『愛を笑いとばす女たち』Letters from Tahichi (新潮文庫)読了

 カバー写真 ジャンクロード・ミッシェル デザイン 新潮社装幀室

愛を笑いとばす女たち (新潮文庫)

愛を笑いとばす女たち (新潮文庫)

  • 作者:坂東 真砂子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/05
  • メディア: 文庫
 

 吉田類が『酒は人の上に人を造らず』で出している坂東眞砂子タヒチものエッセーも読んでみようかということで借りました。単行本は平成十二年六月同社刊で、その前、これが何に連載されてたものかとか、書き下ろしなのかとかは分かりません。

巻頭にジャンクロード・ミッシェルに捧げる旨献辞があり、仏日両文で書いています。なんでイタリア留学だった彼女が、あっちでは相当ナンパされただろうし、普通の男性と知り合う機会もあっただろうに、フランス人とつきあって、フランス語圏に住み、フランス語で献辞書いてるんだろうと思いましたが、帰国後のライター仕事で南洋の島へは旅行記事書くので結構行ったそうで、現地で知り合ったそうです。猫云々の真偽はともかく、別れたら、現地で家まで買ってたのにタヒチを離れ、男性はじゃあひょっとしたらタヒチに残ったのかなあと思いました。本書では、タヒチでは法は抜きに慣習的に、家は女性に帰属し、出てくのは男性、とあり、日本と違うと作者は書いてますが、作者自身タヒチ流にしなかったということなのか。でも男性にほかのことがあったのかもしれないし、分からない。

頁48、愛を笑いとばすからといって、酒などをおごって、代償にやらせてもらおうとする男は「鼠」と呼ばれ、女性は近づかないそうです。パパ活はちがうという。島を越えた往来も激しく、別の島で働くことも多いので、この文章の文頭に「タヒチでは」をつけるか、「南洋では」をつけるか「ポリネシアでは」「ミクロネシアでは」「メラネシアでは」(タヒチがどれか知らないので)をつけるか考えましたが、つけません。

アマゾンなどのレビューでも、もう少しタヒチの記事が多いといいのに、という声がありました。外地から眺める日本文明批評、みたいなのが、著名な作家の作品の引用を交えて語られていて、その部分が多いのですが、同意も反論も出来かねる、そもそもそう決めつけること自体どうなのという、感情や感触が多いので、スルーです。岩波書店から出した講演纏め本と、その辺はいっしょ。

タヒチの郵便局は郵便物を配達せず、郵便局にそれぞれの私書箱があって、そこに取りに行く。それを珍しく描いてますが、今読んでる庄野潤三シェリー酒と楓の葉』のアメリカの田舎でも同じなので、如何に決めつけが間違い易いかと思います。

後半の夜這いと侵入者、女一人暮らしについての箇所に、あまりジャンクロードが出て来ず、現地の女友達とそのハズなどの加勢が出てくるので、そういうものかと思いました。それまでの日常で、防犯上こうした方がいいとジャンクロードはいっていたのに、ズボラでやってなかった、という記述はあります。それで、ホラみたことかと言われたのかどうかは読み飛ばしたので分かりません。侵入者に対し、助けを求める電話は隣人の女性にかけています。恋人はタヒチ不在だったのかとかは、書いてません。以上