「チベット ケサル大王伝 -最後の語り部たち」"Documentary film Tibet Hero KING GESAR" or "GESAR TELLER" 劇場鑑賞

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この人が一番の若手で、月三千元(映画の字幕だと二万円くらいとか)月給貰ってる、省政府だか県政府だか公認の語り部だとか。よかったなあ、生活が安定出来て。

https://www.gesar-teller.com/

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ブルーレイ上映。新宿文化センターのランチタイムコンサートのチベット行ったら、チラシ配ってたので、じゃー観るかと思って観ました。

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一週限定上映で、木曜千円デーは仕事と被ってて無理なので、正規料金¥1,800払って観ました。勿体ないことをした。四月にアップリンクでけっこう上映してたのを知りませんで、これを逃すと後がないと思い込んでしまった。四月にアップリンクで十月に名古屋と横浜でしょう、またやりますよね、きっと。池谷薫「ルンタ」と二本立てとか、「ラモツォの亡命ノート」と二本立てとか、ギャワ・リンポチェ14thの映画と二本立てとか、そんな感じでやればいい。上映前に公式サイトに、DVD七万円と書いてあったので、上映権コミコミなのだろうか、勝手に上映し曝せということかと思ったのですが、上映後に見たらDVD七万円の記事は消えてました。北京の陰謀でしょうか(棒 あと、考えたら水曜は女性デーか。それでか。

雪山の下、標高四千メートルのチベット高原

夢のお告げの後、語り部になった牧童はとめどもなくラップの如く語り謡う

ケサル王伝 - Wikipedia

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「ルンタ」の感想で、ダラムサラの人間がアムドに行ってアムド語わかんのかよと書いたら、「ラモツォ」で大学書林でお馴染み星泉御大が、私が見ててまっっったく分からなかった、ラモツォの父親がアムド語まるだしであることなど細かくパンフで解説してくれていて、椎名誠の嫁さんもなんか書いていて、これでチベットで結婚式あげた人やイシハマ御大あたりが書き出したらファミリーというか狭い世界勢揃いだなと思ったことがあり、この映画もケサルという普遍的なテーマですので、パンフちょっと楽しみだったのですが、監督の撮影苦労話しか書いてなかったので、學刈也。(アムド風に言うとペマ・ガルポの、名前も書いてありますが…)

概説などの字だけの画面のCG処理などが、既製品を使ったからか、誰かに手弁当でやってもらったからか、統一されてない感があり、レリジョンというか、何かの宣材見てる感じがしたりもしたのが、多少寂しかったです。

パンフだと、ウー・ツァンとアムド、カムの方言差は、それぞれ言ってることが分からないレベルだとしてますが、カムやアムドのほうは、ラサ語は或る程度分かるんじゃないでしょうか。でないと行商や巡礼、物乞いに行けないでしょう。あと、四川省にもアムド語圏があるので、四川省をぜんぶカムの色にするのはどうかと言ったら、色変えてますよと指さしてくれて、私ももうだいぶ鈍ってますので、前の人が列割り込んだのも鷹揚に許したくらいなので(またその人が中国批判が好きらしい)、その指さしたとこ、後で考えたらその色違いの部分は甘粛省じゃないですか。四川省をアムドとカムの方言分布で分けたわけでなく、甘粛省。パンフに誰も寄稿しないのは、やはり残念閔子騫。それを五百円で買ってサイン貰いながらでないと質問しづらい空気も、微妙でした。耳の悪い方に大声で話しかけざるを得ず、そうなると次の上映の迷惑になるという構図も情けなかった。サインする場所がドアの前なので、どうしてもそうなる。最後は場所移ってましたが、もういいかと離れました。ひとりひとり相手の名前聞いてそれを書き込んでサインされてましたが、転売防止策でしょうか。転売されたことあるんだなあと。

チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

 

アムド山旅 - 株式会社ナカニシヤ出版

治多県で日本語が出来る女性に会ったというのは、上記とかの絡みや、監督もご存じでした、既に撤退した小島基地(トヨタの下請け企業の現地文化施設)の絡みや、日本の企業スポーツ団も利用したという高地トレーニング施設の絡みが、なんかあるから、現在は役に立たないけど、かつて習ったことがあるくらいの人は、いておかしくないと思います。逆に、玉樹が、歌う場面以外、牧童との会話も、全部漢語なのが、なんだなあと。パンフ見ると、通訳が公安に脅されて逃げたそうなので、そうなったとのことですが、それだと、今度最後の、タルナが、またチベット語に戻ってるのが、不思議です。タルナは、一ヶ所、英語の音声が混じるので、登場NGの英語話者が通訳としていたのかもしれない。あるいはラサ語で話していたか。カギュー派のお寺ということでした。

