『 談志楽屋噺』 (文春文庫) 読了

談志楽屋噺 (文春文庫)

談志楽屋噺 (文春文庫)

カバー・平川 進
あとがきと文庫版あとがきあり。解説はナシ。
単行本は昭和62年2月白夜書房(!)刊。
読んだのは1991年6月の第4刷です。

ボーツー先生と福田和也の文壇アウトロー時事放談下記で知って、
読もうと思った本。

2018-03-09
『不謹慎 酒気帯び時評50選』THE HOTTEST TABLE TALK SERIES:2010-2012 読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20180309/1520601711

第一章で、早逝したなかまたちの思い出話を延々しています。
自裁病没問わず、酒が多い。不安定な業界だから不安をまぎらすため、
吞むんじゃいか、と読んでて推測しました。

頁35
 大ちゃんから電話があった。
「元気なの?」
「ゲーンキ、元気、元亀元年てえくらい」
 と電話の向こうは大声で陽気だ。
「どっから掛けてんの」
「病院」
「病院? 何の病院?」
「精神病院」
 ホントに病院に入っているんだ。

もちろん物故しない芸人も、毒蝮とか円鏡とか、出ます。
こねたも出ます。

頁45
 銀座のクラブで、そこの女が「あたしと掛けて」と言ったら、小痴楽「楠正成と解く、そのこころは大まんこう」、女が怒った。「そんなに大きくないわよ」「なら楠正行、小まんこう」

第二章は生きてる名人奇人の逸話のはずですが、変わらない。

頁87
支那の代脈』というものもあって、ちょっと頭のトロイ医者の書生が先生の代わりに、つまり代脈に行って失敗じるというおなじみの落語で、代脈先生、患者の娘さんの脈をとると、
「ばかにお嬢さん、毛深い」
「先生、ご冗談ばかり、それは猫で」というギャグがある。
 それを馬風師のは、中国の代脈だから、出掛けていって、
「ばかに毛深い」
「先生、チョウタンぱかり、それ違う、お嬢違う、それ座敷豚」
 座敷豚って発想がおかしい。向こうは座敷に豚がいるはずだっていうの。変だね。

向こうに座敷はねえべ。客厅。
https://cjjc.weblio.jp/sentence/content/%E5%AE%A2%E5%8E%85
頁105、田植えの際は寄席を休む紙切り
林家正楽今井正「米」を見て感動する。

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頁191、第三章は楽屋の余談の筈ですが、同工異曲。
小せんという人が、南方帰りでたびたびマラリアの発作を起こし、
キニーネ噛むとピタッと止まる、というはなしが、
ポン中の逸話の中にぽんと置かれてゐる。

頁206、バカだ馬鹿キン、この表現、なんとなくわかるような、
分からないような…

頁233、芸術協会に、ノーテンホワイラーズという草野球チームがあったとか。
玉川一郎が名付け親で、談志師匠によると、ホワイラーはお人好しの意味だとか。
ぬかせ。ウソをおつきでないよ、って感じ。知ってるくせに。
ノーテンホワイラは兵隊支那語ですが、"脑子坏了"ナオズホワイラ、
は今でも普通に使われる表現です。中国戦線帰りの噺家の思い出も、
あるようなないような…あんまり具体的なのはないです。

最後に居眠り先生、色川武大との対談がありますが、
談志に朝だ徹夜が合わせて、テキトーにうんうんうなづいてるだけのような…
それで師匠はじゅうぶん、幸せな時間が過ごせたんだと思います。

別に私はこの家元に束脩治めてるわけでもないので、
バンダナのこの人を師匠と呼ぶいわれもないわけですが、

何を読もうとしてこの本借りたか忘れました。以上です。

【後報】
誰それの内儀さんがカカア天下なので、宋美齢という仇名をつけられていた、
という箇所を探しましたが見つからず、頁263のエロ勅語と、
頁212、都家かつ江姐さんのギャグ、朝鮮の洗濯じゃあないんだから、
ひっぱたけばいいてえもんじゃあない、しか出てきませんでした。
(2018/3/26)