『酒場の誕生』 (酒文選書)読了

酒場の誕生 (酒文選書)

酒場の誕生 (酒文選書)

TaKaRa酒生活文化研究所は、世界文化社から酒文ライブラリーを出す前に、
紀伊國屋書店から酒文選書というシリーズを出してたんですね。
知りませんでした。そういえば、酒文ライブラリー発刊の巻に、
所長が何か、整理したようなことを書いてましたが、具体的でなかったので、
分かってませんでした。いまは酒文選書というのがあることが分かったので、
こちらも読んでみたいと思います。
紀伊國屋なので、下記の人のエピソードが横溢してるかとも思いましたが、それほど。
酔人・田辺茂一伝

酔人・田辺茂一伝

わが町・新宿

わが町・新宿

夜の市長―田辺茂一コレクション

夜の市長―田辺茂一コレクション

酒文ライブラリーは対談や鼎談が多かったですが、
この本は各自論文やエッセーを書いて、そのアンソロジー
なので、一個一個閉じていて、他者とセッションすることによる融合とか、
その結果の広がりとか、深みに欠けるきらいがあると思いました。
こじんまりとまとめた個人商店のラレツ。
紀伊國屋のサイトでも各執筆者記載してない*1ので、列記します。以下赤太字は目次見出し

はじめに―玉村豊男

【第一章】酒場はこうして生まれた
江戸の酒場繁盛記―海野弘
 伯母が酒、連尺、河原新市の三つの狂言から室町時代を推測、

(ほかの二つは動画が見つかりませんでした)
 米沢彦八『軽口御前男』収録の江戸の笑い話「煮売屋のかんばん」、
 三田村鳶魚の仕事から紹介、西遊草の関所破り、etc.ですかね。

頁52
江戸は、ニューヨークのように、さまざまなエスニック・グループが一挙に集まってきた都市であった。

諸国の人間が集まってはきましたが…エスニック・グループというと民族集団ですから、
単語がおかしいと思いました。

【第二章】時代が生んだ酒場
江戸から明治へ―居酒屋・料理屋の変遷―神崎宣武

 これも三田村鳶魚の仕事に負うところが大きいです。
 この人は燗酒ルネサンス*2でも、燗酒は、
 保存出来ない時代の劣化した日本酒を消費するための方便、
 と言い切ってる人ですから、この本でも明快です。

頁85
 そもそも飲酒の大衆化とは、その手順(制度)の簡便化を意味する。明治時代のそれは、江戸中期のそれよりもはるかに大規模なものであった。大尽遊びがなくなるわけではないが、身分とか紹介者を問わずに客を安直に酔わせて遊ばせる制度系が発達することになるのである。
 以来、盛り場は、いくどかの変化変遷を経て今日まで伝わっている。
 第二次世界大戦後の花街の後退とネオン街の拡大がさらにそうであった。一方で、格式を誇った料理屋がさびれ、芸者衆にもおよびがかからなくなってきた。他方でバー、キャバレーが進出、ホステスなる接客婦がはばをきかせるようになってきた。そして、元代の大衆料理店とカラオケスナックの全盛に連なることは、周知のとおりである。
 盛り場の変遷とは、つまりは飲酒の大衆化への経緯を物語っているのである。

西洋に出会える場所―洋風酒場の黎明期に見る近代化の一側面―渡辺武信
 神谷バーには、〈酒杯の交換を禁じる旨の貼り札〉があって、
 日本の酒文化の核ともいえる献酬(杯をやりとりすること)を廃していた
と、
 神谷バーの本からの引用で記しています。

焼け跡にはじまる新宿の酒場―森田暁
昭和三十年代前半の大阪の酒場―難波利三
酒場の大衆化―樋口修吉

頁143
大学生のころから酒が強かった私は、入社の翌年から毎春恒例の新入社員の歓迎会での一気飲みのオトリ役をやらされた。私は課内でもっとも酒が弱い男だという顔をして、新入りのなかの軟弱めいた奴とグラスを手にして対決したのである。
 昭和三十九年入社の一橋大学出身のノッポは、私に対抗して小一時間で角のストレートを十杯近く飲みきったが、烏森のトリスバーの店に行く途中、路上にぶっ倒れ、眼鏡を割ったばかりか目尻にかなりの傷をおい、十仁病院に入院した。
 その翌年、同じくらいの量を飲みほした慶応出の優男は、二次会の入口まで辿りついたものの地下に降りる階段を踏みはずし、やはり目尻に負傷して、これまた十仁病院の世話になった。
 三年目の春、私の対戦相手は「いやですよ。そんな馬鹿らしいことはやめましょうよ」といったばかりに、目尻に傷痕のある二人の先輩からさんざんいびられる羽目になった。
 余談になるが私の古巣の商社では、一気飲みの伝統はその後も長く続き、数年ほど前に府中の独身寮の歓迎会での一気飲みで死者が出たため、寮は閉鎖された。なお一橋出のノッポと慶応出の優男はともに傍系会社にいて、今でもたまに酒を飲むと、二人とも目尻に残っている傷痕を、まるで勲章のように自慢するので、ホッとさせられる。

ワインを昇華した日本人―馬場啓一
若い世代がつくった焼酎と吟醸酒ブーム―森下賢一

 頁169、武田麟太郎はメチルで死んだとあります。
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A6%E7%94%B0%E9%BA%9F%E5%A4%AA%E9%83%8E
【第三章】現代の酒場
酒場のグローバリゼーション―鴎外の小倉赴任から百年たって―枝川公一

 下記の料理を初めて知りました。
 Ploughman's lunch
 http://en.wikipedia.org/wiki/Ploughman%27s_lunch
 Devils on horseback
 http://en.wikipedia.org/wiki/Devils_on_horseback
 頁198では、赤っぽい海草を巻いたトーストとあり、ウェールズの郷土料理とのことで、
 wikipediaのベーコンを巻いた料理とは別物のようです。
現代若者気質にみる酒場のゆくえ―稲増龍夫
 カフェバーについて触れてますが、
『天国は水割りの味がする 東京スナック魅酒乱』*3で読んだ、
 かつての若者向けの酒場形態「コンパ」についても書いて欲しかったと思います。
酒を飲む時間と空間―植田実
 紹介されてる、下記を読もうと思いました。

泥鰌庵閑話傑作選 (ちくま文庫)

泥鰌庵閑話傑作選 (ちくま文庫)

http://ecx.images-amazon.com/images/I/51cdTlCzWIL._SL500_SY344_BO1,204,203,200_.jpg
泥鰌庵閑話 (下) (ちくま文庫)

泥鰌庵閑話 (下) (ちくま文庫)

酒場のコミュニケーション学―日高敏隆

以上