ガマの聖談 : 人生に関する珍考漫考 (光文社): 1968|書誌詳細|国立国会図書館サーチ
小見出し:芸者がそれに賽銭をあげた / 女が三十を過ぎると / 女にはキャッシュでいけ / 一発くらわせろ
陰茎の話ですので、推して知るべし。「キャッシュ」というのは、ここぞというときにダイレクトで掴ませろとかそういう話です。ここぞという時だと思い込んだがそれはひとりよがりで、ただの痴漢でしかなかった。まだ捕まってないだけの人と捕まった人がそれぞれ、というようなお話の展開はありません。どうも21世紀に読んでるので、そっちに倒したくなります。
たんじゅんな男根崇拝談義とも言い難く、出だしは、ガマサンの陰茎にはイボがあるという告白です。戦争前、ガマサンは柳橋の常連で、その話をしたところ、お店のヨワイ九十のやり手ババアが言うには、江戸末期の大店の旦那のお客に二つイボがある人がいて、拝観日に賽銭をとって三宝に載せて一般開放したところ、七両三分の収益があったとのこと。
ガマサンも御開帳をせいだいにやりましょうということになったのですが、その前に最初に見た二人の芸者があいついで急死してしまい、イボ棒に当てられて死んだと噂になり、それで拝観式は中止となったそうです。それが「使いよう」であるとするなら、こわいはなし。
古川柳:いぼつきは切らしましたと小間物屋(頁46)
ただし、終戦直後にイボを見せた進駐軍の将校(♂)は死んでないので、真相はなぞです。
頁48
昔のプレイボーイというのは、そのへんのコツをちゃんと心得ていた。旅先で片っぱしから旅館の女中をモノにして歩いた男の話をきくと、給仕する女のほうから、ちゃんと魔法の棒が見えるような仕掛けをしていたんだな。
この後、清盛と常盤御前を例に、快楽を前にすると、理性が骨抜きに~とかそういう話になります。新井浩文サンもこういう本読んでたのかなあ。
この話の白眉というか、ポイントはガマサンのインテリ評でしょうか。男性には辛く、女性へのそれはネットリしてる。
頁50
おれは秀才に対しては、ひじょうに点がからい。秀才というのは、女にモテる資格のないやつだと思っているからな。理由は、頭だけ使って、かんじんの魔法の棒のトレーニングをさっぱりやらぬからだ。だから、いざというときに、モノの役に立たない。そうなると、およそ秀才を亭主にもった女房ほど哀れなものはないということになる。
(略)
ところが、これがとどこおると、どんなに御殿のような屋敷に住まわしてもらっても、女は満足できないんだ。だから、なにかの拍子で、強烈な魔法の棒の味を知ったら、地位も名誉もかなぐり捨ててしまうことになる。
第二話でも「粗食に耐えうる」と書いておいて自家撞着、と思ったのですが、ここで再度、「粗食に耐えうる」わけがないと確信出来ます。ネトラレとかそういう話になるのでしょうが。これに対し、南喜一サンのインテリ女性へのまなざしは、エロ一色です。
頁49
(略)女というものは、ほんとうに興奮すると、さざえのように身をよじってくるものなんだ。理性の強いやつほどそれが顕著にあらわれるんだ。だから、手はかかるが、やはりいちばん歯ごたえのあるのは、インテリ女だという男もいるわけだ。
吉田聡のヤンキーまんが及びヤンキーでないまんがは、一貫してヒロインを委員長キャラというかインテリに描いてる気がしていて、何らかのコンプレックスもしくは憧れがあるのか、『愛と誠』の読みすぎなのか、どっちだろうと思っていましたが、上記のような理由であるなら、それはそれで納得出来ます。ときどき描かれる『荒くれNIGHT』の、夫婦和合を族に邪魔される話も、むべなるかなと思います。
イボをさておくと、南喜一さんのイチモツは巷間の番付表での位置づけは、本人の感覚では関脇の張出クラスだそうです。大関でも横綱でもないという。
ボーツー先生と福田和也の下記書評対談に登場する本。カーリルで県内図書館に蔵書があると出て来るので(白帝社版かな)公序良俗には反してないと思うのですが、他館本リクエストで数回なしのつぶてだった本。最近思い立って、日本の古本屋で、愛媛の古書店さんから、てごろな値段のものを購入しました。七百円。送料三百円。計千円。
stantsiya-iriya.hatenablog.com
裏表紙のサンケイ新聞フジテレビ会長(当時)水野成夫サンの一文は、著者ウィキペディアの記述を裏付けるものです。
著者ウィキペディア
(略)1940年転向仲間の水野成夫と古紙再生会社「大日本再生製紙」を設立する。1945年には宮島清次郎が社長を務めていた国策パルプと合併し、同社の常務取締役となる。(略)
(略)経営が悪化した同球団をヤクルト本社が買収したこの一件について、当時は「水野の窮地を盟友の南が救った」と言われていた。(略)
カバー折。田中一光のデザインとは。目次の次のページによると、本文さし絵・藤城清治だそうです。そんなそうそうたるメンバーが、このエロトーク集に結集したと。
杉 靖三郎先生を偲ぶ - 日本生理学会
http://physiology.jp/wp-content/uploads/2014/01/064100237.pdf
いつも元気、いまも現役(文化勲章受章・写真家 田沼武能さん) | 健康長寿ネット
まえがき(昭和四十三年一月二十五日)によると、このトークは、光文社の雑誌「宝石」に昭和四十年十月号から昭和四十二年十一月号まで二年にわたって連載したものをまとめたとか。すでにオープンリール*1の録音装置は普及していましたが、まあ、ライターと編集者にご本人がざっくばらんに語って、ライターがそれをメモして、だいたいな感じで文章に仕立てあげたんだと思います。そのほうがラクだし、ライターも腕が揮える。
奥付 昭和43年2月15日初版で、読んだのは同年7月1日の37版(37刷)左上に神吉晴夫サンの名前が見えます。カッパブックスの生みの親はもちろん、「戦後最大の出版プロデューサー」©Wikipediaだとか。
神吉晴夫のベストセラー作法十か条
1. 読者の核を20歳前後に置く
2. 読者の心理や感情のどういう面を刺激するか
3. テーマが時宜を得ている
4. 作品とテーマがはっきりしている
5. 作品が新鮮であること。テーマはもちろん、
文体や造本に至るまで今までお目にかかった
ことがないという新鮮な驚きや感動を読者に与える
6. 文章が読者の言葉遣いであること
7. 芸術よりモラルが大事
8. 読者は正義が好き
9. 著者は読者より一段高い人間ではない
10. 編集者は常にプロデューサー・企画制作者の立場に
立たねばならない。先生の原稿を押し頂くだけではダメ
右上の伊藤整『文学入門』と、サラリーマン目白三平シリーズがカッパブックスの最初だったそうで、この巻末広告を見ても、ミッキー安川のアメリカ留学記、三笠宮殿下のご著書、中帰聯の三光作戦、関川夏央も読み込んだ『にあんちゃん』、わだつみの声、川喜田二郎のヒマラヤもの、ゾルゲ事件連座の尾崎秀実『愛情はふる星のごとく』と、実にバラエティに富んだラインナップになっていて、驚きます。私もこれらの本は読んだり積んだりのはず。
以上