現首相の表紙のビッグコミックを買いに紀伊国屋書店に行ったら、あったので買いました。平積みではなかったですが、三冊もあった。完売するといいですね。このように本屋に行くと発見がある時もあるのですが、発見があっても、『化け猫あんずちゃん』合本のように*1*2買わない時もある。新井英樹『ひとのこ』*3の時もそうだったのですが、すでに出ている既刊と新しい部分をくっつけて新たな本にしてしまうというのに、どうも抵抗が… いましろ本の場合は、新井本とちがって、電子版で新しい部分をすでに読んでいたので、重複買いの無駄遣いはしないという正統な理由もありました。
COVER DESIGN CREATIVE・SANO・JAPAN このまんがはいつものとおり、初出というか掲載時期の記載なし。

帯裏。ピンが甘い… レビュ―等でわりとアタリがキツかったボーイチサンのリメイク漫画広告はナシ。あれもなあ、ボーイチサンのそれまでの画風そのままで攻めて、一話だけにして、いろんな人が毎回リメイクするリレー競作企画にすればよかったのにと思います。以前雑誌サイズで出た別冊だか特集号だかでケン月影が描いたエロ宗達はよかったもの。女子大生とスナックのママがケン月影画伯お得意のあのヒップラインで、くねるくねる。

カバー裏(部分)これまでこんな俳句のラレツ裏表紙にあったかなあ、記憶にありません。ぜんぶブッコフに売っちゃったからなあ。カラー口絵の俳句ではなく、毎回ラストに出て来る俳句の選抜です。

カラー口絵の冬(部分)俳句はこのとおり、カバー裏とは別です。この絵、掘りごたつで火鍋を囲んでるのがすごすぎるというか、こたつ布団汚されるので、そんなこと店舗ではやらないだろうという。にんにくなどのニオイのついたこたつ布団にもぐりこむのに抵抗ある客もいるだろうし。ファンタジー。

同。カラー口絵夏のゴーヤサラダ。生だと苦すぎるので、私はやっぱ湯がいて食べたいです。

春。これも家飲みのようでお店。擬古調の家具、青磁だか白磁だかなんだかの壺。厚手の一枚板にニスを塗ったテーブル。半袖ですが春、という点に、地球温暖化の影響ガー。

秋。よく分かりませんでしたが、へしこ茶漬けだそう。器がデカい。そして、描かれない薬味はどんなん使ったはるんでしょ。
『酒のほそ道』は各巻「あとがき」と言いながら作者でなく別人が解説を書く、おおむかしのジャンプコミックスと同じ手法をとってるのですが(ちなみに小林よしのり『東大一直線』①の「あとがき」はこち亀の秋本治で、エレベーターにガイコツが乗ってると思ったら挨拶してきて、それがよしりんだったという話を書いてます)今回のスケラッコサンは出色の出来で、これまでの巻でも一、二を争うすばらしいあとがきを書いてます。

だいたい今回は「あとがき」でなく「酒ほそしんぶん」で、紙版『おぱんちゅうさぎ』*4で可哀想に!先生が書いた壁新聞と甲乙つけがたい素晴らしい新聞(オールドメディア)なんです。「キュビビビビビ」に目を付けたのも流石ですし(しんぶんでは1/12スペースのひとコマなので、ここをフォーカスした編集者サンもたいしたもん、否、たいしたモンです)動画等でさんざん晒されてるラズウェルサンのご尊顔を本人画の似顔絵にして描くやさしさもある。ちなみにこの巻は、頁177、明石海峡の夕日をバックにラゥウェルサンの後ろ姿、という写真も載ってます。髪の量が多い遺伝はスバラシイ。こんなに油っこいもの食べても2323。
これまでのあとがきは、どうしても肩に力が入ってしまうというか、気負ってしまうものが多く、特に芸人さんは、「兄さん」へのヨイショを文化人のラズウェルサン相手にどこまでどうしたもんか、加減が分からずオーバーヒート、空回りが多いように思われます。記憶に残ってるのは、ダイノジのエアギターの人。ただこれは、この人の個人的歴程が強く刻まれるということなので、酒ほそとのケミストリーではないです。それでいくと、スケラッコサンというのは、たびたび酒席に呼び出されるのか飲み会の機会が多いのか分かりませんが、オヒキ体質としても幇間のスキルとしてももうしぶんなし、なのかもしれません。
そしてこの巻のおそろしいところは、帯でこんだけ「キュビビビビビ」を強調しておきながら、一向にさっぱり「キュビビビビビ」が出ない点です。
ゴ
キ
ュ
ゴ
キ
ュ
ゴキュ
「なんだよ、キュビビビビビ、じゃないじゃん」と思った人もいるかもしれません。




頁35「グゴグゴグゴ」頁46「ゴキュゴキュゴキュ」頁53「クビビビビ」(惜しい)頁60「キュビ」(なぜ「ビ」を一回で止める)どれひとつとして「キュビビビビビ」はありません。


頁76、元女子大生登場回。「クビビビビ」飲んでるのはルービーでなく抹茶ハイ。ちなみに宗達はシャンパンは「クイ~」(頁13)芋焼酎は「ズズ…」(頁27)日本酒は「キュッ」(頁67)と飲みます。右は頁115「ギュビビビビ」なぜ語頭が濁るのか。
しかしこの後、頁80で「キュビビビビ」出ます。ほっとしたのもつかのま、世界はまた、別の擬音に。