もっと若いロックな監督が、ケサル王のいさおしを聴いてハマって、それでハンディカム片手にやってるのかと思いました。が、無理の出来ない御歳の監督であることが分かりました。上映前に支配人と、客の入りどうかと話していて、心配してるんだなと。この御歳ですと、高山病のリスクも加味して、継続撮影はここが限度と考えてもしかたないかと。あと、中国当局にもし理由不明で長期間拘束されて、それなのに「ダライラマとか映画に出しちゃってるんでしょ?そりゃ目をつけられるわ」と、日本国内でまた無慈悲に自己責任論で叩かれたらおえんし。その意味で、「最後」なのかと思いました。ヤマトやスリーナインが、二作目なのに「さらば」「さよなら」なのと同じロジック。いや、違うロジック。せっかく知り合った人たちとも、接触出来なさそうな空気を権力に作られるあたりは映画にも出てました。監督は二回この企画をNHKに売り込んで、二回とも中国の顔色を窺うNHKに一蹴されたそうですが、それをこうやって拡散すれば、N國黨登場のこのご時世ですので、NHKが忖度してくれるか、N國黨がやってくれるか、どちらかあるかもしれません。ないかもしれません。

今回この映画でウィキペディアでケサル検索したら、確か昔は、モンゴルや土族のケサルの漢字名は、漢字を変えて区別してたはずなのですが、今はいっしょで、そういうのもいろいろ変わるなと思いました。質問の人の中には、パキスタンカラコルムでケサルに会ったという人がいて、スワートとかの少数民族にそっち系がいるのかなあ、知らへんだとその場の会話では終わったのですが、四月のアップリンクのゲストには、ウルドゥー語文学の研究者の方も来たそうなので、その人なら解き明かせるかもしれません。それなら次作はパキスタンで撮影出来ますし、よかったですね。ラダックでも撮影出来るかもしれない。ケサル王のチベット語版全五十冊みたいな、売れない本でもアリバイ的に出すのが中国。たぶん東大京大レベルの大学図書館には、各言語版の蔵書があるはずです。彼らも、今は研究者がいないが、いつか研究者が来るかもしれないと考え、頑張って買います。Ⓒ中国画報の個所で、映画は中国政府のお墨付き貰わなかったが、出版社に画像の使用許可を取ったという点、ケサルは中国が世界に誇る文化遺産なので広めることに意義があるというロジックが通ったそうです。

自分がかつて見た玉樹と今の玉樹の違いというと、ケサル王像もない頃で、新華書店に漢字と、チベット文字でなくなぜかアラビア文字で看板が書いてあるくらいの時代で、青海軍閥でのちに中華民國のサウジアラビア大使になった馬歩芳とか、50年代になっても回教徒の叛乱がひんぴんと起こっていた土地柄だったとか、住んでいるのはチベット人や隠れモンゴル人が多いが、商業ネットワークは、中公新書『回教から見た中国』にあるとおり、回族やサラール族に握られていたとか、そういう頃ですので、もう違うとしか。とりあえずサキャ派の青い寺院が並ぶ壮観な図は、もうないのかボツにしたのか、映画では登場しませんでした。以上

【後報】

予告の1バージョンで、何も映っていないスマホ画面見ながら低吟始める場面は、従来語り部の中で、白紙を前に、何か字が書いてあるかのように読み上げる様の現代様式と、ウィキペディア見て理解しました。あとドローンが治多の陸上競技場で映ってました。玉樹の陸上競技場は私が、党書記殺害の罪で公開処刑されるはずだった密猟団の首領の公開裁判を見た場所で、この映画の治多の陸上競技場みたいな感じでした、当時。おんなじように地元のチベット人がわんさか来ていた。外国人がいると分かると、公開処刑せず東風トラックで何処かに被告を連れていってしまいました。この映画でも語り部にロクに歌わせず取材班に接触させず引き離すあたり、前世紀から対応策が変わっていないのだなと思いました。

監督は、他民族のケサルまで手を広げられないと言ってましたが、チベット関連のネタとしても、永遠に終わらないケサルまで手を広げて見ることになるとは私も思いませんでした。いろんな取材がある。

(2019/10/26)

【後報】

監督さんも、有吉に「ケサルバカ」と言われるくらい一途にケサルに打ち込んでいるのなら、外野にチョッカイ出してるヒマはないと思うのですが、どうもそうではないようで。

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[B!] チベットセミナー映画会「ケサル大王伝」 | はまナビ 浜田市観光協会公式サイト

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この監督さんからメールニュースが来るようになって、プッシュ型の情報は遮断がめんどくて、それでまた内容が以下略で、明るいニュース、気分がアガるニュースならいいのに、としょっちゅう思っていましたが、上記島根の上映会以降メールニュースが途絶したので、ちょっとほっとしています。

(2021/7/20)