そのへんにあったマンガ。といっても図書館本です。
◎カバーイラスト・デザイン きくち正太 ◎装丁 西野直樹デザインスタジオ ◎担当編集 髙松千比己 [初出]『comic ブースト』2021.7~2022.04
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すごいところでおちついた大人のまんがを連載してるものだと驚きました。雑誌ではないので、単品売りで、検索結果のヨコに表示されるおすすめなどから買われていくのでしょうから、異世界ばっかりの中に、中央線沿線青春群像みたいな鴛鴦夫婦の実録まんががあっても何も問題ないのかもしれません。
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担当編集の方を検索したら、2011年にはリイド者の総合企画編集室編集長で、2018年には幻冬舎のまんが雑誌月刊バース編集長(休刊まで)で見つかり、このマンガだけ見ると角刈りの年若の人物に見えますが、現実はたぶん貫禄のある人物で、頭頂部に心配があるのかないのかそれは分からないくらいの人だろうと思いました。
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漫画家の中でも非常に珍しいガラスペン愛用者[3][2][4]。
ロットリングかと思ってました。それが粗い目の紙に引っかかってああなってるのかと。ちがった。なんとなく、山口譲司と一時期カブッてる気がしてましたが、こういう漫画はかぶらないです。よかよか。
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デルタに振り回された時期のマンガで、基本的に宅飲み自炊の料理紹介まんがなので、あまりコロナの影響はないのですが、私も「ビーフシチュー ザ・ギ・ン」(頁148)のネーミングはいやです。
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作者がいちばん飲んだ記録は、友人とふたり日本酒一升瓶三本とウイスキーボトル一本(頁008)「食べ物は描いても器、酒器までしっかり描いてるマンガ」はほかにない、骨董然りと編集者がうなづく場面があり(頁009)それはそうかなと思いました。うつわに凝るとロクなことがないというのが私の個人的考えですが、それはそれとして。編集者が持ち込んだ”本気の日本酒”が、大信州という銘柄で、知らなかったので検索しました。
しかしそれをすぐ冷蔵庫に入れて冷やしだすので(季節は初夏)日本酒の世界は諸説芬々侃々諤々なので、冷蔵庫かよドシロートが、みたいなことをネットでケチつける輩が現われて、中央線沿線は大混戦みたいな展開を妄想しました。観音開きの、大型冷蔵庫です。もう「白物家電」でない現代の冷蔵庫をきっちり描いている。
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頁050。
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シリーズ八冊目だそうですが、ウェブが主戦場だからか、巻末にもカバーにも、まったく既刊紹介がなく、幻冬舎公式にも本シリーズは二冊しか載ってないので、あせりました。地元の図書館には全巻コンプリートされているので、そこから書誌情報抜粋。
『あたりまえのぜひたく。』2015.4
『あたりまえのぜひたく。ー魚愛が試される、それが煮魚。ー』2016.6
『あたりまえのぜひたく。ー定番、国民食は玉子焼き。ー』2017.7
『あたりまえのぜひたく。ーきくち家渾身の料理は…。ー』2018.9
『あたりまえのぜひたく。ーいくら 塩鮭 ぜひたく親子丼。ー』2019.12
『あたりまえのぜひたく。ー外食気分は昭和喫茶で。ー』2020.11
『あたりまえのぜひたく。ーちょっとうれしい悲鳴、とろろ芋バトル。ー』2021.8
三点リーダーに句点はいらないというのが個人的意見で、それでいうと、「当たり前」は旧仮名遣いで「あたりまへ」になりますが、贅沢は旧仮名遣いでも「ぜいたく」で、「ぜひたく」にはならないわけで、絶対第一回で、それについて私の知らない知識に基づいた、「だからこれでいいのだよ」的説明がなされているものと確信しています。
おうちの広さがどれくらいか分かりませんが、戸建てに見えるコマがあり、それで東京都下であるように見えるコマもあるので、もっといろんな人が出てきて食べたり飲んだり手伝ったりする展開でもいいかなと、ちょっとだけ思いました。親離れした自分のお子さんやお孫さんを出すのでなく、別の若い人かなんか。以上