頁87「クビビビビ」頁102「ゴゴゴゴゴ」頁109「ギュルギュル~」ひとつとして「キュビビビビビ」ではない。酒ほその出だしのコマ割りはこほぼテンプレ化されていて、①居酒屋やスナックの外観、②飲み会メンバー、③擬音入りで酒杯を干す宗達、④プハーとかなんとか満足げな吐息の宗達、なわけですが、このコマ割りも盤石の固定ではないです。家飲みの回などはすぐ飲みません。男子厨房に入ってアテを作ってから飲む。



頁122「グガガガガガ」頁129「ギュビビビビ」頁136「グビビビビ」くるったように「キュビビビビビ」を出さない。
頁134「ゴグゴグ」
で、このくるったねじが元にもどるのは、頁144からの「関西焼き穴子ツアー」です。ここでまた「キュビビビビビ」になり、以降それがブレることはない。さいごまで「キュビビビビビ」
この、ナゾの擬音を巡る戦いを読み進めながら、かなり困惑しました。スケラッコサンはラズウェル師匠が「キュビビビビビ」を忘れて迷走してるのをゴラク読みながら心配して、オファーがあったとたん「酒ほそしんぶん」を一気呵成に書き上げて、センセイ、初心忘れちゃイヤン、と念を込めて送信し、一読したラズウェルセンセイは深く恥じて、以降の連載では「キュビビビビビ」を復活させたのでしょうか。それは一つの仮説ですが、もう一つ仮説があります。
ラズウェルセンセイと宗達はかなりの減らず口叩き、わけの分からない自論に拘泥するタチですので、スケラッコサンの「酒ほそしんぶん」や刷り上がった帯のコピーを見て、ムラムラと何か邪なエビルが憑依したかの如く、原稿の「キュビビビビビ」箇所を次々書き換えたのではないか、とする説です。おそろしい。どちらが信憑性があるでしょうか。頁135でラズウェル先生は、日本の季節に春と秋がなくなってきた、という庶民の雑感に対し、自分はもうずっと前から、春や秋なんて季節はなく、あると思うのは錯覚であるという持論を主張してきたと書いてます。そんな人間が、お前のマンガは要するに「キュビビビビビ」なんだよ、おとなしく認めやがれ、と言われて素直にハイソウデスと言うわけがない。何かとんでもない、理由なき反抗を試みないとも限らないではないですか。それがこの巻の一連の反「キュビビビビビ」擬音祭りであり、アナゴサンの登場でハッとしらふにかえってまた「キュビビビビビ」を使い出したとして、誰がそれを責められるでしょう。先生はいつでも真剣勝負なんです。
頁41、麺類は炭水化物であり、炭水化物は主食なので酒のアテにはなりえない、と書いているのはそのとおりで、確かいっしょに吸収すると急速に酔いが回るんじゃないかったでしたっけ。おおむかし週刊朝日のデキゴトロジーにそんなことが書いてあった気瓦斯。夏目房之介サンが描いたイラストでは、白ゴハンとお酒を同時に出された警官がピストルを抜いて「ほほほ本官を殺す気か~」とのたまってました。このコラムがその方向に向かわなかったのは残念閔子騫。
この巻の「まえがき」は、乾杯のさいグラスをぶつけるかぶつけないかの話。ちょっと弱いネタなので、必死にネタを探したがこれというのがなく、ストックからてきとうに出して使ったように見えます。
頁44、ラズウェルサンがかつてイヤイヤ連れて行かれた台所くさいスナックの話が出ます。これは珍しい。スズキナオの人やパリッコの人が動画の企画でこのお店を再訪しそうなイキオイ(もう地上に存在しないかもしれませんが)
頁104で、焼きナスの食感を「ふわとろ」と表現してますが、そうかなあと思いました。生姜焼きとか、ぷりぷりって感じがするんですが、どうでしょう。
頁110、タイのヤムウンセン、インドのサブジに並んで、ペルーのセビチェが出ます。ここでもセビーチェと伸ばしてますが、私はセビチェと言い続ける。彩流社の新しく出た本でもセヴィーチェですが…
頁142、酒ほその現担当のひとはさやいんげんの食感が苦手だそうで、私の親族にもサヤインゲンが苦手な人がいますが、その人は戦後の食糧難の時代に毎食サヤインゲンをろくな味付けもなしに食わされたからだそうです。ちょっとちがう。ちなみに、毎年サヤインゲンを作ってますが、うまくいった年がないです。つるははびこるが実が生らない。
頁164、明石に住むしかない、とラズウェルサンは思い悩んでいるようです。せやせや、京都なんかやめよし。明石須磨、よろしおすえ。孫文記念館もあるしね。高砂市は今ビッグコミックオリジナルに村上たかしサンが連載してるコンクリートの船の舞台でもありますね。

頁174、サルと魚のミイラをくっつけて人魚のミイラを作り、輸出するのが江戸時代日本の主力産業のひとつだった(写真と文は関係ありません)
頁192、ヒトは外飲みで、読書しながら酒が飲めるか、という記事。結論として、そんなやつはいねえ、です。しかし、スマホ見ながらぼっち飲みはありふれており、ラズウェルサンもそれはやっていて、スマホ登場以前はどうしていたのか、さっぱり思い出せないとのこと。これが、『モモ』のいう、時間泥棒です。ズバリそうでしょう(ちびまる子の誰かのせりふ)
以上





