는 9명의 작가들의 작품을 각 언어를 전공한 일본의 7명의 번역가가 번역하고 그것을 도쿄에 거주하는 홍은주 번역가가 다시 한글로 옮기는 방식으로 이루어졌다. 편집 과정에서 의문점이 발견되면 일본의 편집자와 해당 언어의 번역자를 거쳐 저자에게 전달되고, 피드백이 역순으로 되돌아오면 다시 홍은주 번역가와 문학동네 편집부가 논의하는 식이었다. 쇼가쿠칸의 편집자와 문학동네의 편집자가 각기 국내문학을 담당하고 있어 서로 한국어와 일본어에 능숙하지 않았는데, 이때 동원된 것이 웹 번역기였다. 한국의 편집자는 한국어로, 일본의 편집자는 일본어로 쓴 수십 통의 메일로 의견을 주고받았다. 각국 작가들은 직접 촬영한 영상으로 인사를 보내왔다. 팬데믹 이후 동시적인 소통을 위해 급속도로 발달한 기술들이 활용되었으니, 『절연』의 작업은 말 그대로 이전 시대와 결별하는 일이었던 셈이다.
표지 그림은 상하이에서 활동하는 일러스트레이터 자오원신Zhao Wenxin의 작품이다. 같은 그림을 일본과 한국의 디자이너가 각국의 정서에 맞게 재해석해 디자인한 것도 눈여겨볼 만하다. 이번에 한국과 일본에서 동시 출간된 『절연』은 추후 작품집에 참여한 다른 나라에서도 번역되어 출간될 예정이다.(グーグル翻訳)
(2023/5/30)