『NHKへようこそ!02』"Welcome to the N.H.K." STORY:TATSUHIKO TAKIMOTO×KENDI OIWA:COMIC 原作 滝本竜彦×大岩ケンヂ 漫画 (Kadokawa Comics A)角川コミックス・エース 読了

『世界の引きこもり』に登場する世界の引きこもりがやたら口にしていた、めでぃあみっくすのマンガ部分の二冊目。全8巻セットをアマゾンの出品で、¥1,099+送料¥350で買い、すべて帯なし、折り込み広告なし。

装幀・デザイン COVER DESIGN and PHOTO:大塚ギチGICHI OTSUKA(UNDERSELL Itd.) 月刊少年エース '04年7月号~11月号掲載

ようするに上のカバー折著者紹介とカラーページ四頁め目次部分の写真は、大塚ギチという人が撮ったということ。

前巻感じた不満はこの巻に関してはあまり感じず、それなりに楽しく読みました(ペド以外)

主人公がエロ妄想満開なのに、女性に何も出来ないストーリー展開が、予想外に女性読者に安心感を与えたのかもしれないな、と思いました。前世紀末の遊人等の騒動の余波でそういう展開しかしてなかったのかもしれませんが、思わぬ好循環を産んだのかも。

というのも、ヒロインはたぶん宗教二世で、たとえば頁111、ワンルームマンションにコンセントから電源を取るタイプの盗聴器を仕掛けるくらい平気の平左なのに、ごく一般的な若者用語は現代用語の基礎知識をひかねば分からない行動ギャップの描写など、見る人が見ると考える点で巧みなのかもと思いました。保護者からググレカスさせてもらえてないのだろうかなど、斟酌することしきり(でも行ったことのない横浜中華街の、お値段リーズナルでおいしいお店はネット検索で知ってる)

kotobank.jp

むかし、関川夏央は『にあんちゃん』について、読む人が読めば、隠してないので在日コリアン家庭のはなしだとすぐ分かるが、気づかない人は気づかないと書いてましたが、それってエスニシティーだけの話じゃないですよねという。いろんなレッテル、カテゴラリーに入る家庭が、そうとは明記されず語られることのなんと多いことか。読者の想像力に対する甘い期待。

頁80と次のページはとてもよかったです。N國黨に投票する人って、けっこうこういうの、真実味を持って捉えているのかもしれない。

頁86と次のページなども、とてもよかったです。前巻唐突にちょっとだけ出て来たOD先輩のディティール、閉塞状況がよく分かる。まさか公務員だったとは。その後お役所も改革やらなんやらで、こうした仕事はどんどん非常勤や派遣になったので、その分、生活の安定や将来などの面で不安を抱える人は増えたと思います。『究極超人あ~る』の鳥坂先輩のような、バブル入庁公務員像は消え去りき。

集団練炭自殺を志す人たちの中に、死ぬ気もないのに紛れ込んでしまった主人公、という展開を思いつけただけで、すばらしいと思いました。自分たちの崇高な決意や思いを物見遊山で茶化しに来たのか、あるいは軽い気持ちで臨んで土壇場でビビるヘタレか。そういう存在に自分たちの終末をけがされるわけにはいかない、どうせ自裁後我々を裁くものは何もないんだ、排除させてもらうよ。…みたく迫られるのかしら、連合赤軍の総括とはまたちがうけれど、みたいな恐怖があって、非常によかった。

処方箋薬を「薬事法違反」のひとことで片付けてるのはどうかと思いましたが、もうODなど出なければいいですね。そういえば探偵!ナイトスクープで、立原啓裕が、薬に詳しいと自慢してたなあと、ちょっと思いました。

立原啓裕 - Wikipedia

それで、法律違反だからとそれだけで物事を片付けてしまうと、そこで思考停止で終わりそうな気がします。ルールというものは神さまが公平につくるわけでなく、その法律を作る人が作るわけで、作る人がよこしまだったら、作ってしまえばなんでも出来る恐ろしさをどう考えるべきか。例えばパンダ。世界中のパンダをすべて中国所有の貸出物にしたのって、中国の人が考えて、全世界の自国以外の国々にそれでネゴシエーションして契約させたわけじゃないですか。それまで動物に対して国家所有とかその貸与権みたいな考え方がないところに、イチから独創的に発想してそれを体系的に組み立て、欧米が契約社会なのをいいことに、買弁テクさながらというか、すべて許諾させた。その交渉術ほかは、たいしたもんで、おそるべしと本気で思います。アフリカ諸国が、ゴリラやアフリカ象で同じこと世界各国にやってもいいのに、やらないじゃないですか。旧宗主国の欧州各国がそうさせないようにしているのか、国内でその利権を一本化出来ないほど行政が腐敗しているのか、どっちか分かりませんが、どのみち、パンダの中国だけがうまいことやれた。それは事実だと思います。

脱線ついでに言うと、ゴリラやアフリカ象で一国、例えばタンザニアが同じことを主張して各国動物園とネゴしようとしても、あっそ、ならいいや、ケニヤから買うから、ザイールもあるしね、みたく一蹴される可能性もあり、足並みを揃えた交渉戦術なんて開発独裁揃いのアフリカ諸国では無理筋っぽいのが誰でも分かるので(原油のオペックは出来るのにね)それがないのかもと思いますが、例えばチベットが名実ともに独立すれば、パンダの棲息領域は東チベットにも及びますので、中国がそういうやりかたをするなら、チベットと交渉しますよ、となり、それも独立を断固叩き潰す動機のひとつかもしれません。いやちがう、独立しても、それこそ協調して足並み揃えてOPEC産油国原油交渉みたくやればいいので、それではない。逆に、アフリカ、グレーター・サウスで存在感を増す中国が主導して、アフリカ諸国がゴリラやサイ、アフリカ象でパンダ同様の規約締結を世界各国に呼び掛けたりしたらどうなるかなと、ちょっと思います。

話がそれましたが、OD先輩の恋人の話は、事前に伏線はってないので、ルール違反だと思いました。コナン君とかに怒られるでしょう。

コミケもどうでもいいですが、なんでそんなエロ創作に命かけねばならないのか、それもまたふしぎです。好きこそものの上手なれ。職場のゲーオタの人と、「実況動画まだ?」「顔出しNGだから」というやりとりを挨拶がわりによくしますが、そんなもんで、市井に埋没して生きてもよいかと思います。でも自分はふつうの就職ガーという前提で、エロゲならなんとか在宅で出来そうだから、それで高収入を得るしかないと思い込んでるんだったかな。

そのへんが三巻でどうなるのか知りません。以上